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119話 来訪者、再び

 


 僕は、燃え鷹、幻影クジャク、鋼コンドルたちにここに国を作ること、そのために力を貸して欲しいことを伝え、了承を貰った後、今日の仕事をこなすために外に向かった。


 お鶴さんたちはしばらく頭を下げてたけど、何を言っても上げてくれそうになかったから、とりあえず退散した。


「蓮くん! どれくらい広げるの?」


「そうだなー、できれば今の倍くらいかな?」


「そんなに?! かなり広げるねー」


「先を見越してね、アーゼさんにも確認してもらってるから大丈夫!」


 今日はエルフ、燃え鷹、幻影クジャク、鋼コンドルたちがやってきたため人数が倍近くなったから畑も倍にするために耕すことにした。


 今の畑を倍くらいにして、冬でも育つ野菜、ネギ、ほうれんそう、小松菜、大根、チンゲン菜、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、白菜などなどを育てる予定だ。


 今の畑の大きさでも全員がお腹いっぱい食べられるけど、なにか不足の事態があった時の予備とたぶんこれからもっとたくさん人数が増えるだろうからそのためだ。


「そんなに耕すなら魔法で耕したらすぐじゃない?」


「チッチッチッ、甘いな華憐よ、お勉強が足りてませんねー、なぁクルア?」


「魔法で畑を耕すと、栄養素が減ってあんまり大きくないし美味しくない野菜ができるのよ。というか、レンも最初、魔法で耕そうとしてたじゃない」


 む、余計なことを……一言多いよー。


「なんだ、蓮くんも知らなかったじゃん」


「もう知ってますー! 賢くなったんですー!」


「うわー、レン様。その言い方はちょっとウザイです」


 ぐふっ! ミーナにウザイって言われると一番心にくるな……


 そんなこんな言いつつ拡張予定の畑に到着! 既にポテトやこっちに来てからずっと畑仕事をしてくれてるエルフの人達が鍬を振ってた。


 さて、久しぶりの農作業だ!! 気合い入れてくぞー!!


 と、ポテトに鍬を貰って、いざ! 出陣!! ってしようとしたところ、待ったをかけてくる人物がいた。


「………レン、それはダメ、浮気」


 エリュだ。僕が振り上げた鍬を後ろから抑えてくる。


 神気解放を使ってるのか全くもって動かない。


「んー、じゃあ、エリュが鍬になってよ」


「………ん、貸して」


 エリュに鍬を貸すと、いつもの如く食べ始める。


 美少女が鍬を食べる、実に恐ろしい絵面だよ……


 そうして、食べ終わりウェポンコピーが終わったのか僕の手を握ってくる。


 すると、キラキラと光って人型のエリュが鍬になった。


 泉に落としたわけじゃないのに金色の鍬だ、なんだか使うのを躊躇っちゃうよ。


 まぁ、使わないと仕事が進まないので、


「それじゃあ、振るからねー」


(………ん、いつでもいい)


 エリュ鍬を振り上げた、振り下ろす。


(………ぶへっ! ペッ……口に土が入った)


 なぁ、エリュさんやあなたのお口はどこですか?


 またキラキラと光って、擬人化するエリュ。その姿は顔中土まみれだった。


「………むぅ、汚い……レンは畑仕事禁止」


 え? さすがにそれは看過できないんですけど……


「エリュそれはやだよ、僕結構農業好きだもん、それにみんな働いてるのに僕だけ働かないって言うのはね」


 てことで、ポテトからもう一本別の鍬を貰う。けど、


「………ダメ! それは私のプライドが許さない」


「えー、それならエリュが鍬をやる?」


「………いや、汚れる」


「それじゃあ、我慢してくれ」


「………ダメ!!」


 またしてもエリュが鍬を後ろから抑えてくる。


「うぉぉおおおおおおおおお!!」


「………ぅぅぅぅぅぅうううううう!!!」


 僕は力ずくで鍬を振ろうとするも、エリュも負けじと抑えてくる。


「はぁああああああああああ!!!」


「………やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! きゃぁっ

 !!」


 ザクッと振り下ろされた鍬。


 エリュと僕の力比べは僕に軍配が上がった。


「………うぅ……レンのばかぁぁぁぁ!! ルカ! レンが! レンがぁ!!」


 あ、エリュが半べそかきながらルカのところに行った。


 すまんなエリュよ、でも今回はわがままがすぎるぞ、少しは我慢してくれ。


「ふむ、エリュよ、寛容になるのだ! レンは決してエリュを蔑ろにしてる訳じゃない」


「我慢。お姉ちゃん、気持ちはわかるけどわがままはよくない」


「………むぅ、レンなんて知らない」


 ありゃ、拗ねちゃったか……全く子供だなー、今日のご飯でご機嫌取りするかー。


 そう思いつつも、仕事はせんといけないから鍬を振るって畑を耕していく。


 エリュはますます不機嫌になっていく。


 武器のプライドとはなんなんだろう……ウェポンズプライド?


