表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/236

128話 シロ様とカレールさんを覗き見

 


 ◇◇カレンside◇◇



「さてー、そろそろ様子を見てみようかな」


「賛成。見てみよう!」


 私は今、チミさんと一緒に厨房に来て福神漬けの下ごしらえを終えたところ。ここに来る前に途中でアルカちゃんも拾って一緒にいる。一応アルカちゃんにもカレールさんとシロ様の仲をくっつけよう作戦の概要は話してある。


 それよりも聞いてよ! もう前みたいに包丁で指を切ったりすることも無くなったんだよ! すごくない?!


 それで、今カレールさんとシロ様は赤い福神漬けを作るための赤の着色料になる花を取りに行ってもらってるんだけど、二人の仲が進展すればいいんだけどなぁ。


「え? カレンさんは二人の様子が見れるんですか?」


 と、隣のチミさんが聞いてくる。そっか、チミさんはまだここに来て日が浅いから私の力のことをあまり知らないもんね。


「見れますよ。『神気解放:飛耳長目』!!」


 私の髪が金髪になって、周囲に青金色のオーラが立ち込めていく。私と神気で繋がっているアルカちゃんも同じ状態になってる。


「これが……話には聞いてましたけど、本当に神気が使えるんですね。それで、わたくしもお二人の様子を見ることが出来るのですか?」


 ふっふっふっ! 私の力に恐れおののいていたチミさんが、そんなことを聞いてくる。かなり前の頃ならそんなことは無理だったけど、ノープロブレム! そこら辺は蓮くんと解決したのだ!


「出来ますよ! とりあえず、これを装着してください」


 私はチミさんに目元全体を覆うようなゴーグルを渡す。


「これは……」


「こんなふうに付けるんです」


 私が実践してあげると、チミさんもそれを付ける。そう、VRゴーグルを!


「じゃあ、アルカちゃんお願い」


「了承。『視覚共有(一緒に見よう)』発動」


 アルカちゃんがVRゴーグルに魔力を流すと、VRゴーグルに付与された魔法が発動される。


 私が魔力を流すと制御できなくて誤作動を起こすことがあるからね、基本的に魔法を使うことを禁止されてるんだよぉ……ひどい。


 ちなみに、このVRゴーグルは蓮くんが作ったんだけど、どうせなら魔法付与するかーって言って、私が考えたこの魔法を付けてもらったの。一応ちゃんとVRとしても機能するからね!


視覚共有(一緒に見よう)』は、その名前のまんま、私が『飛耳長目』で見たものをそのゴーグルに映し出す魔法。これで、みんなで一緒に遠くを見れるようになった!


「あら? これは、カレンさんの見ているものですか?」


「そうだよ、私のこの能力はどこまでも遠くを見ることだから、これで今から二人を見てみるね!」


 私はさっそく目を瞑って二人を探す。ん〜〜、どこだろう?


「あ、カレンさん、今カレールが見えましたよ」


「え? どこどこ?!」


「もっと右よ、もっと右! あぁっ! 行き過ぎた!」


「ええっ! えーとえーと、この辺? あっ、いた!」


 チミさん、意外とゲームの素質があるかもしれない……今度、なにかゲームに誘ってみようかな?


 結構楽しそうにしてるチミさんの声を聞きながら、二人を追跡する。二人はちょうど川を渡ってる所だった。


『カ、カレール、川の流れが結構早い、気をつけるのだ』


 そう言って川の上からカレールさんに手を差し出すシロ様の姿が見える。


 おおっ! シロ様、ちゃんとエスコートしようとしてる! てか、なんで水の上に立ってるの?!


『これくらいなら問題ないよ』


 だけど、カレールさんはその手を取ることなく、ピョンとひとっ飛びで二十メートルくらいある川幅を飛び越えてる。


 カレールさん、身体能力高すぎ……。


「あぁっ! カレールったらあんまり空気読むことがないのよね」


 隣でチミさんもその光景を見て感想をこぼしてる。確かに、シロ様の気持ちを気づいてもいいと思うんだけど……カレールさんも意外と鈍い? シロ様ちょっとガッカリしてるし。


 というか、シロ様、どうやって水面を歩いてるんだろう……そう、ガックリとしたシロ様はとぼとぼも川の水面を歩いてカレールを追いかけてる。


 あの二人、蓮くんがニギリメシコシヒカリの木とカレーのルーの木を植えた時に突然やってきた謎人間なんだよね。


 その謎がまた少し深まった気がする。


『カ、カレール、カレンが言ってた福神漬けってなんだろうな、私のニギリメシにも合うだろうか』


『どうだろうね、カレーに合うんだ、たぶん白ご飯にも合うだろう』


『そうだといいのだが』


『『………』』


 わぁーー! シロ様もっと頑張って会話続けて! オタクな私が言うのもなんだけど、コミュ障かよっ!


