163話 新しい種族代表たち その2
◇◇レンside◇◇
「よっし! それじゃあ、次はあたしだな!」
「お姉ちゃん、普通でいいからね?」
そう言って、立ち上がったのはさっきからなんかソワソワして仕方なさそうだったレオだ。
「レア、なんかあたしが普通の挨拶も出来ないみたいな言い方じゃないか?」
「いや、そうでしょう?! お姉ちゃん、いつもいつも余計なことするんだから!」
「はぁ……あのな、ルア。あたしだって普通に挨拶出来るんだからな?」
レオはレアにそうちょっと呆れたようなふうに言って、みんなの方を向いた。
「それじゃあ、もうみんな知ってるだろうが、あたしがレオだ! 幻獣種総合その一の種族代表を任された。みんな気軽にレオって呼んでくれ! ん? どうした、バーン? お前もあたしをレオって呼んでくれていいからなっ!」
「そっ、そんなっ?! 恐れ多いです!」
「何を言う! あたしがいいって言ってるんだから、レオって呼べよ! なんなら可愛らしくレーちゃんなんてあだ名でもいいぞ?」
「む、むむむむ無理ですよぉ……」
あーあー、ワイバーンの種族代表のバーンさんがもう顔が真っ青で、冷や汗たらたらで可哀想になってきた。
他の種族の人達もその様子を苦笑いしつつ、レオの矛先が自分の身に来ないようにじっと見ているだけだし。
まぁ、それも仕方ない。ああ見えてレオは魔物の中でもカースト上位のドラゴンだし、その中でも空の王者とか呼ばれて、半ば神格化されたような伝説の魔物だからいくら幻獣種に全員なったとしても、やっぱりお互いの格の違いみたいのが感覚的に分かっちゃうんだろうな。
だから、多分みんなレオのことが恐れ多くて呼び捨てとかあだ名なんてもってのほかで、特にワイバーンなんて竜種は竜種でも下位の下位の竜種だから、出来ることなら関わりたくないくらい思ってるかもしれない。
そこら辺は慣れてもらうしかないかなー、まぁレオは接してれば気の良い奴だしすぐ仲良くなれると思うんだけど、殺し合いをした僕が思うんだからきっと大丈夫だな。
「あっ、バーンのコップ空じゃないか! どれ、あたしがついでやろう!」
「い、いやいやっ! レオ様! 私は大丈夫ですよで……」
「なんだー? お前、あたしが入れた水が飲めないってかー? それに、レオでいいって言っているだろう!」
バーンさんのコップが空になったのはレオが上司が部下を居酒屋で虐めるようなことするからだろうに。ていうか、そういうのはお酒でやるものでしょうが、お水でやるとかなんかケチな上司みたいだぞ。
誰かレオの悪ノリを止めなきゃ、レオのストッパー役のレアは何をして……
「あ〜……レオ、君はこの後お説教が待っているよ」
レアの方をちらっと見て僕は悟った。なんて言うか、今までは姉の行動の恥ずかしさで顔を赤らめてたけど、今の顔の赤さは違う。羞恥もあるだろうけど、どちらかというと怒りって感じが、ちょっとプルプル震えてて、前髪で隠れて顔が見えないのがまた恐怖。
レオがカースト上位のドラゴンってことは、妹のレアももちろんそういう存在で、その恐怖で威圧を感じてる他の種族の人達が更に冷や汗を垂らし始める。
そして、ついに限界を迎えたのかレアが立ち上がる。
「ひっ?! あ、あの……レオ様? う、うし…うし……」
「あ? なんだ? 牛? 」
「ううう、し……うしろにっ!」
「後ろ……? ひゃぁっ?! れ、レア……?」
「お姉ちゃん……」
あぁ……あれはマジだ。本気と書いてマジとよむマジだ。マジで怒ってらっしゃる。僕の初めて見る怒り段階だ。
いつもはこう、怒っていても少しおちゃらけた感じっていうか、本気の怒りは見えなかったけどこれは違う。そりゃ、幻獣種とはいえ普通の魔物たちが滝のような冷や汗をかくわ。
「お姉ちゃん、こういう場でそういうふざけた態度取るの良くないよって言ったよね? バーンさんにまで迷惑かけて」
レアが一方レオとの距離を詰める。
「め、迷惑なんかじゃないよな? あたし達はもうダチだろ? これくらい普通だよな? な? なっ?!」
「ひぇっ?! は、ははは、はいっ!」
