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143話 レンのいない一ヶ月 (アーゼさんとの話合い)

 


 ◇◇カレンside◇◇



「あ〜、なるほど、だから起きた時に少し身体が痛かったのか。その時はたぶん翼を顕現させようと頑張ってた時だと思う」


 蓮くんに蓮くんが目が覚めなかった時のことを話すと納得したような顔をする。やっぱり、ボストンクラブやられてたから痛いよね。


「はっ?!」


 すると、蓮くんはいきなり自分の身体のあちこちをぺたぺたと触り始める。


「他に僕が寝てる間に何か変なことやってないよね?」


 あ、なるほど、エリュちゃんがイタズラしてたって言ったり、誰が運命の人か決めようとか言ったから貞操の危険でも感じたのかな?


「大丈夫だと思うよ? それから寝ている間はみんなで牽制しあってたし」


「そうね、私もちょっと血を貰ったくらいだわ」


「うん、少し添い寝したくらいだし」


 あら? 私は本当に何もしてないのにクルアとルカの二人はちょっと欲望に忠実になってたみたい。


 ってことは、欲に一番忠実なミーナは……、


 ミーナの方をちらっと見ると、目が合ってミーナが身体をビクッと震わせた。


「わ、私は何もしてませんよ?」


 むむ、その反応はちょっと怪しい……後で少しお話をする必要があるかな?


 蓮くんとジト目を送ってる。


「…………ん、本当。ミーナはレンのお世話をしてただけ」


「そうです! むしろ、クルアさんとルカさんはずるいですよ!」


 うーーん、蓮くんが起きない間ずっと一緒にいたエリュちゃんが言うなら本当なのかな?


(エリュさん、ありがとうございます)


(…………ん、約束だから)


