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131話 酒の木の準精霊

 



 ◇◇レンside◇◇




「兄さん、これはもう少しピリ辛の方がいいんじゃないか?」


「そうか? カレーのことはそなたに任せる。それよりも、これはまだ炊き込みが足りないな。もう少し、時間をおこう」


「わかった」


 僕の前ではそんなことを言いながら楽しそうにカレー風味炊き込みご飯を作っていくシロ様とカレール。


 なんだか昨日、華憐とシロ様とカレールは色々あったみたいで、今までどこから来たのかとか全てが謎だったシロ様とカレールの正体が判明。


 お二人は兄妹であったらしい。そして、その裏で密かにシロ様の初恋は終了を迎えるのだった。


 それでも、二人は仲良くなったみたいで、今もこうしてカレー風味の炊き込みご飯作ってるし、昨日も福神漬け作ってたみたいだ。


 まさか、僕の神気と柿ピーから生まれた準精霊だったっていうことには驚いたけど、生まれてきた理由を聞いて一応納得。


 確かに、ニギリメシコシシカリの木を植えた時は、『私はニギハミコハクヌシ。これは、ニギリメシコシシカリ』って言って、ハク様がコシヒカリのおにぎり持ってる所を想像して植えたし、カレーのルーの木の時は、『カレー』→『インド』→『褐色肌の姐さん』って感じの連鎖ゲームで想像したからね。


 その容姿が想像通りのあんな感じになって当然なんだろうなー。


 そういえば、シロ様は本当の姿の東洋龍になれるんだったかな? それなら、カレールもなにか本当の姿があるんだよね、なんなんだろう?


「なぁ、カレール」


「ん? なんだレン」


「シロ様は東洋龍になれるみたいだけど、カレールの本当の姿はなんなんだ?」


 わからない事があれば本人に聞いてみればいいじゃない! 華憐なら能力で分かるんだろうけど、なんか見えなくてもいいものまで見えるみたいで生き物にはあまり使ってないんだよね。


 まぁ、カレールは僕が想像したのが具現化したようなものだから、あの時のことを思い出せばだいたい予想はできるけど。


「私の本当の姿か? ゾウだよ」


「あら? なんだか普通の動物見たいね」


 カレールが答えると、今までエリュと何か話していたクルアが話に加わってくる。


 いやいや、クルアよ。僕がただのゾウを想像するわけないだろう。インドの代表だよ? もっとすごいの想像するわ。


「ちなみに、腕は四本あって二足歩行だよ」


「え? 何よそれ、一気に想像できなくなったんだけど……」


 へぇ、クルア想像できなってことは、そんな動物や魔物はこの世界には居ないんだね、まぁ見た目から言うとどちらかと言うと悪魔みたいな感じなのかな? 神様だけど。


 僕がイメージしたインド代表はガネーシャだ。ゾウの顔したやつ。だから、カレールの本来の姿はガネーシャみたいなんだろう。


 そういう事をクルアに説明してあげる。


「へぇ、レンの世界にはそんな神様がいるのね」


「詳しくは華憐に聞いて見て。僕は見た目と出身しか知らないから」


「そうね、そうするわ。それで今日のレンは何するの?」


「今日はいつもと同じでお城とか街作りがどこまで進んでるのか見てみて、酒の木に行くつもり」


 アーゼさんやセーヤさん主体でみんなで力を合わせてどんどん街づくりが進んでいってるからいつも通り視察と手伝い。


 それと、シロ様とカレールの話を聞いて、ニギリメシコシシカリの木とカレーのルーの木、これの他にもうひとつ酒の木を植えていたのを思い出したから、もしかしたらシロ様やカレールみたいな準精霊が生まれているかもと思って行ってみることにした。


「私も付いて行っていいかしら?」


「それは、もちろんいいけどアブソリュートは?」


「それなら大丈夫よ、おじいちゃんは今日はルーシィーとどこかに行ったわ」


 今、エリュシオンにはクルアのおじいちゃんことアブソリュートと妹のルーシィーがやって来ている。


「そうなんだ、それじゃあ一緒に行こっか」


「うん! レンとの行動は本当に久しぶり! 凄く嬉しいわ!」


 クルアはその嬉しさが溢れるような笑顔で言ってくる。


 確かに、ルーシィーとアブソリュート、特にアブソリュートの存在でここ最近あまり一緒にいることがなかったからね。


 アブソリュート、僕のことをなにかと敵視してるから。


 それから、カレー風味の炊き込みご飯を美味しそうに食べてたエリュを連れて僕たちは視察に向かった。




 ■■




 視察は問題なく終了。


 経過は、お城はほとんど完成したと言ってもいいと思う。セーヤさんはまだ何か足りないとか言ってたけど、僕には建築はよく分からないし全ておまかせしているから任せてる。


 でも、見た感じかなり大きかったし広かったなぁ……。


 この巨木な我が家の移動が大変だから移住しようと思ったんだけど、もしかしたらあまり変わらないかもしれない。


 でも、セーヤさんが言うには機能性もしっかりしているから安心して欲しいとの事、信じて待つしかない。


 他の人たちは居住区や商業区などの整地、建築、道作りとみんな働いてた。もちろん、僕もできる限り手伝ったよ。


 街が徐々に出来ていくのは毎日巨木な我が家から見ていると、感嘆するよ。


 そのうち細かく説明していくね。


 今は、エリュとクルア、それと酒の木のところに行くことを知って付いて来たがったミーナを連れて酒の木に向かってる。


 だんだんと、空気がアルコール臭のような香りがまじり始めている。決して、酔っ払ったオッサンのあの酒臭い匂いじゃなくて、芳醇な気持ちのいい香りだよ!


