162話 新しい種族代表たち
◇◇レンside◇◇
「はい、分かりました。ちゃんと直します……ちっ……」
「うん、よろしい」
最後の舌打ちは気になるとこだけど寛大な蓮さんは全てを許そう。
あの後、少ししてエリュがやって来て、閉じ込められてる僕に気がついたエリュが外側の鍵を開けてくれて無事に脱出することが出来た。
それで、華憐をとっ捕まえてきて、色々と白状させた。
まぁ、どうやら僕が目を覚まさないのをいいことに、僕の部屋に色々と仕掛けを仕込んでいたらしい。
だから、僕の安眠のためにその辺りを改善とルールを作ることにした。
改善するのは外側の鍵の取り外し。これがかけられるとマジで中から何も出来なくて出ることが出来なくなる。
ルールについては、部屋の隙間と天井にある通路だけど、緊急事態の時以外は出入り禁止っていうルール。埋めることも考えたけど、なんだか秘密の通路ってロマンがある気がして残すことにした。
高性能の防音機能はそのままでいい、僕だってはっちゃけたくなる時はあるのだ。あんまり恥ずかしい音とか何かの拍子に聞かれたりしたら羞恥で悶えるもん。
僕の寝室についてはこういうことになった。
「さて、それじゃあ、今日はこの後初めての種族代表会議を開くんでしょ? 早く行こう」
「そうだね。蓮くん驚くよ、愉快で面白い人が多いから」
この後は今回やってきた魔物たちの代表を集めて会議というより、僕のことを認知して貰うためと僕がみんなのことを覚えるために集まってもらうことになってる。
■■
そうしてやってきた円卓の会議室。
「あ、やっと来たわね。もうみんな集まってるわ、早速始めましょうか」
クルアもいて、色々と準備をしてたみたいだ。
席にはずらーっといろいろな人が座っていて、どこか厳かな雰囲気がある。
集まってるのは基本的に幻獣種って呼ばれる者だけ。つまり、魔物しかいない。ヒト、獣人、エルフ、ドワーフ、天使、悪魔、妖精とかの人間種はいない。リザードマンは微妙なところだけど人数差で人間種ってことになったみたい。
人間種は人間種の方で種族代表会議がある。そっちの方はアーゼさんが取り仕切ることになってるみたい。
「あっ! おーーい! レン! 久しぶりだなー!」
「ちょっと、お姉ちゃん! 空気読んでよ! 皆さん、すみませんすみません! 姉が騒がしくて」
すると、何故かいるレオが僕に気がついて手をぶんぶん振ってきて、あいかわらずレアはレオの尻拭いをしてるらしい。
華憐がクルアの隣に座って、僕は空いている席に座る。
「それじゃあ、一回目の種族代表会議を始めます!」
そして、華憐が開会の挨拶をした。
「「おぉ〜~~!」」
「お姉ちゃん! だから、静かにしてて!」
「「「「「………………………」」」」」
あ……え? そんな感じ? そんな硬い感じでいくの? え〜……僕とレオがまじで空気読めてないみたいじゃん。もっと、柔らかい感じでいこうよ華憐!
「えっとえっと……」
って、思って華憐の方に視線を向けたんだけど、あれガッチガチに緊張してるな。完全に空気に飲まれてる。普段こういうことするの僕だったし、妖精族のところで演説したって言ってたから慣れたのかと思ったけど、まだ難しいのかもね。
今回から幻獣種総括長になった華憐がまとめ役だけど……しょうがない、僕が少しだけ手を貸そう。
「それじゃあ、今日は初めての会議だし、なにか議題がある訳じゃないわ。ねぇ、カレン?」
「そ、そう! だから、みんなもう少し緩い感じでいいよ! 今日は顔合わせ、それとみんな知ってると思うけど、前から言ってた蓮くんを紹介するね」
手を貸そうって思ったけど、その前にクルアが微妙な空気を変えるように明るい感じで声を出す。
そっか、そういえばクルアは国王補佐だった。これなら僕の手助けは要らなそう。流れに身を任せて傍観で行こう!