「ほら、レア! こういうことだ、それはお前の勘違いで……」
レオがバーンさんの肩に腕を回して、凄んみつつ言い訳をしながら一歩下がる。
そして、レアの額に青筋が一本浮き出たような気がした。
「お姉ちゃん。そういうの前からやめてって言ったよね? お姉ちゃんは、威厳だけはあるからそうやって偉ぶると誰も断れなくなるからって」
また一歩、レアが間を詰める。
「い、威厳だけはってなんだ! ちゃんと空の王者としてのプライドが……」
レオが後退しながら言い訳をしようとするも、
「空の王者〜? 何言ってるの? 空の王者(笑)の間違いでしょ? いつも食べては寝て食べては寝て、たまに外に出て余計なことをしてくる。これのどこが空の王者なの? このニート竜が!」
うわ、毒舌! ほら、レオが心にグサッと何かが刺さった気がするよ。
「に、ニート竜……」
「だってそうでしょう? ここに来たのはなんのため? お姉ちゃんが余計なことをしたのを謝罪に来たんでしょう? なのに、大事な会議の妨げをしてる。私、もうお姉ちゃんの妹なのが恥ずかしい」
そういえば、そうだったなぁ……この二人が来たのはそんな理由だった。すっかり忘れてたよ。
お姉ちゃんの妹なのが恥ずかしい、その言葉がレオのトドメになったのかレオはぐったりと膝を着いた。
「…………わ、悪かった。あたしが悪かったよ」
「そう? ちゃんと反省してくれたみたいでよかった。後でここの人達にも謝りに行ってね? 」
レアがそう言うと、レオは許さたと思ったのか笑顔で顔を上げるも、レアの様子を見てサッと顔が青ざめた。
「ふぅ……それじゃあ、日頃の恨み……晴らさせてね? お姉ちゃんっ☆」
レアはそう可憐な笑顔で言うと、グッと握りこぶしを作った。その拳だけ竜形態になっていて炎を纏ってる。
「なっ?! ま、待てっ! ゆ、許してくれたんじゃ……」
「問答無用っ!!!」
(o゜Д゜)=◯)`3゜)∵ 。・゜・ドゴォン!
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
殴られたレオは壁に激突、それでも止まらず壁を突破って城の外に吹き飛んで行った。
「「「「「…………………………」」」」」
「あ、皆さん! 愚姉が迷惑をおかけてして申し訳ありません。申し遅れました、幻獣種総合その二の種族代表を任されたレアです。どうぞ、よろしくお願いします!」
「「「「「…………………コクコクコク」」」」」
レアはレオを殴って満足したのか、本来のやることを思い出したようで、その場でぺこりと頭を下げて挨拶をした。
みんな、僕も含めてさっきまでの凄みに圧倒されすぎてろくに反応を返せないでいる。
だって、ねぇ? 殴り飛ばした相手で壁に穴を開けるって、かなり恐ろしいよ?
それよりも、レア。今は怒りのクールダウン中で気がついてないのかもだけど、城に穴を開けたことに気がついたら凄い謝ってくるだろうなぁ……。
まぁ、その時はそっと優しく許して、レオの愚痴でも聞いて、ストレス発散の手助けでもしてあげよう。
ちなみに、レオとレアが務めることになった幻獣種総合その一、その二っていうのは、主に群れでやってきた者じゃなくて、群れを作らず単体で強力な魔物たちの集まりのこと。
三人や四人しかいないのに、その種族の代表を作ったら種族代表の人数がすごく多くなってしまうため、だいたい二十人未満の幻獣種たちはここに分類されることになった。
例えば、コカトリス、グリフォン、ベビモス、白蛇。もともとエリュシオンにいた人だと、チミさんとか。グノーシス・スパイダーのネクって人もここに入る。
そして、この森はもともとそういう単体で強力な魔物たちの方が多くて二つに分け、その魔物の頂点のドラゴンの幻獣種の二人に代表になってもらうことになった。
正直、ここにいる種族代表の中で一番多忙なのはこの二人だと思う。なんせ、結構数が多いし、それがみんなバラバラの生き物なんだから。それでもきっと二人なら大丈夫だろう。
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