 それから二人はぽつりぽつりと途切れ途切れの小さな会話を繰り返して、黙々と探し物を探していく。


 シロ様が時々視線を向けて話しかけようとしたりしてるけど、やっぱり緊張でもしてるのか気まずい感じになっていく。


 すると、先頭を歩いてたカレールさんが急に立ち止まった。


『カ、カレール? 急に立ち止まってどうしたのだ?』


『しっ! あそこに魔物がいるんだよ』


 私も視界をその魔物に合わせる。確かに、犬? の魔物が数匹いる。


『そうか、ならここは私に任せておけ』


 そう言って、前に出ようとするシロ様。


『待ちな、まだ気づかれてないんだ。ここは、私に任せときな』


 けど、その腕を引っ張ってカレールさんが前に出た。


 そして、ひと握り土をとったと思ったら、魔物に向かってそれを投げた。


『キャウンっ! クシュンッ!』


 すると、魔物はなぜか涙を流してクシャミを連発し始める。


 たぶん、あれだ……カレールさんカレーのスパイスを調合するスキル持ってるから、それで土をスパイスに調合して投げつけたんだ。


『さぁ、今のうちに行くよ』


『しょ、承知した』


 二人はそそくさと魔物の横を通り抜けて、先に進む。


 それからもシロ様の出番はあまり訪れる事がなかった。


 大きな木が倒れて道を塞がれていれば、カレールさんが殴って破壊して、魔物がやってきたらスパイスを投げつけて撃退。


 さらには、カレールさんを見ていたのか注意不足になっていて石に躓いて逆にカレールさんに支えてもらう始末。いいとこ無しだよ。


『おや? 探している花はあれじゃないかい?』


 カレールさんが大きな岩の上に咲く赤い花を見つけたみたい。そう、それがこの世界の赤の着色料になるカーサマスの花。


『本当だ。よし、私が採ってこよう!』


 そう言って、意気揚々と岩を登り始めるシロ様。


『シッ!』


 だけど、ここでもやっぱりカレールさんがひとっ飛びで岩に着地してカーサマスの花を採る。


 カレールさんのあの身体能力は本当になんなんだろう……なにか強化の魔法をかけているわけではないみたいだし……もしかして、カレーパンマンの中身とかだったりするのかな?


 シロ様も奇異な存在ではあるけどカレールさんみたいに身体能力が高いわけじゃないみたいだし、そんなシロ様はまたしてもいい所が見せれなくて少し落ち込んでる。これは、帰ってきたら元気の出るまじないをかけたニギリメシを握ってあげた方がいいかもしれない。


『シロ、しっかり採ったぞ! ん?』


『ガルルル』


 すると、お昼寝でもしていたのかさっきの犬の魔物よりも一回りも二回りも大きな緑色のトラ? の魔物が唸りながらカレールさんを睨みつけていた。


「カレンさん! あれはまずいです! ベンガウルというこの辺りだと上位に入る魔物です! すぐに二人を逃がさなくては!」


 チミさんが慌てたように言ってきた。確かに強そうで大きな虎だけど。


『カレール!』


 シロ様が悲痛そうな声でカレールさんに叫ぶ。


 対するカレールさんは、ベンガウルを睨んだまま微動だにしない。


『ガルルル………ギャウッ!』


 そして、ベンガウルがカレールさんに向かって飛びかかった。


『ふっ! シロ! 逃げるよっ!』


 カレールさんは、飛びかかった瞬間に岩から飛び降りると、シロ様にそう声をかけてから来た道を走って戻っていく。シロ様もカレールさんに続いて走って戻る。


『ガオォォォォォ!!』


 獲物に逃げられたベンガウルは怒ったような雄叫びを上げて二人を追いかけ始めた。


『ギャウッ!』


 ベンガウルが追いかけながらひと鳴きすると、ベンガウルの体の風のような模様が緑色に光り、そこから風の刃が放たれる。


『ちっ!』


『うゎっ!』


 カレールさんは模様が光った瞬間に嫌な予感でもしたのか咄嗟にシロ様の襟首を掴むと、横に跳ねて風の刃を避ける。


「カレンさん! 何とかしないと!」


「そうですね。私に任せてください! アルカちゃん、行くよ!」


「受諾。急いでいくべき」


 チミさんの悲痛な声を聞いて、カレールさんなら何とかなるかもと思ってたけど風の刃の魔法を使うなら少しまずいかもと思った私はアルカちゃんを連れて空中庭園へ向かう。


「アルカちゃん!」


「理解。皆まで言わない」


 走りながら、アルカちゃんの名前を呼ぶと、さすが私の相棒。すぐに、私のことを理解してくれて、その姿を巨大なアンチマテリアルライフルの姿へと変えていく。


 空中庭園についた。私はすぐに、アルカちゃんを構える。


 引き金に指をかけると、付与された『標的補足(ロックオン)』の魔法が発動して、十字カーソルが現れる。


(標準完了。標的を確認した、いつでも打てる)


「おーけい! それじゃあ、いつもの練習の成果をだすよ!」


 スコープの先では、未だシロ様とカレールさんを追いかけてるベンガウルの姿をしっかりと捉えてる。


 かなりの速さで走ってはいるけれど、長年に培われた私のスナイプ技術をもってすればこんなのは、


「朝飯前だよっ!」


 パシュンッ! カラン……。


 引き金を引いた瞬間、銃口から紫電を帯びた弾丸が飛び出していき、何十キロも離れたベンガウルの頭に命中、あまりの威力に完全に頭部吹き飛ばした。


 そして、空薬莢が落ちる音が耳に心地よい。


(命中。標的の絶命を確認した、今日も完璧)


「にひひ、当たり前だよ! ただ、動くだけの獲物なんてこの華憐さんにかかればおちゃのこさいさいよ!」


(疑問。あの二人は?)


「二人なら、もう少し先に……あれ?」


 スコープごしに、二人を探して見るけれど、どこにも姿が見当たらないことに今更気がついた。


 ベンガウルを打ち倒すのに集中してて、二人を見失った!!


「カレンさん!」


 すると、厨房に置いてきたチミさんがVRゴーグルを片手に空中庭園にやってくる。


「チミさん、二人がどこに行ったか見てましたか?」


「えぇ、二人は川に落ちていったわ! 結構流れの早い川だったからすぐに助けに行かないと!」


「え? わ、分かりました!」


 私とアルカちゃんとチミさんは急いで二人を探しに川に向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
https://ncode.syosetu.com/n3707gq/『父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な義妹でした』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