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142話 レンのいない一ヶ月(蓮くんが起きてこない)

 


 ◇◇カレンside◇◇



 コケコッコォォォォォォ!!!



「う、ん…………」


 まったく、ピィナはうるさいなぁ……。


「起床。ほら、カレンも起きる」


 近くでそんな声がしてゆさゆさと私を揺らしてくる。


 私はだんだんと脳が覚醒してきて、もう朝だと言うことを認識した。


「ん〜〜……おはよぉ……」


「挨拶。おはよう」


「それじゃあ、おやすみぃ……」


「却下。起きなさい!」


「ぐへぇっ!?」


 二度寝しようとしたらアルカちゃんに腹パンされた。


 まったく、容赦がないんだから。蓮くんなら優しく起こしてくれるのに。蓮くんの娘を自称するならそういう所も真似て欲しいものよ。


 まぁ、こうして朝が弱い私を起こしてくれるのは非常にありがたいんだけど。


 ということで、目が覚めた私は扉の前で控えてるクルアのメイドさんにお世話してもらって朝の支度を済ませ、いつも通り食堂へと向かうことにした。


 いつもの美味しい蓮くんの朝ごはんを目指して。


 けれど、その日の朝ごはんは蓮くんの作ったものじゃなかった。


 いや、別に決して美味しくないわけじゃないんだけど、なんだか物足りないような、そんな気分。


 料理上手なエルフの人に蓮くんはどうしたのか聞いてみると、まだ来てないみたい。


 いつもは誰よりも朝早く起きて、朝ごはんを作ってみんなが起きてくるのを待ってる蓮くんがいないなんておかしい。


「レン様、どうしたんでしょう?」


「未だ虚無から目覚めてはないのではないか?」


「いや、それならエリュとオリビアが起こしてると思うわよ。今日は私のところにオリビアが来なかったし」


 ミーナ、ルカ、クルアの三人も蓮くんの珍しいことに心配な様子。


 確かに、蓮くんもたまには寝坊することもあるかもねって思ったけど、蓮くんにはエリュちゃんとオリビアさんがいるから起こしてもらえてるはずだよね。私のアルカちゃんみたいに……腹パンかな?


 ちなみに、オリビアさんは蓮くんをお世話したあとは本来の主人であるクルアの部屋に行っているみたい。今日は一人で起きてきたみたいだけど。


「あ、でも、もしかしたらオリビアさんもエリュちゃんも珍しく蓮くんが寝坊したからいつもの頑張りを慮って寝させてあげてるのかも」


 蓮くん、昨日は私たちと遊んでたけど普段は<才能>の力を使ってみんなよりも人一倍動いてるからね。


 って、思った時だった。


 食堂のドアが勢いよく開いてそこからオリビアさんが入ってきた。


 ご飯を食べに来たのかと思ったけど、キョロキョロと何かを探すように辺りを見ると私と目が合って、早足でオリビアさんは私のところにやってきた。


 どうやら、私に用があったみたい。なんの用だろう?


「カレン様、少しお耳に入れたいことが……」


 そう言って、内緒話をするように小声で要件を告げてくる。


「レン様がお目覚めになられません。お声をかけても、体を揺すっても、エリュ様が腹パンをしても、私がボストンクラブをしても……どうしたらいいでしょう?」


 たぶん、蓮くんが目覚めない……つまりエリュシオンのリーダーが目覚めないってことだからみんなを不安がらせないようにみんなに聞こえないようにするために小声で言ったんだと思う。


 さすがはこういうとこは要人に使えてたできるメイドさんだね。


 だけど、蓮くんにボストンクラブしたのはどうなんだろう……ボストンクラブってプロレス技の日本語で逆エビ固めだよね? 大丈夫かな蓮くん……私よりひどい起こされ方だけど、生きてるよね?


