105話 左腕の力
「やっぱりここはもうオリハルコンしかないかな??」
「そうだよぉー! それがいいよぉー!」
そうだよねー、多分ここにある中で一番いい鉱石がオリハルコンだし。
「じゃあ、そうするかー」
オリハルコンで義手を作ろうと決めた時、待ったがかかった。
「レン兄ちゃんストーーーップ!!」
やってきたのはコロッケだ。
なんか、灰だらけ煤だらけなんだけど、一体なにしてたの?
「見てくれよ! これ!!」
コロッケがそう言って渡してきたのは赤と黒が混ざった鱗のようなもの。
ん? この色合いは……
「あの、森が燃えたところあるだろ? あそこで遊んでたら見つけたんだ!」
それでこんなに汚いのか、すぐにお風呂はいってきなさい! って言いたいけど、これたぶん空の王者(笑)の鱗だよな?
コロッケに渡されて鱗であろうものを持ってみる。
「え?! 軽!! しかも硬いしほんのり暖かい、やっぱり空の王者(笑)の鱗だよ!」
これって、素材としてはどうなんだろう? クルアに聞いてみるか。
華憐でもいいんだけど、こっちの世界の常識がない僕らだと何がどう凄いのかとか分からないからクルアの方がいい。
ルンが2号か3号を使ってクルアを呼んできてくれた。
便利だな、ルンの能力。
クルアはすぐ来てくれた。
教えて! クルア先生!!
「聞きたいことってなにかしら?」
「これ、たぶん空の王者(笑)の鱗なんだけど、これって義手の素材としてどう?」
「え?! 幻獣種の鱗?! ちょっと見せて!!!」
クルアは鱗のことを言った途端、目が見開かれて鱗に穴が空くくらい見始めた。
なになに?! なんか面白いことでもあるの?!
「ほんとだ……凄いわね」
「解説プリーズ!」
「まずは、義手の素材としては使うなら最高品質間違いなしよ……」
クルアが幻獣種の鱗がどれくらい凄いか教えてくれる。
幻獣種、空の王者の鱗はさっき僕が思った通り、軽くて硬くて丈夫であり、魔力伝達率は高め。
さらに、その幻獣種の特性を持ってることが多い、さっきのほんのり暖かいやつとかね。
素材としては完璧だが、希少価値が高く滅多に市場には流れない。
国のオークションとかにだすと破格の値段が着くという。
そのため、加工方法は鱗を砕いてドラゴンパウダーにして剣とか作る時に混ぜて使うらしい。
「オリハルコンと幻獣種の鱗なら断然幻獣種の鱗がいいわよ、それよりレン、私にもドラゴンパウダー分けてくれないかしら? それ魔力の研究とかに使えるのよ」
あー、そっか、クルア最近目立たないけど魔法科学者なんだったっけ? マジシャンの方がいたについてきてるよ。
「いいけど、その前に絶対これあそこら辺にまだ落ちてるよね?」
「はっ……!! よし! すぐに取りに行きましょう!!」
「よしコロッケ! その鱗の捜索隊を作るぞ!! コロッケを隊長に任命する!」
「おーー!! はっ!! すぐに行動を開始するぜ! レン司令官!!」
「面白そぉー!!」
「私も手伝います!」
コロッケとクルアがダッシュで倉庫を出ていってハルとお初もそれに続く。
「コロッケ!! その汚い格好で家に入ってくるなスラ!!」
ルンもコロッケを追って走ってった。
その様子を眺めてるとチョンチョンと裾を引かれる。
「ん? どうしたエリュ?」
「………あとで私にも鱗分けて」
「いいけど、何に使うの?」
「………食べる」
はい? 食べるん? あんな硬いのを? 顎壊れるぞ……なにかの比喩かな? まぁいっか。
エリュは何考えてるのかなーって思いながら僕達も鱗を探しに外に出る。
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3時間くらい鱗探しをして鱗はかなり見つかった。
最初はコロッケたちと僕とクルアだけだったけどだんだん人が増えてって、最後には華憐の『探知』の能力が大助かり、たぶん全て取り終えたと思う。
見つけた鱗は大きな綺麗なやつが十枚くらい、小さな欠けてるやつは数え切れないくらい沢山。
それに見つけたのは鱗だけじゃなかった。
牙とか尻尾まである。
そういえば飛び去るとき尻尾なかったな。
クルアはもう小躍りするくらい大喜びで、いきなりみんなの前でマジックをしたりしてた。
相当嬉しかったんだろうなぁー。
鱗は僕が義手に大きいのを一枚使うことにして、残りの大きいのは保管、小さいのは全て砕いてドラゴンパウダーにするらしい。
これもクルアが嬉嬉としてやってた。
そしてドラゴンパウダーいっぱいの瓶が五十本くらいできた。
一瓶クルアが持って行って、一瓶エリュが持って行った、残りは保管。
これだけで一生遊べるくらいのお金を獲られるらしいけど正直価値観がわからん。
牙は僕が今考えてる武器に使おうと思う。
尻尾はかなり大きかったし何に使うんだろうって思ったんだけどオリアが引きずってったから食卓行きかな? 今夜はドラゴンステーキだ! 素敵!!
