147話 レンがいない一ヶ月 (クイーンネクローシス・スパイダー)
◇◇カレンside◇◇
「わぁー! 取れないー! カレンおねーちゃん助けてー!」
あーあーあーあー、そんなに暴れたらさらに絡まる一方なのに……。
「ピィナ! 暴れないでじっとしてて! 今助けるから!」
けれど、私が大声でそう言ってもパニックになってるのか聞こえないようで、バタバタと暴れるピィナ。
これは、ピィナを大人しくさせるのは無理。
「ピィナちゃん! 大人しくするプリ! 今助けるプリから!」
「ポムちゃん?」
「動くともっと絡まるプリ! じっとしてるプリ!」
「うん! 分かった!」
と、思ったら何故かポムちゃんの言葉は聞こえるのか大人しくなるピィナ。二人はいつも仲良しだからなにか繋がってる物があるのかもしれない。
まぁ、ピィナも落ち着いてくれたし、とりあえず全体的に蜘蛛の巣を見てみる。
「大きいなぁ」
岩の穴に全体的に糸が張りめぐされていて、当然木の棒とかで絡めとるようなことも出来ない。
「これは、ネクローシス・スパイダーの巣ね」
ネクローシス・スパイダー、確かかなり強い部類の毒蜘蛛の魔物だったはず。黒くて灰色の斑点模様の蜘蛛特有の八本脚と身体と死角を持たない八個の目を持って、名前の通り噛まれるとそこから壊死していく毒を持ってる。
「全てを滅す黒白の翼! 刮目せよ! 『闇光の双翼剣』!! ってい!! あわわわわわ」
っと、ルカが自慢の大きな大剣二本を出して攻撃してるけど、蜘蛛の巣は切れるどころか逆に大剣に纏わりつき始める。
まだ解説は終わってないのにぃー、ちゃんと最後まで聞かなきゃ!
ネクローシス・スパイダーの蜘蛛の糸は魔力糸で魔力が流れてるため、耐久力がすごくて頑丈。そして、魔法攻撃は魔力に変換されて威力がかなり減衰するため、これも意味が無い。
だから、クルアは厄介って言ったんだよね。
「えーと、確か……楽に抜け出すにはここの主のネクローシス・スパイダーを倒すことだっけ?」
「そうね、だけど……」
「いないね……」
ネクローシス・スパイダーの魔力糸の巣はその巣のネクローシス・スパイダーを倒せば自然と消えるんだけど、ネクローシス・スパイダーの習性として一つの蜘蛛の巣だけじゃなくて色んなところにたくさんの巣を作るから、今はどこかに行ってるんだと思う。
「もう少しすれば巣に獲物が引っかかってるのに気がついてやってくると思うけれど、ネクローシス・スパイダーってなかなか強いのよね」
クルアの言う通り壊死させる毒を持ってるし、なかなか素早いからね。
「ん? どうしたの?」
その時、隣にいたアルカちゃんが私の手を握ってきて人型からレボルバー式レールガンの姿に変わった。
(発見。約二十メートル後方の岩の影に)
なるほど、さすがアルカちゃん! 死角無しだね!
私はアルカちゃんが見つけてくれた情報をすかさずクルアたちに報告。手信号だけで意思の疎通をして迎撃体制を整えた。
(アルカちゃん、行くよ!)
(了承。いつでもOK)
クルアとルカに視線で攻撃することを伝える。他の人は遠距離攻撃手段がないから待機。
そのまま、右足を軸にくるりと回転し、
「そこっ!」
標準があった瞬間に引き金を引く。
バキュンッて音が鳴って青白い超電磁砲がネクローシス・スパイダーが隠れている割と大きな岩を破壊する。
クルアとルカは私が引き金を引いた瞬間、一気に飛行して背後をとり、それぞれ攻撃する。
「『魔力砲』!」
「『死の祝福』!」
二人の魔法が炸裂して、小さな爆発が起きる。
さすがに無傷ではないだろうけど、まだ倒せた確証もないから私を含めて全員すかさずに距離をとる。
一番厄介なのが、糸で絡め取られて壊死の毒牙にかけられることだからね。慢心はしない。
さて、そろそろ煙が晴れる。二人の魔法の結果は、
「「「えっ?!」」」
煙が晴れるとそこには粉々に砕かれた岩と大きな白い繭みたいなのがあった。
そして、その白い繭はシュルシュルと上部から解けていき中からキングベットサイズくらいの大きな蜘蛛が出てくる。
「っ……?!」
あれは不味い、ただのネクローシス・スパイダーじゃないのは明らか。きっと、キングかクイーンかの上位種だよ!