「蓮くんも大変だね、エリュも女の子なんだからそういうことちゃんと考えてあげなよ」


「考えてるよー、アルカはそういうことないの?」


「アルカはふくれっ面になることはあるけど、許してくれるよ」


 ありゃ? エリュ、自分で私がお姉ちゃんって言ってたけどアルカの方がお姉ちゃんじゃない? お姉ちゃんとはいったい……


 そんなこと思いながら、途中からきた燃え鷹、幻影クジャク、鋼コンドルの農業に興味があるらしい人達にも手伝って貰い、どんどん畑を拡張していった。


 華憐たちは作った畑から種を植えていって貰った。





 ………………………………………………………………






「ふぅ、結構広げた?」


「そうだね、頑張った!」


 スマホを見ると時刻は午後三時、途中お昼ご飯を食べた時以外はぶっ通しで動いた。


「達成感があります!」


「さすがに疲れたわね」


「………ふん」


「疲労。お風呂に入りたい……」


「ん? なにか……来る?」


 みんなもかなり疲れたみたいだ、ぐったりしてる。


 エリュはまだご機嫌ななめみたいだけど。


 ルカはなんか上空を見上げてる。


「ルカ、なにか……」


 いるの? って聞こうとして僕も空を見ようとした時だった。


「クゥゥゥゥゥゥゥルゥゥゥゥゥゥアァァァァァァァァァ!!!」


 何かが超高速に上空から落下してきて、大きな音を立て激突、砂埃が舞う。


「あれ? なんか前にもこんなことあったような……」


「あ、確かに!」


「今、クルアさんの名前が聞こえませんでしたか?」


「何だこの魔力、カレンに匹敵するぞ!」


「………前にも……私の名前……カレンに匹敵する魔力……まさかっ?!」


 砂埃が晴れていき見えたのは、アッシュブロンドの髪の青年がいた。


 アッシュブロンドってことは……クルアの家族か?