僕は義手の設計図を書く。
魔法があるんだから、ゴツゴツするのはやめにした。
フラ〇キーみたいにしなくても魔法陣を描けば魔力や神気を流すだけでミサイルとかも出せるしね。
右手とのバランスを考えて、太すぎず細すぎずの大きさ。
あとはそこに機能を付けてく魔法陣や魔力回路をこと細かく描いていく。
魔法陣の描き方は前にクルアに教えてもらった、同時に魔法の作り方も、それで『連鎖爆破』とか『花火』とかの魔法を作った。
魔法の作り方はパソコンでプログラムを組むみたいに作る。
まず属性を選んでそこから起こす現象、指向性とかを決めていく、魔法陣はそれを文字や印で描いたものだ、だから複雑な魔法ほど魔法陣は大きくなる。
魔法を作るのは意外と楽しい、僕はオリジナル魔法を作るのが好きだけど、華憐はアニメキャラの魔法技を再現するのが好きみたい。
「よーし! こんなもんかな?」
設計図ができた! 一枚目のより全然いいね!
「さて、さっそく作るかー」
僕は必要な材料を床に置いていく。
もう槌で叩いたりきりでほったりする時代は終わりなのだ! まぁ、たまにはそれでやるのもいいかもだけど。
実はアマちゃんのところにいる時、僕はただ遊んでただけじゃない。
新しい魔法を色々開発してたのだ。
その一つが……
「『想え 強く深くどこまでも新たな姿 創れ 他と他が交わるその形……想創』!」
僕が魔法を発動させると僕の義手を作る鱗やほかの物質が交わって変形していき、僕の想像した通りの形になっていく。
魂の祭壇で作った魔法だからこっちでできるか不安だったから詠唱したんだけどちゃんとできるみたいで良かった。
この魔法は名前の通り、強く想像したものを作る魔法。
これによってさっき紙に描いたことが何一つ違わず創られる。
やがて変形が終わって義手ができた!
義手は空の王者(笑)の鱗が元の素材だから赤黒い色をしてる。
色々いじくって機能もしっかり使えることを確認した。
「よし! さっそくつけるかー!」
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「じゃあレン繋げるよ、神経から交わす、カタストロフが始まったら必ず伝えるのだ!」
「わかったー」
えーーと、つまり痛かったら言えよってことだよね?
僕は義手が出来たからみんなを呼んでルカに付けてもらうことにした。
医療関係はルカにおまかせ!!
ルカは僕の右肩と作った義手をくっつけて左肩にバンドで止める、そのまま魔力を流し込んで神経と義手の魔力回路をくっつけた。
なんだか、なにかが繋がったような感じがする。
「感覚はどんな感じ? レンかっこいい……」
ルカに言われて動かしてみる、グーパーグーパー。
「蓮くん、いくよ!」
「ん?」
「右手あーげて! 左手あーげて! 左手下げなーいで右手さーげて! 右、左、右、右、左、右、左、左!! ひっかからない……」
「僕を舐めるなよ! ていうか、すごい滑らかに動くなこれ」
義手ってもっとこう、ギチギチ動くイメージがあったけど全然そんなことないや。
「な〜ん〜て〜なめらか〜♪ な〜ん〜て〜なめらか〜♪」
僕はクネクネ動いてみる。
すごい! 指の先まで本物の腕みたいだよ!!
