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121話 おかえりセッテたち!

 


 シュンッて風を切る音が気持ちいい。リロードして空薬莢がカランッて鳴る音が耳に心地よい。


(命中。着弾を確認した)


 私は今、朝の日課の天空庭園からの射撃訓練をしてる。


 約10キロ離れたところにあった小石をアルカちゃんで撃ち抜いたところです。


 視線を下に向けてみると、家の前の広場では蓮くんがエリュちゃんを振ってミーナと打ち合ってる。


「蓮くんとエリュちゃん仲直り出来てよかったね」


(同意。お父さんとお姉ちゃんが喧嘩するのは私も見たくない)


 昨日、クルアのおじいちゃんのアブソリュートさんがやって来て、突然蓮くんに攻撃。そのときに蓮くんがエリュちゃん以外の武器を使ったことでエリュちゃんが怒った。


 けれど、もうその日の夜には仲直りしていて、前と比べてもっと仲良くなってた気がする。エリュちゃん昨日はずっと蓮くんにベッタリだったし。そのせいでハルちゃんやお初ちゃん、ポムちゃんが拗ねてたけど。


 その突然やってきたアブソリュートさんのここに来た目的はクルアを迎えに来たことみたい。けれど、クルアは帰ることを拒否。


 アブソリュートさんはなんとか説得しようとしてたけどクルアは聞く耳を持たず、結局「ならわしもここに住むのじゃ」と、言ってここに滞在することを決めて今もクルアを説得中。


 まぁ、クルアもダンジョンで遭難して2ヶ月、ここで暮らすようになって3ヶ月くらい、合計5ヶ月も家に帰ってないことになるからアブソリュートさんが心配になるのもわかる。


 けど、私自身も、もうクルアがいない生活はちょっと考えられないし、クルアがここにいるって望んでる限りクルアのことを最大限尊重するつもり。


 もし、それでアブソリュートさんが無理やり連れ帰るとかの暴挙にでたら……全員でかかれば不意とはいえ蓮くんを圧倒したアブソリュートさんに勝てるかな?


 やっぱり、今のうちにここからスナイプしとこうかな?


 ちょっと本気で考えてみる………うん、早まるのはやめておこう。


 夏の暑い気温もいつの間にか涼しくなってて私も外に出れるようになった。ぐるーーっと囲むように並ぶ山にもだんだん紅色が増えてきた気がする。


(質問。カレン、次は何狙う?)


 そうだった! 今は射撃訓練中だった!


「んー、なにか動くものがいいな」


(『探知』。発見。三時の方向、距離5キロ)


 アルカちゃんは自分で索敵をすることが出来るから私が打ちたいものを言うと探してくれて、すごく助かってる。


 アルカちゃんに言われた方を見てみると……犬耳に犬しっぽを付けた少女とオオカミ耳にオオカミしっぽの男性が先頭の集団の姿。


(照準完了。いつでも打てるよ)


「おーけい! 一発で決めてやるぜ!! って! あれセッテとガルさんだよ!!」


(疑問。打たないの??)


「打たないよ!! 知り合いだから!」


 危ない危ない……もう少しで脳天をぶち抜くところだったよ。まったく、動くものっていっても気分で人を殺すような悪人じゃないよ、私。


 セッテたち、本当にこんな早く戻ってきたんだ、ちゃんと帰ってきたのかな? 昨日アブソリュートさん来たばっかなのに、来客多いなー。


 私も『神気解放:飛耳長目』で獣人族の集団を見てみる。


 セッテはしっぽをフリフリ今にも一人飛び出して来そうだけどガルさんともう一人の男性獣人族が襟首をもって止めてる。その後ろには馬車が引かれていて何人かの男女が乗ってるみたいだ。


「あれ? 一人だけ黒い人が……ザリュさん??」


 よくよく見てみるとザリュさんも一緒にいた。ザリュさんもお鶴さんと同じく誰かをスカウトしに行ったんだけどガルさんの所に行ってたのかな?


 距離はだいたい5キロだから、今日中に到着するかな? 蓮くんたちに報告しておこう。


「アルカちゃん、下に戻って蓮くんのところに行こ」


 私専用アンチマテリアルライフル:アルカディアはキラキラと光って人型になる。


「承諾。わかった、報告しにいこう」


 私たちは下に降りてセッテたちが来ることを蓮くんたちに伝えて、お迎えの準備をすることにした。





 ………………………………………………………………





「レン様ーー!! カレン様ーー!! みなさん!! 戻ってきましたよーー!!!」


「おーう、おかえりー」


「セッテ、おかえり!!」


 太陽がてっぺんになったお昼頃、セッテたち獣人族の集団が到着した。


 先頭にいたセッテが私たちが見えた途端にダッシュで走ってきて飼い主と再会したワンコみたいにはしゃいでいる。いや、セッテは犬の獣人族だから間違ってない?


