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103話 セッテたちの見送りとお酒の木

 


 種族会議をした次の日、僕たちは今、ガルさんやセッテたちが獣人族の里に帰るため見送りをする。


 種族会議をしたあとガルさんのところに行って話したところ、僕も目を覚ましたし、僕が寝ている間の二週間もここにいたため帰ることにしたみたい、セッテたちのこともあるしね!


 セッテたち獣人族の子はデモゴルゴンと戦った時に捕まってたところを華憐が助けた子達だ。


 そのセッテたちだけど、僕達が国を作るために移住者を募ってることを知った時、僕の部屋に駆け込んできて、いの一番に移住したいことを伝えてきた。


 セッテたちは僕はもうここに一緒に住んでる仲間だと思ってたけど、一応名目上は保護ってことになってるから正確には客人みたいなものだった。


「レン様、私たちはまた必ずここに戻ってくるので部屋とか残しておいてくださいよ!」


「もちろんだよ! というか、もうここはセッテたちの家でもあるんだからいつでも帰ってきてよ!」


「そうだよ! 蓮くんの言う通り!!」


 うん、華憐もそう思ってたみたいでよかった!


「早く帰ってきて、また尻尾とケモ耳、モフらせて!!」


 あーー、そっちかぁー……まぁ、僕もセッテたちのケモ耳モフモフするの好きだったけど、僕がやるとセッテたち顔を赤らめてモジモジ、たまに変な声も出すから悪いことしてる気分になってくるせいであんまりモフモフしてなかったんだよね。


 セッテたち自身はあんまり嫌がってる感じは無かったけど、ミーナたちには冷たい目で見られてたから自重した。


「セッテたちの部屋はルンが掃除しておくスラ、だから今度来る時はスライムを持ってきて欲しいスラ!」


「うん! ルンちゃん、よろしくお願いします! スライム沢山持ってくるね!」


 ルンはちゃっかりスライムをおねだりしてる。


 みんなもそれぞれ挨拶を交わしていく。


「レン様、今回も大量の作物を頂きありがとうございます、幻獣種の襲撃もあったというのに」


 ガルさんが話しかけてきた。


「いえいえ、鉄も沢山貰いましたし、それにエリュのことも、むしろ危険な目に合わせてしまってすみません」


 僕は右手に引っ付いて離れないエリュに視線を向ける、その後ろではハルを筆頭にした中学生ずがエリュを引っ張って争ってる。


 僕の腕が一本になっちゃったから蓮腕争奪戦は苛烈を極めたのだが、神気が使えるエリュが必ず勝つ、神気はちょっとずるだよなぁ……


「………ガル、クッテによろしくね」


「おう! しかしまぁ、あの剣がねぇ、こりゃあクッテも驚くだろうなぁ」


 まぁ、そりゃあ、自分の作った剣が歩いて喋ってたらびっくりするか。


 そして、そろそろ挨拶もすんで一旦お別れになる。


「それじゃあ、レン様! 貿易と移住の件は承りました! また会いましょう!!」


「レン様! カレン様! 皆様! すぐにでも戻ってきますからね!」


 セッテ達がブンブンと手を振ってくる。


「おーーう!! またねーー!!」


「ばいばーーい!!」


 僕達も手を振り返して見送る。


 こうしてセッテたちは一度獣人族の里に帰った。





 ………………………………………………………………






 セッテたちを見送った後、僕はリハビリがてら昨日報告にあった畑や森の被害を見ることにした。


 本当は昨日見たかったんだけど、起きたばっかだったから華憐たちに止められて一日安静にしてた。


「本当にここだけ世紀末みたいだなー」


「まだちょっと熱いね、この辺り」


「…………焦げ臭い」


「ここだけ凄い燃えてましたからね」


 空の王者(笑)が炎を纏う突進をした所は本当に全ての木が燃えまくっていたから、燃え滓とかで灰色の焦土になってる。


 ちょくちょく地面に植わったまま炭化してる木があったり、まだ燃えている所もあるから暑い、空の王者(笑)のあの突進はそれだけ脅威だったんだろうな。


 こんなところ開発できるかなぁー、すごく心配だよ。


「そういえば、なんであの空の王者(笑)は襲ってきたんだろう?」


「それはクルアさんもわからないって言ってました、ただあの幻獣種は普段は空を飛んでいて縄張り意識が強く侵入者には容赦しないドラゴンみたいですよ?」


 生態もまんま空の王者(笑)なんだなぁー、不思議なもんだな。


「それで、レン様が寝てる時、みなさんで話して仮説を立てたんですが、あの幻獣種は基本的に縄張りからは出ないはずなんです、それが出てくる理由は卵を奪われた時と言われてます」


