104話 義手を作ろう!
「はぁっ!!」
コンッ! コンッ! っと木剣どうしがぶつかる音が広がる。
僕は今、エルフのトーアと模擬戦で剣を交えてる。
模擬戦をする時は僕は神気は使わない、身体強化されすぎて全く修行にならないからね。
だからいつも剣の才能と自分の身体能力だけでやっている。
「隙ありっ!!」
「くっ……」
「そこまで!!」
トーアの木剣が僕の頸動脈を抑え、審判のリーアさんが勝負を止める。
「さすがですね、レン様! 神気を使わず、片手のみなのにこんなに苦戦するとわ思いませんでした」
「んーー、勝つつもりだったんだけどなぁ……」
割とガチでやってたから負けたのはかなりショックだ。
「………レン、やっぱり難しい?」
「んー、そうだね、もっと練習すれば強くなれると思うけど、あんまり時間かけたくないしなー」
隻腕になったから僕もシャ〇クスみたいに四皇バリの強さを見せつけてやる! って思ったけど、赤髪さんパないわ、片腕で剣を振るうのキッつい。
僕の場合は<才能>の力があってやっと形になった感じなのに……さすが海の皇帝。
隻腕のアニメキャラクターかっこいい人多いから割といいかも! とか左手無くした直後は思ってたけど、やっぱり無理! 色々不便だったよ。
例えばご飯食べる時、お茶碗持てないのがすごく不便、トイレする時ズボン下ろすのが不便、お風呂とかも身体綺麗に洗えないしね、赤髪さんはそういうのどうしてたんだろう?
両手って大事。
「義手付けるか!」
「………うん、それがいい」
僕は義手を付けることにした。
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さて、義手を付けることにしたわけだけど、考えないといけないことが色々ある、重さとかそれにあった材料とかね!
「ふっふっふ、どうせ作るなら魔改造してやろう!」
この世界は魔法と剣のファンタジーだ、つまり魔力やら神気やらあるんだし、どうせならそういうので機能をいっぱい付けた最高の義手を作りたい。
「んー、手のひらから衝撃波を出せるようにして、肩からミサイル出して、肘から刃物が飛ぶのもいいかも! あとは……」
僕はシャーペン片手にルーズリーフに模型と機能を書いていく、紙抑えられなくて書きづらいのがイライラする。
やっぱりはやく最強の義手を作ろう。
「よっし! できた!!」
僕は書き終わった義手の模型を改めて見てみる。
んー、なんか〇イ〇ンマンとフ〇ンキーとター〇ネーターが混ざったみたいな腕になった。
特に肩の辺りが丸くボンッてなってるからフ〇ンキーが強めな気がするけど。
「うん、やめよう、これは良くない! というか、こういう機能つけるにはどうしたらいいんだ? 魔力とか神気を使うから魔道具になるのかな? それならクルアに聞くのが一番か」
僕はクルアのところに行くことにする。
クルアの部屋をノックすると「空いてるわよ」って返ってきたからドアを開ける。
「クルアー、ちょっと聞きたいことがあるんだけどー……何してるの?」
中に入るとクルアは折り紙でニワトリを作ってた。
「みててちょうだい、この何の変哲もないないニワトリの折り紙が……」
クルアがニワトリの折り紙を投げる動作をする。
「……本物のニワトリになりました!!」
「コケーーー!!!」
クルアが折り紙を投げた瞬間本物のニワトリが出てきた。
「え?! 今どうやったの?!」
まってまって、あんなマジック知らないし、魔力使ってる感じもなかったからほんとに種がわからないんだけど……