「なんか、私の知らない間に人が沢山増えてます! あと、あれは……お城? ですか?!」


 セッテがはしゃいでたからなんだなんだと見に来た、エルフや燃え鷹、幻影クジャク、鋼コンドルたちが野次馬とかしてる。


「セッテ!」


「おかえりなさい」


「待ってたよー!」


「あ! みんな!! ただいまー!!!」


 トーアとアラティとミライアがやってきた。この四人は同時期にここに来たからかよく一緒にいて仲がいい。三人がセッテがいない間に人が沢山増えたとか、お城を作ってることとかとか話してる。


 もちろん、セッテ以外の他四人の獣人族の子も一緒に戻ってきてくれたよ。


「レン様、ただいま戻りました」


「おかえりザリュさん、無事に戻ってこれたみたいでよかったです、お鶴さんは結構前に帰って来てたからちょっと心配してたんですよ」


「あははは、さすがに空を飛べるお鶴には速さでは勝てないですよ」


 蓮くんとザリュさんが話してる。そっか、ザリュさんは歩いて出かけたんだもんね、それはお鶴さんより遅くなるか。


「あの、あなたがカレン様でしょうか?」


「はい、私が塔野華憐です」


 知らない獣人族の男性が話しかけてきた。犬耳犬しっぽの人……ガルさんとセッテのことを抑えてた人かな? その隣には同じく犬耳犬しっぽの女性もいる。


「あなたが……すみません、挨拶が送れました。私はセッテの父のクッテです。彼女は私の妻のセルカです。セッテのことを助けていただいて本当にありがとうございます!」


「私からもお礼を、本当に感謝しております」


 二人はセッテの親御さんみたい、確かにどことなく面影があるな。


「いえ、気にしないでください!」


 それから馬車の中から8人の夫婦が出てくる。その人たちはセッテ以外の4人の獣人族の親御さんでそれぞれ丁寧にお礼を言われる。


 なんだか歳上の人にこんなにお礼を言われるのは初めてだから恐縮しちゃうな。


「あ! そうだ! ルンちゃんどこ?? スライム持ってきたよ!!」


 セッテが、はっ! っと思い出したふうにルンちゃんを探し始める。そういえばルンちゃん、セッテに次来る時はスライム持ってきてって頼んでた気がする。


「ほんとスラか? やったスラー!!」


「ホントだよ! ガルさん、スライム出して!!」


 蓮くんと話してたガルさんがやれやれといったふうに馬車からラーメンの出前の箱を取り出して、セッテに渡す。


 ザリュさんが来た時もダシンさんが来た時もあれにスライム入れてたけど、やっぱりあれってスライム入れだったりするのかな?