 エリュちゃんとミーナが何かコショコショと内緒話をしてるけど小さい声だから聞こえないや。


 それより、蓮くんが気になることを言ってたんだよね。


「ねぇ、蓮くん。翼を顕現ってどういうこと?」


「ん? あぁ、ちょっと待ってね! 見てくれた方がはやいと思う」


 蓮くんはそう言うと意識を集中させるように目を閉じた。


 すると、蓮くんの背中から宝石のような翼? が現れた。


「あら、凄く繊細な魔力操作ね」


「それだけじゃないよ、同時に神気操作もやってる」


 クルアとルカはそれぞれ魔力と神気によく精通してるから分かるみたいだけど、私はそういうの苦手だからよく分からない。


「うわぁ! レン様、綺麗です!」


 ミーナも感じられないけれど、目をキラキラとさせてる。


「あ、そう言えば一ヶ月前に蓮くん翼が欲しいって言ってたっけ?」


「そう。それで、あまちゃんに言ったら日頃のお礼にってくれて、それで飛ぶ練習をしてたんだよ」


 なるほど、さすが神様。けれど、蓮くんに贔屓しすぎじゃない? 私も翼が欲しいんだけど……。


「じゃあ、レンもついに大空デビューね」


「おぉ! 今度、共に大空を駆けよう! 空中散歩なんていいかもっ!」


 元々空を飛ぶことが出来るクルアとルカの二人は蓮くんが空を飛べるようになってテンションが高そう。


「むぅ、二人ともずるいですよ! 仲間外れにしないでください!」


 そうだそうだ! 私たちのことも考えろー! まぁ、私はキュウちゃんに頼めば飛ぶことはできるけど。


「ミーナのことは僕が抱っこしてやるから。それより、一ヶ月のことを教えてくれ」


 あ、そうだった、今は蓮くんにこの一ヶ月のことを話してるところだったんだ。


 えーと、確か蓮くんが目を覚まさないところまで言ったんだっけ? 話が脱線してたから全然進んでないや。


 確かあの日、そのあとは……




 ■■




「へくちっ!」


「おや? 風邪ですかな? お身体は御大事になされ」


 くしゃみをした私を心配そうな顔でアーゼさんが見てくる。


 この日、本来なら蓮くんも交えてアーゼさんと今後の予定を立てることになってたんだけど、蓮くんが起きてこないから二人で話し合ってる。


「うーーん、最近急に寒くなってきた気がします」


「うむ。確かに、この時期にこの寒さは少々異例であるかもしれませんな」


「そうなんですか?」


「えぇ、例年よりも気温が低いように感じられます」


 ここは異世界だから地球とは比べてもあまり意味は無いかもだけど、確かにもう秋も終わりで冬になろうとしているとはいえ、日本でこの季節にこの寒さは無いかもしれない。


 アーゼさんが言うにも、この時期はもう少し気温が高いようだし。


「これは急いで街を作った方がいいかもしれませんね。それに、この寒さだと作物の冷害も考慮しなくては」


「あ、それなら大丈夫だと思いますよ。あの作物たちすごく丈夫なので」


 柿ピーから作ったからか、蓮くんが『開花』で成長させたからか分からないけど、エリュシオンの作物は妙に強い。


 この前なんて、害虫がついてたんだけど逆に叩き返してたりしていたし。もうそういうものだと思って気にしないことにしてる。


「そうですか、それなら安心です。そしたら次は街の方ですね」


 これが今回の話し合いの主題。


 既にお城の建築はあらかた終わって、あとは専門家たちの細かいところだからほとんどの人はすでにすることが無い。


 それで今、ほとんどの人はエリュシオンの生活基盤を支える水路の工事と水路ができたところから少しずつ建物を建てている。


 エルフの国では水路は無かったみたいで中世ヨーロッパみたいな文明レベルの生活を送ってたようで最初は水路の意味がわからなかったようだったけど、私と蓮くんが説明した結果、作ることになった。


 ただ、蓮くんはどうやって作るのかは知らなかったみたいで、こういうのは私の管轄。知識担当の私がアーゼさんやセーヤさんと話し合って水路の張り巡らせる区画とかを決めた。


 決めたら早速始めようってことで、森の木を切って根を引っこ抜くことは魔法があるためすぐに出来たんだけど、この世界の人達にとって未知の水路作りで手間取ってしまった。


 それでもなんとか進んで、建物も建てられるようになってきたんだけど、


「労働力不足ですね」


「うむ。それとやはりこれまでとは違う家だから皆、慣れない作業なのでしょう」


 遅遅として作業が進まないのはエリュシオンにいる人数が少ないから。


 今全員で約250人。だけど、全員が水路をほったり家を建てたりしている訳じゃない。


 いつの間にかかなり大きくなった畑をの管理もしないといけないし、巨木な我が家での仕事もある。


 それと、アーゼさんが言ったように新しい家。


 私が考えた家は、日本では普通の家。だけど、この世界の人達にとってはかなり進んだ高性能な家になる。トイレとかキッチンとか……。


 この世界に電気はないから私はかなり頭をひねって、電気の代わりに魔力を使い、建築士でもないのにライフラインの整った家の設計をしてセーヤさんに見てもらった。


 セーヤさんはすぐに理解してくれて、建築方法も立案してくれた。


 しかし、エリュシオンには魔法が使える人がいるから建てること自体は出来るんだけど、それでもここにいる大半の人は、エルフの国が滅亡して流れてきたエルフと今まで家なんてなかった魔物である擬人化した幻獣種の人達。


 エルフは魔法が使えないから、魔法を使った家なんて作ったことは無い。


 クルアとかルカ達は魔法を使った家に住んでいたけれど建築の方法なんてわからない。


 つまり、誰もが手探り状態。こんな状態でスムーズに作業が進むはずがない。


 それでも、なんとか実験的に数軒の家を建てたセーヤさんはやっぱり、建築士として天才なんだと思う。


 まぁ、でも冬になるまでには街を完成させたいと思っている為に今のペースだと完全に間に合わないのは目に見えてる。日に日に寒くなってきてるし。


「前途多難ですな」


「そうですねぇ……」


 一応、労働力の面に関してはなんとかなる、と思ってる。


 けれど、建築に関しては知識がないと出来ないからなんとも言えない。


 幸いなのは幻獣種の人達は高度な知能を持ってるから一度説明すればしっかりとできるんだけど、建築の指示や指導をするエルフ達は天才なセーヤさん以外は新しい家の作り方が理解できないよう。


「うーーん、妖精族がいればこの問題は解決できそうなんだけどなぁ……」


「?? 妖精族ですか?」


「はい、妖精族です」


 前にこの問題を何とかするために適切な人物はいないものかと<知識>の力で色々と調べたのだけれど、その時に知ったのが妖精族。


 妖精族は小柄で妖精の羽で常に浮いており、たくさんの魔力と魔道具製作や高度な建築技術を持つ種族。そして種族全体が研究肌の学者さんみたいな感じで、未知の物が大好き。だから、今のこの問題解決にぴったりなの。


 ただ、今はその技術を奪おうとした他種族の襲撃を受けたことで姿を隠してしまいほとんど会うことはなくなってしまったとか。


 けれど、たまに市場やオークションで妖精が作った魔道具が出てくることから人間の国のどこかに妖精の住処となっている家があって、そこで姿を人間にして紛れているとかいう噂もある。


「なるほど、確かに妖精族がいればとても助かりますな。けれど、私も生きていて妖精族を見たことなんてないですぞ」


 まぁ、そうだよね。姿を隠したのはもうずっと前の話だし。


「あ、いや、確か……」


「アーゼさん?」


「そういえば、子供の頃、妖精族の村があるっていう噂を聞いたことがあります」



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