「うふふ、秘密よ、種を教えたらつまらないじゃない」
ま、まじか……もうクルアにマジックの上手さは負けたかも……クルアはマジックの天才だったのか……
「それで、聞きたいことってなにかしら?」
「え? あ、ええとね、魔道具について作り方を教えて欲しいんだけど……」
クルアのマジックに衝撃を受けてたけど、クルアに声をかけられて我に返って、魔道具の作り方と義手を作りたいことを伝える。
「なるほどね、義手に魔道具の機能を付けたいってことね」
「そういうこと、どうしたらいいか教えて欲しいんだよ」
「いいわよ、魔道具はね大きくわけて二つの作り方があるわ……」
クルアが魔道具について教えてくれる。
クルアによると魔道具には二種類ある。
一つ目は魔石を媒体に魔法を発動させる魔道具。
火の魔石、水の魔石、風の魔石、土の魔石、氷の魔石など、魔石は沢山あって、そこに魔力を流して魔石を起動させ魔法を発動させたり魔道具を動かすことが出来る。
動かすだけじゃなく魔石に魔力を貯めておくことも可能で長期的に魔法を発動させる時はこの魔石の魔道具を使うらしい。
ただ、魔石には寿命があるから適度な交換とかが必要だそう。
魔石で魔道具を作る時は魔力路を作って魔力をながせるようにしないといけないらしい。
二つ目は魔法陣を媒体に魔法を発動させる魔道具。
これは道具に発動させたい魔法を発動させられる魔法陣を書いたり刻んだりしてそこに魔力を流して魔法を発動させたり魔道具を動かしたりする。
こっちは魔石の魔道具と比べて魔法陣が消えたりしない限り常に使える。
ただ魔石の魔道具のように長期的に魔法を発動させるのには向かず一瞬の魔法、例えば風の刃を飛ばすとかに向いているみたい。
これは、普通に魔方陣を道具に書くだけでいい。
「作る難易度としては魔法陣の魔道具のほうが高いわね、魔法陣を書くのは大変だからよ」
「なるほどなー、よくわかったよ、ありがとう!」
「これくらい基本中の基本よ、それでどんな義手にするの?」
「んー、まだ完全には決まってないんだけど、レーザービームとか出してみようかな?」
僕が適当に言ってみると、クルアになんか呆れたような顔をされた。
「もっと、ましな機能付けなさいよ、まぁもしそういうのを付けるなら素材はちゃんとした鉱石にした方がいいわ木とか鉄とかだと上手く魔力が伝わらなくて大爆発とか起こすときがあるから」
え、なにそれこわい!! そんなことになったら次は左足が吹き飛びそう……
「わかった、色々考えてみるよ!」
「ええ、また何かあれば聞いてちょうだい」
僕はお礼を言って鉱石が置いてある倉庫に行くことにした。
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「レーーン!! 何してるのぉー??」
倉庫に向かう途中、ハルたち中学生ズと会った。
中学生ズって言い難いな、JCズにするか。
ハル、お初、ルン、ピィナ、エリュ、ポムが一緒にいたら、これから僕の中でJCズって呼ぶことにしよう!
それで今はハルとお初とエリュが一緒にいる。
「義手作るんだけど素材を何にしようか決めようと思って倉庫に行くとこだよ」
「へぇー! ハルも行くぅー!」
「私も行きます!」
「………エリュも、レンの腕になるんだから私と肌触りがいいのにしないと」
なるほど、たしかに左手作ったらそっちでもエリュを持つことになるからな、エリュに金属アレルギーとかあったら大変だ……あれ? エリュが金属じゃない?