「はい! 約束のスライムだよ! 馬車の中にまだまだあるから全部ルンちゃんにあげる!」


「おおーー!! 『吸収』!!」


 ルンちゃんがスライムに手をかざして吸収、合体する。初めて見るセッテの親御さんたちはビックリしてる。


 うちのスライムは人の形をして喋るんですよ! というか、こんなので驚いてたらピィナ見た時魂が抜けちゃうよ。ゆ~たいりだつ~になっちゃう。


「レン様、移民と貿易の件の話ですが」


「はい、それなら家に入って応接室行きましょう」


 挨拶もそこそこに私たちは応接室に向かう。セッテたちはアラティたちと建設中のお城の方に行くみたい。クッテさんたちは私たちと一緒。




 ………………………………………………………………




 応接室は既にセッティングされていた。うちの自慢のメイドさんのオリアさんがきっちりとやってくれていたみたい。さすがです。


「人が結構増えましたね」


「まぁ、ガルさんたちが帰ったあと、エルフの国に行ったり、大群の鳥が飛んできたりと色々あったもので……あ、あの幻獣種の空の王者もいますよ」


「え?! さ、さいですか」


 ガルさんが顔を引きつってる。さすがに、激闘を繰り広げたレオさんがいるとは思わなかったんだろう、ちょっと引いてるかも。


「それで、移住と貿易はどうでした?」


「はい、貿易は否定の言葉なんて出ることなく満場一致で賛成になりました、なのでこれからどうぞよろしくお願いします」


「それはよかった! こちらこそよろしくお願いします!」


「はい、それで移住の方ですが、とりあえず今回連れてきたメンバーのクッテたちは移住を希望しています」


「クッテさん? って確かセッテのお父さんの?」


「レン様、初めまして。セッテの父のクッテと申します。娘がお世話になりまして本当に感謝しております」


「いえ、こちらこそ! エリュのことを作ってくれてありがとうございます」


「エリュ?」


 クッテさんはエリュちゃんの名前を聞いて首を傾げる。そっか、名前付けたのは私だからクッテさん分からないし、擬人化してるから余計わからないのか。


 すると、蓮くんの隣に座っていたエリュちゃんがクッテさんの前に近寄る。


「………お父さん、久しぶり」


「お、お父さん……? 何を言ってるんだい?」


 あ、クッテさんちょっとビクッてしてる。セルカさんがちょっと怖い顔になったからかな?


「あぁ、そっか。常に擬人化してるからついつい忘れちゃうんだよね、エリュ」


「………うん」


 蓮くんとエリュちゃんが手を繋ぐとエリュちゃんがキラキラと光ってロングソードになる。


「前に頂いたこのロングソードのことです。名前をこの国と同じエリュシオンって名前にしたんです、そしたら擬人化しまして」


「な、なんと……これが私が打った剣ですか?! 」


「そうです。今では頼れる相棒なのでクッテさんには本当に感謝してます」


 蓮くんがエリュちゃんを剣から人型に戻して、頭を撫でながら言う。いいなー、私も蓮くんになでなでしてもらいたい……


「おぉ……エリュシオン………いい名前じゃないか、確かに自分で打った剣は自分の子供みたいな存在ですね」


「………ん、お父さん、エリュを作ってくれてありがとう」


 エリュちゃんがお礼を言うとクッテさんは嬉しそうに笑いかける。


「それで、移住してくれるのは嬉しいんですが、クッテさんは獣人族の里で一番の鍛冶師なんですよね? 向こうの方は大丈夫なんですか?」


「はい、里の方は弟子たちに任せてきたので大丈夫です。それに、セッテは引越しすることを譲りませんでしたし、私達も娘の恩人に恩返しがしたかったのです」


 するとクッテさんの奥さんのセルカさんがクッテさんの隣に並んで、


「はい、もしご迷惑でなければここに住まわせてくださいませんか? もちろん、しっかりと働く所存です」


 クッテさんとセルカさんが頭を下げる。他の人たちも同じ気持ちなのかお辞儀をする。


「はい! 僕達は今お城作ったり住居作ったり畑を拡張したり人手不足なので移住してくれるのは本当に助かります! こちらこそよろしくお願いしますね!」


「ありがとうございます!」


「レン様、一応まだ移住を希望する若い衆がいたんですが今回はクッテたちが先方で引っ越します。多分、これからも移住を希望するものが来るかもしれません」


「ノープロブレム! 本当に人手不足なので何人いても構いませんよ!」


「そうですか、私もここに滞在する間はお城作りとかお手伝いさせていただきますね!」


「ありがとうございます! それなら、今日の晩ご飯は豪華にするとしますかー!」


「レン様の作るご飯はどれも絶品なので今からとても楽しみです」


 ガルさんがジュるっと唾を飲み込む仕草をする。おおう……ガルさんは狼の獣人族だからすごく様になってる仕草だよ……


 それからクッテさんたちと改めて挨拶して、握手して、オリアさんに家の案内や家具の使い方などを教えることを頼んだ。


 クッテさんたちは住居ができるまではホテル部屋で過ごしてもらうんだけど、人数が増えたせいで部屋がないからルンちゃんの采配で全部屋二人一部屋になり、クッテさんたちは夫婦で一部屋つかうことになった。


 ちなみに、セッテは一体何匹のスライムを連れてきたのか、呼んでやってきたルンちゃんは蓮くんよりも背が高くなっていて、15人に分裂してやっといつもの大きさのルンちゃんになってた。


 それから家ではルンちゃんからルンちゃん15号が掃除する姿がよく見られるようになった。服着てくれないと見分けることが出来ないよ。


 こうして、セッテたちの親御さんたち10人が新しくエリュシオンに住むことになった。




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