「分かった。今から私が行くよ」


 私の『飛耳長目』と『鑑定』で見れば何かしら身体が変な状態異常になってた場合どうなってるのかが分かるはずだから。


 まぁ、でもたぶん、そんなに変な状態異常にはなってないと思う、もうだいたい予想がついてる。


 私が席を立つと、たぶん話を聞いていたんだと思う、ミーナ、クルア、ルカも立ち上がって一緒に蓮くん部屋に行くことになった。


 蓮くんの部屋に行くとエリュちゃんが蓮くんに落書きしてた。


「ちょちょ、エリュちゃん何してるの?」


「…………あ、カレン。レン、殴っても蹴っても起きないから落書きしてる。なかなかの出来栄え、自信作」

 

 いつもあんまり表情が変わらないエリュちゃんだけど、今は「ふんぬっ」っと、鼻息を荒く吐いてる。


 ていうか、殴っても蹴ってもって容赦ないなぁ。


 落書きは……なるほど、自信作と言うだけあってなかなかよく出来てる。この眉毛の形とかが特にいいと思う。


「蓮くん、起きて。蓮くん!」


 とりあえず、優しくゆさゆさと揺らしてみたけれど、ボストンクラブされても起きないくらいだからもちろん起きるわけが無いよね。


「カレン、ちょっといいかしら」


「うん? 分かった」


 クルアが声をかけてきたので、ベットの横の位置を交換する。


「ほら、さっさと起きなさい……『目覚め(ザメハ)』」


 蓮くんに手をかざすと、以前ルカの妹のマールちゃんを起こした時に使った魔法を使ったみたい。


 けれど、蓮くんは起きることは無かった。


「起きませんね。それじゃあ、次は私がいいですか?」


 すると、今度はミーナが手を挙げてクルアとベットの横の位置を交換する。


 はて? ミーナにこういう時に使えるスキルとかあったかな?


 ミーナは最近伸びてきてボブくらいになってきた髪を耳にかけると、落書きされた蓮くんの顔を両手で挟んで、ゆっくりと蓮くんの顔に覆い被さるように自分の顔を近づけていき……。


「「「ちょっと待った!!」」」


「あうっ?!」


 と、その瞬間、私を含めたクルアとルカの三人で咄嗟に唇が触れる前にミーナの顔と蓮くんの顔の間に掌を滑り込ませていた。


「皆さん、何するんですか!!」


「「「それはこっちのセリフ!!」」」


 そう言うと、ミーナはポカンとした顔をした。


「私は、レン様に目覚めのキスを……こういうものは運命のキスで目が覚めると相場が決まってます! カレン様の言う『オ・ヤ・ク・ソ・ク』ってやつですよ!」


 なるほど、言ってることはわわからない訳では無い……わからない訳では無いけれど、


「「「それがなんでミーナなの?!」」」


「そんなこと、分かりきってるじゃないですか! 私とレン様が運命の赤い糸で結ばれてるからです」


 しれっとした顔でそんなことを言うミーナ。


「む、適当なことを言うな! レンと結ばれてるのは私だし!」


「あら? ルカこそ根も葉もないことを言わないで欲しいわ」


 まぁ、そうなるとルカとクルアも黙っていられるわけがないはずで、


「三人とも甘いよ! あまあまだよ! 私と蓮くんは一緒に死んで、そして一緒にこの世界にやってきたんだよ! これ以上運命なんて相応しい言葉が似合う二人は私たちしかいないじゃない!」


 そして、私だってすでに蓮くんに好意を寄せてることを明言してるんだからもちろん割り込む。


「なんですか! レン様に最初に思いを告げたのは私なんですよ! ぽっと出の三人は黙っていてください!」


 カチーーン。さすがにぽっと出とか言われちゃうと頭にきちゃうなぁ〜?