 そう推理していると、


「クルアを誑かしたのはお前かァァァ!!」


「うおっ!! 痛ってぇぇ?!」


 青年は20メートルくらい離れていた距離をまるで瞬間移動をしたみたいに詰めてきて僕の目の前に現れ、腹を蹴り飛ばしてきた。


 蹴りはかなりの威力で、僕は吹き飛ぶ。


 空中で体制を整えて着地、突然のいいご挨拶をしてきたやつにやり返してやろうと視線を向けると、


「え? どこいった?!」


「ここだ!」


「は? グオッ?!」


 奴は、いつこっちに来たのかいつの間にか僕の背後にいて後ろから頭を踏まれた。


 完全に地面とチューをしてしまった……。


「蓮くん?! アルカ!」


「了解。お父さんを助ける」


 華憐が僕を足蹴にしてるやつに向かって銃口を向ける。


「レン様!!」


「レン!!」


 ミーナとルカも戦闘態勢にはいる。


「おじいちゃん! レンを離しなさい!」


「「「「え? おじいちゃん?!」」」」


 僕と華憐とミーナとルカの声が重なる。


 というか、そんなことよりさ……


「いつまでも僕の頭を踏んでるんじゃねーぞ! 『紅蓮花』!!」


 僕は、地面から煉獄の花の炎を咲かせる。


「ほう……無詠唱か」


 が、青年はまたしても瞬間移動したかのように数メートル離れたところに一瞬で移動して避けた。


「エリュ! 来てくれ!」


 僕はエリュを呼ぶも、


「………ふんっ!」


 な……くそう、相当にご機嫌ななめだよぅ……


 エリュはそっぽを向いて無視してきた。


「次は切り刻んでやるかの、『ブラッディソード』」


 青年は親指を噛んだかと思ったら、そこから血液で剣を作った。


 エリュゥゥゥ……僕も剣使いたいんだけど……


 エリュに懇願の目を向けるも、やっぱり無視される。


「さて、覚悟しろ! クルアを誑かす不届き者め!!」


「いい加減にして! 『雷撃』!!」


 青年は剣を構えて僕に向かってこようとしたときてクルアの魔法が襲うも、


「待っておれ、クルアよ! いま、おじいちゃんがこの不届き者に成敗をくれてやる!」


 魔法を受けたものの、傷一つ付かずに再び僕に襲いかかってくる。


 くそ! かくなる上は……


「『神気解放:才気活発』!! 舐めるなぁ!!」


 神気解放をして、いつも腰に隠し持ってる暗器、ダークレッド色のダガーナイフを装備して、剣を受け止めようとする……が、


「なっ……」


 青年の剣は完全に読んで、しっかりとダガーナイフで受け止められたはずなのに、青年は僕の目の前から消えて別方向から剣を振りかざしてきた。


 僕は咄嗟に身をひねりギリギリで刃を躱す。


 そのまま距離をとるためにバックステップで後ろに下がるも、背中に嫌な予感がする。


 その、予感は的中して、さっきまで僕の前にいた青年が瞬間移動……いや、あれは転移だな、僕の背後に転移してきた。


 後ろから振り下ろされた剣をギリギリでダガーナイフで受ける。


 そして、そこからは一方的な攻防だった。


 僕が相手の剣を受けたり躱したりするたびに背後や横に転移してきて刃が振り下ろされる。


 僕はそれをギリギリに本当にギリギリに感で捌いてる感じだ。


「ほら、どうした? 防戦一方じゃぞ?」


 くっそ……この転移は一体どういうカラクリだ?!


 頭をフル回転させて、考える……すると、相手が転移する時だけ僕から目線を逸らしているのに気づいた。


 なるほど、視線の先に転移できるのか……それなら、視線を読めばいい!!


「『破砕衝撃波(ブレイクバースト)』!! 吹き飛べ!!!」


「ぬおっ!!」


 僕は、相手の視線を読んで次に転移するところを予想し、そこに左腕の力で吹き飛ばす。


「はぁ……はぁ……なんなんだよ、突然きやがって……」


 相手は、吹き飛んだ場所で再び立ち上がる。タフだな。


「ふむ、結構やりおるな。ならこれならどうじゃ?」


 相手はまた僕に剣を構える。


 その時だった、


「おーーじーーいーーさーーまーー!! おーーねーーえーーさーーまーー!!」


 またしても空から再び何かが超高速で落下してきて、大きな砂埃が立つ。


 この声は聞いたことあるぞ! ルーシィだ!!


「ルーシィよ、やっと来たか! あいつがクルアを誑かしたやつでいいんじゃな? いま叩きのめしてやるわ!」


「おじいちゃんいい加減にして! ルーシィ、おじいちゃん止めるわよ!」


 僕の方を睨んできてた青年の前にクルアが立つ。


「はい! お爺様、少し落ち着いてください! レン様は悪い人じゃないです!」


 ルーシィもクルアの隣に並んで青年を止めようとする。


 てか、さっきからクルアとルーシィはおじいちゃんとかお爺様とか言ってるけど見た目高校生だよね?! あ、吸血鬼だから歳とっても見た目が変わらないのか。


「ふむ、そこまで言うなら分かったわい! おい小僧、クルアとルーシィに感謝するんだな! クルア〜! 会いたかったぞ〜! どこにおったのかとずっと心配だったんじゃ〜!!」


「ちょっと!! おじいちゃんはまずレンに謝りなさい!」


「嫌じゃ!」


 いや、なんなんあいつ?! 突然人の顔面踏んずけておいて謝罪なしかよ!!


「蓮くん大丈夫?!」


「レン様! お怪我はありませんか?!」


「待って、今治すから! 『癒しの祝福(ブファルブレッシング)』!!」


 華憐とミーナとルカが近寄ってきてくれて、治癒をしてくれる。


「ありがとう、はぁ……びっくりした」


 あいつが着地したところの畑、ぐちゃぐちゃになっちゃったし、とりあえず一発殴らせてもらいたいな。


 僕は恨みの籠った眼差しでクルアとルーシィの頭を撫でている、見た目高校生くらいの若さだがクルアとルーシィのおじいちゃんらしい奴を睨みつける。


 ていうか、クルアの血縁はみんな空から超高速で落下してこないと気が済まないのか?! もっと優しく着地してよ!!


 さて、一体全体なんなのか、何が目的でここに来たのかを教えてもらいましょうかね。


 ろくなことじゃなかったら許さん! 何がなんでも一発踏んずけさせてもらおう!


 僕はそう心に決めた。


 そして、無視されたからダガーナイフを使った結果、ますますエリュは機嫌が悪くなった。

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