私はすぐさまもう一個の銃も取り出して二刀流に構える。クルアもルカも危険度をはね上げてさっきのよりも強い魔法を紡いでる。
「あれ? なにか様子が……」
二人の魔法が完成するまで私が足止めするつもりだったんだけど、蜘蛛は何故か足を二本上げて振りながら顔を下げてるみたい? まるで降伏をするかのように。
もしかして敵意はない? どうやら理性はあるみたいだし、もしかしたら幻蟲種になりかけなのかもしれない。それなら、私が話せる。
「二人とも! 攻撃を少し中止!」
二人に止まってもらって、一応警戒しながら蜘蛛に近づく。様子からして大丈夫だとは思うけど、理性があるってことは知能があるってことだから、もし罠とかだったらすぐに逃げられるように。
「あなた、私の言葉分かる?」
『言語』の能力を使って話しかけてみる。
すると、蜘蛛はうんうん、と頷いているように見えた、見た限りでは。
それと、アルカちゃんが使ってくれた『鑑定』の能力の結果も見ておく。
■■
クイーンネクローシス・スパイダー
『魔力糸』『壊死毒』『配下召喚』
ネクローシス・スパイダーの上位種
■■
アルカちゃんが『鑑定』の能力を使うと私とは違って制御できるから必要なことだけを読み取ってくれる。
そして、やっぱりネクローシス・スパイダーの上位種なんだ、クイーンってことはメスみたいだね。
「あなたは私たちに危害を加える気は無いの?」
クイーンネクローシス・スパイダーはその通りだ! っと言うように激しく頷いてる……ように見える。
胴体をペコペコさせてるだけだから微妙に判断がしずらいの!
「それじゃあ、ピィナが絡まってる糸を解いてくれる?」
またクイーンネクローシス・スパイダーは激しく頷いてる……ように見えることをすると、素早い動きで巣に昇ってピィナの所に行く。
「あ! きゃー! いやいやっ! ピィナ美味しくないっ! 食べても美味しくないよっ!」
それを見たピィナが食べられると勘違いしたみたいでまた激しく暴れ出すけど、すでにイモムシ状態だからほとんど抵抗できてない。
というか、食べないし……あ、でもピィナってニワトリだから意外と美味しい? 今の状態まるまる太ってるし……。
そしたら、私が捕食者の目で見てたのがバレたのかピィナはぼふんっと人型になった。
その間にクイーンネクローシス・スパイダーはシャカシャカシャカシャカっと、すごい速さで六本の腕を動かして、絡まった糸を解いてく。
「わぁーーーーーーーー!!」
「ピィナちゃんっ!…………ナイスキャッチプリ……」
無事、蜘蛛の巣から脱出できたピィナは落下。すかさずポムちゃんが駆け出して腕だけプリンスライムにしてキャッチした。
「ポムちゃん! ありがとう! あ、プリン美味しっ!」
「あー! ポムを食べないでプリ!」
そんな感じで仲良し二人組が騒がしくしてる間にクイーンネクローシス・スパイダーはちゃっちゃと素早く蜘蛛の巣を回収して、地面に降りてきて脚で汗を拭うような仕草をする。
そして、「私、無害ですよ〜」「な〜んにも悪いことしてませんよ〜」みたいな顔をして、この場を離れようとした。
「あっ! ちょっと待って!!」
クイーンネクローシス・スパイダーにまだ用事、というより是非提案したいことがある私は呼び止める。
すると、「もう勘弁して〜」みたいな感じで頭を抑えてうずくまっちゃった。
なんだか、魔物の上位種って感じが全くしないくらい臆病な性格みたいだなぁ。
とりあえず話し合い……丁寧に話すと長くなるから割愛すると、『命名』の能力で魔物の夢の幻獣種にしてあげるから私たちのエリュシオンに来ない? って言う提案。
なんだけど、クイーンネクローシス・スパイダーはこの提案を蹴ったら殺されるとでも思ったのか、すごく必死に顔を振ってた。
なんか、私が脅しかけてるみたいで感じ悪いなぁ。
まぁ、でも一応提案に乗ってくれたし良しとしよう!
蓮くんが居たら絶対やだって言いそうだけど、お生憎様全く起きてこないし、そして魔力糸っていう特殊な糸を使えるし、お鶴さんの負担の軽減にもなるからメリットしかない!
「それじゃあ早速! 『命名』っ! あなたは『ネク』!! クイーンネクローシス・スパイダーのネクさんだよ!」
私からキラキラとした燐光がネクさんに飛んでいった。
これで明日の朝になったらネクさんは立派な幻蟲種になってるはず。
「カレン、どうなったのかしら?」
私たちを見ていたクルア達がやってくる。
「うん! ちゃんと話して『命名』したから、もう私たちの仲間だよ!」
「うむ。それなら、もう日が暮れるし今日はここで野営にしましょう。カレン様の『命名』を受けたあとはすごい眠気に誘われますからな!」
と、この中で唯一魔物から幻獣種になったストラトスさんの提案をみんなで賛成、今日はここで野営することになった。
そうと決まればさすがはできるメイドのオリアさん。
クルアが野営道具を出して、ぱぱっと準備を進めてく。
日本にいた頃には数回のキャンプ経験しかない私が手を出しても足でまといになる未来しか見えない。
手も足も出ないとはまさにこの事! ………うん、アホっぽいからやめよう。
明日、起きたらネクさんはどんな姿になってるかな? 久しぶりの『命名』だから、結構楽しみ!
総合ポイントが1000ポイント超えました~~!!
すっごく嬉しいです。とてもやり甲斐を感じます! まぁ、まだまだひよっこなんですけど(笑)
なるべく面白いものが書けるように頑張ります!
評価ポイントを入れてくれた方本当にありがとうございます!
誤字報告もとっても助かります。ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
 