「それで、レン様達はなんでお酒の木に?」


 ミーナが僕に聞いてくる。


「ほら、昨日シロ様とカレールのこと話したでしょ? それなら、もしかしたら同じく柿ピーで植えられた酒の木にもいると思って」


 一応、昨日ミーナやクルアとか主要な人物にはシロ様とカレールの説明はしておいた。


「なるほど、確かに酒の木のところにもいるかもしれませんね!」


 酒の木に向かう理由をミーナに話したら納得してくれた。まぁ、もしかしなくてもいると思うけど。


「スンスン……それにしても、お酒の木の近くはいい香りですね!」


「そうね、カレンやルカはこれにやられるみたいだけど」


「勿体ないですね」


「あの二人はすごくお酒が弱いものね」


 ミーナとクルアの言う通り。さっきも言ったけど酒の木に近づくにつれてお酒の匂いが強くなってきて、お酒に弱いカレンとルカは近づくだけで酔ってしまう。


 だから、カレンに怒られそうになった時はこのお酒の木に逃げれば逃げ切ることが出来る。まぁ、そうすると刺客としてカレンの代理が捕縛に来るんだけど。


「エリュは大丈夫そうね」


 クルアが僕の隣を平然と歩くエリュを見て言う。


「………ん。私はカレンみたいに軟弱じゃない」


 まぁ、エリュはなんか何でもかんでも食べたり飲んだりするからね。そういえば、エリュも精霊なんだよなー。なんか、精霊っていったいどんな存在なのかすごく謎だ。


 このエリュシオンにいる精霊はカレンが契約してるキュウとこなす、剣精霊のエリュ、銃精霊のアルカ、準精霊のシロ様とカレール。


 今思えば、ここに天然の精霊がいない………キュウとこなすはキュウリとナスに華憐が『命名』して、黒歴史で発生したし、エリュとアルカも華憐の『命名』、シロ様とカレールは僕の神気と柿ピーの融合。


 こんど、普通の精霊を探してみよう。


 そんなことを考えていると、お酒の木に到着した。


 さてさて、ここに準精霊はいるかな?


「うわぁ〜、相変わらず美味しそうなお酒ですね!」


「そうね、ここのお酒は絶品よね~」


 と、二人はさっそく木に近づいて、ぽたぽたと滴っている雫を手に貯めてそれを飲み始める。


 このお酒の木からでる水分はどれも結構絶品なお酒なんだよね。


 い~なぁ~……僕も飲みたい、けど華憐に禁止されてるから……。


 え? 酔わないくらいごく少量ならいいんじゃないかって? 甘いっ! 甘いぞ~、さっきは華憐が『鑑定』の能力を人に使うのを控えてるって言ってたけど、あの子なぜか僕にだけはなんの躊躇いもなく使うんだよ!


 それで、飲んだことが分かるみたいで、すぐバレる。まぁ、そういうことで僕はお預けだ……早く大人になりたい。


「レン様レン様、カレン様には黙っておきます。一緒に少しだけ飲みましょう?」


「そうね、レンはいつも頑張ってるもの、私も黙っておいてあげるから、今日くらい飲んだら?」


 ミーナとクルアがちょいちょいっと手招きしてくる。


 くっ……悪魔の囁きが!


 ダメだダメだ! 華憐にはなんでもお見通しなんだ、バレたらまたネチネチと怒られるから耳を塞ごう!


「あ~~~~~~~~」


 僕は悪魔の囁きを耳を手で閉じて、声を出して聞こえないようにする。


「レン様は真面目ですね」


「まぁ、カレンじゃ黙っててもバレちゃうものね」


 二人は僕がお酒禁止令を出されてるのを知ってるから、少し罰が悪そうな顔をして飲むのをやめた。


「なんじゃ? ぬしらはもう飲まんのか?」


 すると、聞き覚えのない幼い女の子の声が聞こえてきた。


 みんなで声がした方を見てみると、


「子供?」


「子供ね」


「………私よりも小さい」


「………あぁ、なるほど」


 そこには、赤色の綺麗な着物をやや着崩したように着ている、幼稚園児くらいで赤紫色の髪の幼女が自分よりも少し小さいくらいの酒瓶をまるで人形を抱きしめるようにして持って立っていた。


「わらわはシュテン。この木に宿る準精霊じゃ、以後よろしくのぅ」


 酒瓶を抱えた幼女……シュテンは、歳相応の可愛らしい笑顔で言った。




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