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133話 翼をください

 


 ◇◇レンside◇◇



 そろそろ本格的に寒い日が来るようになった今日この頃。


「うーーーん、そろそろもう少しあったかい服が欲しいなぁー」


「…………ん、確かに寒くなってきた」


 僕がブルりと体を震わせながら言うと、傍らにいるエリュも同じように体を震わせてしみじみした感じにつぶやく。


 僕の神気を注いでるからね、僕に似てエリュも寒さに弱いのかもしれない。


 僕たちは今、外に出て作業している人たちを見て休憩中。


 先日、酒の木の準精霊としてシュテンがやって来て、巨木な我が家に住むようになり、シュテンは多分今いるエリシュオンの民の中で一番幼いために子供たちは妹ができた! みたいな感じでみんなシュテンのことを可愛がっているようですぐに仲良くなっていた。


 子供たちと上手く馴染めてるのはとってもいいんだけど、ただ容姿は幼いながらも口調や態度は見た目相応のこともあるが、大人としての貫禄のようなものが時々見えるし、常に持っているものが大きな酒瓶なため、お酒好きが多いここの大人たちとも打ち解けていたんだけど、夜遅くまで飲んでいたり、お酒談義を交わしているのはどうかと思うんだけどな。


 シュテンが常に大きな酒瓶を持っていることは、華憐は難色を示したけど、ほかの子供たちに振る舞わない等のルールを決めて渋々持つことが許されてた。今じゃあシュテンの立派なトレードマークみたいなものだね。


 今は多分、ドワーフたちと一緒にお酒作ってるんじゃないかな? シュテンが作ったお酒、昨日華憐がシュテンに酔わされてから少し貰ったんだけど、とてつもなく美味しかった。きっと、エリシュオンの名産品に出来ると思う。


 そう伝えたら、シュテンは張り切ってお酒作りを始めた。ドワーフのおっさん達と酒蔵に篭ってるのはどうかとは思うけど、楽しそうだから別にいいだろう。


 うーーん、それにしても……


「空飛べる人多いなぁ……」


 今、僕達の目の前では背中に翼を生やした人達がせっせと資材を運んだり、高い屋根の作業をしていたり、とにかく自由に飛び回ってる。


 ほら、あそことか幻影クジャクのモヒカン組がヒャッハーしながら飛び回ってるし、向こうはレオが子供たちと上空急行落下みたいなことして遊んでレアに怒られてるし、あっちでは折り鶴たちが空を飛びながら糸で作ったのか蹴鞠見たいのを蹴って遊んでるし、後ろの方では鋼コンドルたちが競走みたいのしている。


 あれ? 意外とみんな仕事をしていない? いやいや、きっと休憩中だよね。きっと、サボってるとかじゃないと思う。


 視線を上空から地上へ戻せば。


 そろそろ気温も下がり始めたというのにたくさんの汗をかいて丸太を運ぶエルフたち、脱走したニワトリを必死に追いかけてるリザードマン、みんなにお水を配って回る鬼人族たち。


 うん、こっちはすごく必死に仕事してる感じがする。


 でも、なんだかこういっちゃあなんだけど惨めだなぁ……これが、地面でのたうち回る生物と、優雅に大空を翔る生物との違いか……。


「……僕も空を飛びたいなぁ」


 自然とそんな言葉がポロリと零れた。


「………どうしたの、急に」


「いや、何だかさ、あの大空へ翼を広げ飛んでいきたいんだよ」


「………ん、翼をください?」


「まぁ、そんな感じ」


 でも、意外と出来るのかもしれない。


 地球じゃあ、飛行機やヘリコプターとかに乗らない限りは空を飛ぶことなんて出来ないけれど、ここは地球じゃなくて異世界、地球の常識が通じないこともあろう。


「………レン、翼なら前に手に入れた」


「ん? そうだっけ?」


「………うん、カレンの魔法」


「あぁ! あれか! 確かに翼を生やせる!!」


 なるほどなるほど、この前華憐に教えてもらったオリジナル魔法『ケモ耳変身(モフモフになろうよ)』を応用すれば翼を生やすことができる!