とりあえず、まずは僕の紹介だよね。ここは何か場を和ませるようなウケを狙った方がいいのだろうか……。
「…………レン、余計なことはしなくていい」
っと、後ろに控えてたエリュが僕の思考を読んだのかそんなことを囁いてくる。
んー、仕方ない。釘を刺されたし無難な挨拶でいっかな。
「それじゃあ、ご紹介に与りました。この国の国王の雨宮蓮です。まぁ、僕はそんなに堅苦しいのは好きじゃないんで、みんな気軽に声掛けてください」
うん、無難。パチパチパチって拍手してもらって席に座る。
おぉ、なんて言うか高校に入学した時の最初に知り合いのいないクラスで自己紹介するような感じがしてどこか懐かしい。
「それじゃあ、蓮くんの隣のホムラから順に挨拶していって」
華憐がそう言うと僕の隣に座ってた黒髪赤眼の青年が立ち上がる。
「インフェルノウルフ代表、煉獄のホムラ!」
「ブリザードウルフ代表、吹雪のツララ!」
「テンペストウルフ代表、暴風のランマ!」
「「「三人揃って、ウルフマン!!」」」
パチパチパチパチパチパチパチ!
……………え、みんな自然に拍手してるけど、ツッコミどころ満載なんだけど。ほら、華憐もなんか唖然としてるし。
うそぉ……ホムラって人横顔キリってしててかっこいい感じなのに、そしてその横のツララさんも白銀の美しい感じの女性で、ランマって人も紳士っぽい感じなのに、こういうキャラなの?めっちゃ特撮っぽいじゃん。演技? 演技だよね?
一番最初の三人がインパクト強すぎて、驚いてる間に自己紹介はどんどん続いてく。
アルラウネ代表、アルルーナ。緑色の髪でどことなく植物を連想させるような女の子。アルラウネたちは今は主に農作業をしてる。
サイクロプス代表、メガ。大きな目玉が一つついていて、身長が二メートルはゆうに超えてるだろう男性。サイクロプスたちは細かい作業が苦手なため、主に資材運びをしてる。
ワイバーン代表、バーン。瞳孔が縦に割れた黄色い目を持っている青年。ワイバーンたちは高所の作業をしてる。
グルセルク・ラビット代表、ピョン。うさ耳がついていてニコニコ笑顔が可愛らしくもどことなく危険な香りがする少女。グルセルク・ラビットたちは今は主に働く人達の給仕、お昼をくばったりしてる。
あ、次は僕が気になってた魔物の代表だ!
「それじゃ次にケルベロスのロベスさんお願い」
華憐がそう言うと、犬耳を持った浅黒い肌の男性が席を立つ。
「私はケルベロス代表、ロベスです………ワンッ! ワワンッ! ワオーーーン! ………こらっ! 勝手に出てくるなワンコ! クゥ~ン、キャンキャン! ………えーっと、まだ制御できてないですが……グルルッ! ワンワンッ! ………なるべく抑えるようにしますのでよろしくお願いします!」
パチパチパチパチパチパチ!
おぉ……これまた、面白い魔物もいたもんだねー。華憐から聞いてたけど、こんな感じになるんだ。ロベスは本能は抑えられたみたいだけど、ワンコはまだ制御出来てないみたい。
結局ケルベロスの表層入れ替えの解決策は思い浮かばなかったらしい。生理現象みたいなものだから、どうしようもない。けれど、強い意志を持ってある程度制御もできるということが分かったから、ケルベロス自身が何とかするということになったらしい。
「ロベスさん、意志制御頑張ってください! それじゃあ、次の方~」
華憐も緊張が溶けてきたのかいつものような感じになってきた。
華憐の掛け声で腰を上げたのは、筋骨隆々のがたいのいい大男。ミノタウロス代表、ブラッド・ミノタウロスのタロス。ミノタウロスたちは今は主に道作りをしてる。
タロスの次に自己紹介をしたのは懐かしきアイアンベアーのトンカツさん。コロッケたちと同じような鉄色の髪をした男性。鉄グマの名前はもう揚げ物系に決定されたみたいだ。
ちなみに、コロッケたちの保護者は僕達になってるから、鉄グマたちの相続争いは特にない。そして、初めて知ったのはコロッケたちの親はこの辺り一帯のアイアンベアーのボス的な存在だったらしい。つまり、コロッケたちは今後アイアンベアーたちのボスになる可能性が高い。
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