「ふんっ、そんなこと言うならレンに一番最初に唇を奪ったのは私なんだけれど」


「二人とも語るに落ちたよ この中で私はレン()()一番最初にキスをしてもらったんだし!」


 クルアとルカも腹が立ったのか、それぞれお互いにアドバンテージをとってると思われることを口にする。ルカなんて蓮くんからってことをすごく強調してる。


 私にその手のことは………くっ、悔しいけどどれも中途半端……。


 ピコーーン!!


 そのとき、私の頭の中で素晴らしい名案が浮かび上がってきた。


 そうだ、これをすればこの場のみんながやりたいことができ、もし成功すればこの生産性の無い争いを抑えることが出来るのでは?!


「みんな、そこまで言うなら誰が本当に運命の糸で繋がってるか白黒つけよう。そして今まで何度も争ってきた正妻の座を決めようじゃない」


 私はみんなにそう言い放つ。


「いいですよ、望むところです!」


「そんなのは既に見えているというものだというのに……やれやれ、とりあえず話だけは聞いてあげよう」


「それで、カレンは何をするつもり?」


 ふっふっふ……よくぞ聞いてくれた!


「みんなで順番に蓮くんにキスをするの。それで、もし目が覚めたとしたらその人が運命の人で正妻とする。これでどう?」


 どうせみんな何かと口実をつけて蓮くんとぶっちゅーとキスしたいだけ、私を含めて。


 なぜなら、蓮くんは意外とガードが硬いから。


 人命救助のときやぼーっとしてる時の不意打ちにはできるけど、それはなんだか違う気がする。


 だけど、蓮くんは正攻法で迫るといつもやんわりと断ってくる。だから、みんな結構蓮くんに飢えている。定期的に女子会をすることがあるからそれで分かってる。


 三人ともそれでいいと了承をして、くじを引いてキスする順番を決めることにした。こういう時に備えて私はいつも割り箸で作ったマイくじ引きを持ってるからそれを使う。


 さて、それじゃあみんな一斉にひこう! ってなったときに声がかけられた。


「…………四人とも、馬鹿なことやってないで早くレンを何とかして」


 落書きに満足したのか、それとも蓮くんが起きた時に怒られると思ったのか、黙って自分で蓮くんに書いた落書きを消してたエリュちゃんだ。


 呆れられたような無表情でジト目を向けられてる。


「はぁ、そうね。レンが寝ている時に無理やりやっても意味無いもの」


「それもそっか。あ、ちなみにさっき調べたけどレンが起きないのは呪いとかそういう類のものじゃない。身体は至って正常だった」


 さすがは年長者二人、いつまでもただをこねることがない。ミーナはまだ不満そうだったけど。


 というか、やっぱり異常はないのね。それなら私の予想は的中かなぁ……。


 まぁ、一応確認を、


「みんな少し離れててね。『神気解放:飛耳長目』!!」


 これで蓮くんの身体に目を凝らせば、もし魂が分離して別のところにいたとしてもその姿を見ることが出来る。


 さてさて、蓮くんは…………ん? 何やってるんだろ?


「カレン、どうかしたの?」


 少し黙って眉をひそめてたからか、何かあったのかとクルアが聞いてきたけど。


「うーーーん、蓮くんは予想通り神様の所にいるんだけど、ゲームしてるわけじゃないみたい」


 てっきり、また神様とゲームでもしてるかと思ってたのに、何かを必死に出そうとしてるような雰囲気だった。何をしていたのかがさっぱり分からない。


「それじゃあ、レン様は何か危険なことをしてるわけじゃないんですね?」


「うん、その点は大丈夫かな?」


「それじゃあ、レンはいつ起きるんのかしら?」


「それはわかんないけど、また一日したら慌てて帰ってくるんじゃない?」


 蓮くんが神様の所に行くのは初めてじゃないし、前に行った時はゲームをずっとしてたみたいでまる二日くらい帰ってこなくて、こってりと怒ったし。


 だから、時間がもう既に朝だと分かったらすぐに帰ってくるだろう。


 この時はそう思ってのだけど。





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