「レン様、大丈夫みたいですね! 良かったです!!」
「なんだか、気持ち悪い動きになってたけどね」
気持ち悪いって酷いなー、なめらかダンスなのに。
「ていうか蓮くん、ちょっと神気解放してみて」
「ん? うん、『神気解放』!!」
僕は神気解放して、髪の色が金に目が赤になる。
「レン様! かっこいいです!」
「蓮くん、厨二病感ましたねぇー、ほら見てみな」
華憐に鏡を向けられて自分で見てみる。
うん、神気解放時やばいわ、厨二病全開だよ……でも、ちょっとカッコイイんじゃない? って思う自分もいる……
ルカがなんか闇魔法で右手を黒くし始めてるから、それでかっこいいことは証明されてるね!
「ふっ、我が右手、漆黒に染りて黒炎を振りまくなり……」
「蓮くん、やめときな本当に頭おかしい子だよ、僕いくつ? って言われちゃう」
うん、僕もそう思ったやめとこう。
「それで、どんな機能を付けたのかしら?」
「あ、私も気になります!!」
「それじゃあ、僕の左腕の能力を見せてあげよう!」
僕は義手に付けた魔法を自慢げに教える。
まず、『金剛』という魔法、空の王者(笑)の鱗は僕の全力の蹴りでひび割れるのが分かってたから強度を上げた。
次に『宝物庫』これで、いちいち取り出したいものを思い浮かべるっていうことをしなくて済む。
次に『引き寄せ』の魔法、ルンの能力を見て入れてみた、名前の通り狙ったものを引き寄せる感じ、完全に僕の横着だ! これから動かなくても物をとれる!
次に『スタンガン』の魔法、僕のオリジナルで名前通り相手に触れただけでスタンさせる。
次に『破砕衝撃波』、これも僕のオリジナル、今までパクリだった二〇の極みや六〇銃の代わり。
「そして! これが、この義手最大の特徴!」
僕は魔力を流して前腕の部分をパカりと開けて中に入ってるものを取り出す。
「え、蓮くんまさか、それ……」
「そう、そのまさかだよ華憐、僕の腕はスマホケースになったんだ!」
そう、僕は『科学の結晶』っていう魔法を作って義手に組み込んだ、ついでに充電器やACアダプターも組み込んだからスマホをACアダプターに繋げてる間は僕の腕自体がスマートフォンになる!
『科学の結晶』はスマホの基本機能を使えるようになる僕のオリジナル魔法、液晶の素材がないからスマホ自体は作れなかったのが残念。
スマホを繋げると、液晶をタッチしなくても頭の中でスマホを操作できるようになった! あと、義手にスピーカーとカメラとマイクも付けたから本当に腕がスマートフォンになる。
「すごい!! 蓮くんの腕で充電出来る!!」
「そうだろうそうだろう! しかもこれで無くす心配が無くなる!」
華憐が自分のスマホをつけたり外したりして遊んでる。
てか、華憐の待ち受け僕の寝顔だったんだけど、いつ撮られたんだろう……背景ベットだったし、寝ている間に部屋にはいられてた? ちょっとこわい……
「レン様はスマートフォンになりたかったのですか?」
「レン……あなた、とんでもないものを作ったわね……普通、『宝物庫』の魔法は魔道具に出来ないのよ? それをそんなあっさりと……この世の物理常識が壊れるわ……」
「レンい〜な〜、私もあんなカッコイイ腕が欲しいぞ
〜、私も腕を切り落とすか……」
ミーナよ、僕はスマートフォンにはなりたくないぞ、それにクルアとルカが怖いこと言ってる!! 僕そんなにデタラメなもの作っちゃったの?!
「蓮くんはビックリ人間に磨きがかかってきたね! 今ならきっと中国のビックリ人間紹介テレビ番組にもでれるよ!」
まぁー、たしかになー。
けど、華憐も出れると思うんだけど……
こうして僕の左腕は復活した。