 あの魔法、名前がケモ耳だから動物の耳と尻尾しか生やせないと思ったけど、そんなことはなくて応用することでほかの部位をつけることもできたのだ。


 例えば魚、エラと水かきとかを生やすことが出来たし、ネズミとかゾウとかだと鼻を長くすることも出来た、なかなか応用が効く魔法だった。


「よし、なら早速やってみよう! 『ケモ耳変身(モフモフになろうよ)』!」


 ぼふんっと、煙が僕を覆い隠してそれが晴れると、


「…………ニワトリ?」


「え? あ、ほんとだ……」


 エリュの呟きを聞いて自分の格好を見ると、確かにニワトリになっていた。


 なんだか想像していたのと違う、なんかこう背中から翼が生えるのを期待したんだけど、僕の手がニワトリの羽になったみたいな感じなんだけど……。


「…………プププッ、ニワトリのコスプレ」


 くっ……あの無表情が多いエリュに笑われるとは、今の僕はなんとも滑稽な格好なんだろう……くちばしとトサカのような違和感もあるし。


 ていうか、なんでニワトリなの?! ニワトリ飛べないじゃん! 僕が魔法使う時に鳥って想像したのが抽象的過ぎたのかな?


 あ、いや、ちょっと待て……うちのニワトリ、そういえば飛ぶな。


 じゃあ、実はニワトリも飛べる……? 飛べない鶏はただのニワトリだ……?


「やったろーじゃないか! ピィナなんかに負けてたまるかぁー!!」


 ニワトリ魂にかけて負けるわけにはいかない!!


 それから、さすがに今の格好でバサバサやってるのをみんなに見られるのはなんだか気恥しいから少し人気のないところに移動する。


 前に華憐が魔法の練習をする時に使ってた場所に来た。ここならあまり人が来ることも無いかな?


 すると、クイクイっとニワトリの羽を引っ張られる。


「ん? どうしたエリュ?」


「…………鳴いてみて?」


「………こ、コッケコッコーーー!」


「…………ぷっ! あははははははは!」


 なに?! なんなのさ!! そんなにお腹抱えて笑いよって!! 愚弄してからに、全てのニワトリのコスプレしてる人に謝れ!!


「くっ……今に見てろぉ! 飛んでやるからな!」


 それから、僕は両手の羽をバサバサと動かして必死に飛ぼうと頑張ってみた。


 ジャンプして羽をバサバサしてみたり、加速をつけて羽をバサバサしてみたり、少し高いところから飛び降りて羽をバサバサしてみたり………。


 その度に、普段そんなに大爆笑することがないのに、なにがツボに入ったのか、お腹を抱えてのたうち回ってるエリュ。


「はぁ……はぁ……やっぱり……ダメなのか……」


 手をバサバサしすぎて、息がキレキレで疲れた。


 くそぅ……あの三歩歩いたら色々忘れるバカにできて、なんで僕に出来ないんだ……。


「あ、蓮くん。こんなところにいた」


「レン、何してるのかしら?」


「あれは、ニワトリではないか?」


 すると、僕のことを探してたのか、華憐とクルアとルカがやってきた。


「ああ、三人ともどうしたの?」


「いや、それは私のセリフなんだけど、蓮くんこそどうしてニワトリのコスプレ?」


「いや、えーと……」


「…………レン、それで空飛ぼうとしてた」


「あっ! こら、エリュ!」


 僕が、空を飛びたいからニワトリの格好でバサバサしてましたーなんて言うのはなんだか恥ずかしいから濁してたのにエリュがバッサリと暴露しよった!


「蓮くん……」


「ぷっ! レン、あなた……クスクス」


「おぉ! 分かる! 分かるよレン! 大空は我らが翔くためにあるのだから!」


 華憐は呆れたような目で僕も見て、クルアはエリュと同じで笑いが抑えられないようで、ルカは何故か共感してくれた。


 なんだか、惨めだ……。


「蓮くん、そもそもその魔法はコスプレ魔法であって他の動物の能力を得られるような魔法じゃないよ?」


「え? そうなの?!」


「うん、この前ちゃんと伝えたじゃん。本当にその魔法はただ単にコスプレするだけの魔法でそこに感覚とかを付けることが出来るだけなんだよ」


 な、なんだと……なら僕はただエリュに恥をさらしただけじゃないか……。


 こ、こんなのやってられるかぁー!!


「『解除』………はぁ……空の夢は遠いなぁ」


 僕は『ケモ耳変身(モフモフになろうよ)』を解除してニワトリのコスプレを消して、ガックリと肩を落とした。




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