なんだか釈然としないなぁーって思いながらJCズを連れて倉庫に向かう。
我が家の鉱石倉庫には割とたくさんの様々な鉱石が置いてある。
川とかで見つけて拾ってきたものもあるけど、殆どはガルさんたちが持ってきてくれたものと、コロッケたちの元の住処から持ってきたものだ。
「鉱石のことなら私がいろいろ教えてあげるぅー!」
倉庫に入るとさっそくハルがなにかの鉱石を取りにいった。
ハルは鉄鋼熊だから鉱石の種類とかどういう鉱石なのかとかわかるんだろう。
それに、よく一人でいる時は鉱石倉庫にいることが多いみたいだし。
「はい、これがミスリルでこっちがオリハルコン! 義手を作るなら私はオリハルコンがオススメだよぉー! 魔力伝達率が高くて軽くて丈夫だしぃー!」
ハルがゴールドの鉱石とシルバーの鉱石を持ってきた。
魔力伝達率とは名前のまま、魔力伝達率の伝わりやすさだ、これで魔法の発動とかが遅くなったり早くなったり強くなったり弱くなったりする。
僕の義手の場合、魔力伝達率は高い方がいい。
「ハルは本当にオリハルコンが好きですね」
「うん! この金ピカなのがたまらないのぉー! エリュはオリハルコンがベースだよねぇー?」
「………うん、よくわかったね?」
「だって、オリハルコンの気配が感じるもん!!」
ハルがちょっとハァハァしてる……この子もしかして金属フェチのオリハルコン推し……? 不思議な趣味だ……
「あ、ちなみに逆に魔力伝達率がゼロなのがこのルエガーって鉱石だよぉー!」
ハルが黒色の鉱石を見せてくれる。
ほー、魔力伝達率が0%なやつもあるのか、面白いな。
それから、ハルに色々見せてもらってどれにするか悩む。
やっぱり無難にオリハルコンにしようかな? あんまり量はないけど腕一本分くらいなら問題ない量はある。
そうやってうんうん悩んでると、
「こんなところで何やってるスラか?」
ルンがやってきた。
「僕の義手の素材を選んでるんだよ、今のところオリハルコンが一番無難だと思ってるけど」
「ふむ、ならスライムはどうスラか?」
「スライム? スライムで義手を作るってこと?」
そんなことできるの? あのプヨプヨしたやつが? タコみたいにならない??
「そうスラ、スライムは魔力伝達率が100%スラ、さらに魔力流すと固くなるスラ」
え? マジで?! 魔力伝達率100%って凄いな……魔力を流すと固くなるならワンチャンある?
「んー、ものは試しだな、やってみるか」
「わかったスラ! 『分裂』スラ!!」
ルンがスキルを使うとルンの腕からスライムが伸びてきて僕の左腕のあった所にくっついて腕の形になる。
ヒヤッとするのがちょっと気持ちいい。
「これで魔力を流してみるスラ」
僕はルンに言われるまま魔力を流してみると、トロトロだったスライムが腕の形で固まった。
「おおー! 腕だ!!」
僕はできた左腕を動かしてみる、グーパーグーパー。
やばい!! なんか感激!! 腕があるって素晴らしい!! 今ならあのラジオ体操だって感謝してできるよ!!
「魔力を流すと形を変えられるスラよ」
ルンに言われて魔力を流して形を変えてみる。
「おー! ほんとだ!! じゃーーん!! 指10本!!」
「怖いぃー!!」
「キャーーー!!」
「…………レン、気持ち悪い」
んー、指10本はあんまりいい反応貰えなかったな、たしかにちょっとキモイかも……なら、
「ゴ〇ゴ〇のピストル!!」
おおーー!! できた!! 華憐に見せてやりたい!!
ただ、体積は変わらないから先っぽの指のところはすっごい細くなってるけど。
「騒がしいスラ!! もっと丁寧に扱うスラ! この汚物が!!」
腕を伸ばしたり縮めたり大きくしたりしてたらルンに怒られた。
誰が汚物だ!
「ちょっとくらいいじゃんかー、久しぶりの左手なんだから!」
僕は扉の前に立っているルンに向かって言う。
「ん? 言ったのはルンじゃないスラ」
「え? でも、今ルンの声だったよ?」
「だから、そっちのルンが言ったスラ」
ルンが僕のスライム左腕を指さす。
「そうだスラ、間違えるなんて脳無しだスラ」
僕の左腕が喋った?! しかもルンの声で!!
「え、これ喋るの?」
「当たり前だスラ、ルンから出来たんだからさしずめルン義手号スラ」
「ふん、レン、また変なことしたら次はルンが殴るスラ」
ルン義手号がなんか殴るとか言ってるんだけど……まじで?
「ゴ〇ゴ〇のピストル!! ぶへぇっ!!」
「殴るって言ったスラのにやるとかバカスラ?」
本当に殴れるのか試してみたらマジで殴ってきた!
しかも、硬いから痛い!!
「ルン、ルン義手号返すよ」
「そうスラか? わかったスラ」
僕はスライムの義手を返すことにした。
ずっと罵られそうだったし、自分の腕が喋るのはなんかやだもん。
でも、それ以外は意外と良かったから、こんど野生のスライム見つけたらやってみようかな?