 うんうん、知ってる知ってる、たしかその卵はめっちゃ美味しいんだよね。


「それで私たち、前日にピィナさんの巨大卵を使ってプリンパーティしましたよね? その卵を勘違いして襲ってきたのではないかと」


「はい? ピィナの卵?」


 たしかに大きな卵だったけど勘違いするのか?


「はい、それかレン様、卵奪ってたりしてませんか?」


「いやいやいやいや、そんなの持ってないよ!」


「ですよね、ならやっぱりピィナの卵が原因じゃないでしょうか?」


「ピィナ……恐ろしい子……私はなんてものを作ってしまったんだ……」


 本当だよ華憐……どれだけ色々なことをやらかしてくれたら気が済むんだろか、あのニワトリは。


 え、というか、ピィナの卵が空の王者(笑)を呼ぶならこれからピィナが卵産む度毎回襲われるの?!


 もうピィナに卵産まさせないようにしようかな……


 でも、ミーナたちのその仮説、違う気もするんだよなー。


「ねぇ、華憐、あの空の王者(笑)とは喋れなかったの?」


 華憐は『言語』の能力で魔物でも意思の疎通ができる、だから空の王者(笑)と話さなかったのか聞いてみると


「話しかけたんだけどね、なんかすごく怒ってて話を聞いてくれなかったの」


「怒ってた? やっぱり卵なのかな……でも、あの時ミーナを攫いに来たのはちょっとタイミング良すぎない?」


 あのエルフ二人はちょっとタイミングがよすぎると思う、ずっと見張ってたりしてたのかな?


「たしかに、何かありそうですね」


「空の王者と手を組んでたってこと?」


「そう、違うかな?」


「んー、違う気がするな、本当に怒り心頭って感じだったから」


 んー、そっかー、これはわからんままだなぁー、また襲われるかもしれないと考えると何とかしておきたいところなんだけど。


「まぁ、次にあの男エルフたちに会った時に聞けばいいか」


「そうですね!」


「よし、それじゃあ次は畑を見に行こっかー」


「レン様! お酒の木ですね?!」


 さすが豪酒ミーナ、よくわかっていらっしゃる。


「蓮くん? お酒はダメだよ! 私、まだ柿ピー勝手に使ったこと許してないからね! お酒とタバコは20歳から!!」


 む、覚えられてたか……空の王者(笑)で有耶無耶になったと思ってたのに……くそぅ。


「ほら華憐、郷に入っては郷に従えだよ! この世界では飲酒禁止されてない!」


「たとえそうでもダメ! 私に黙って勝手に柿ピー使った事を反省しなさい!」


 華憐が厳しい……でも、僕は諦めないからな!





 ………………………………………………………………





 華憐とあーだこーだ言い合いながら畑の被害を見ていって最後にお酒専用のぶどう園とお酒の木にやって来た。


「ひっぐ……れぇんくん〜♡」


「はいはい、暴れないでねー」


「………カレン、弱すぎ」


「本当ですね、空気だけで酔ってしまうとは……」


 お酒の木に近づいていくと辺りがすごくお酒の芳醇な香りに包まれていていい香りがした。


 僕やミーナは結構楽しんでたけど、華憐は違った。


 匂いだけで酔っ払った、本当に弱い、弱小過ぎる、大学で飲みサーとかに入ったら絶対にお持ち帰り確定になっちゃうよ、華憐可愛いし。


 最初の方はしっかりと歩いてたけど次第に千鳥足になっていったから華憐は今僕とミーナに支えられて歩いてる。


「しっかし、凄いなお酒の木、ワインが滴ってるよ」


「レン様、ワイン以外にも出てますよ!」


 お酒の木はジメジメしてる木で、葉先からワインとか日本酒など、テキーラとか度数の高いお酒も雫が滴っていて、ぴちゃぴちゃと地面に水溜まり、お酒だから酒溜まりかな? を作ってる。


「……ゴクンッ……ふむふむ、アタックは完璧ですね! 味も香りもフレーバーもいい感じですし、かなりいいお酒だと思います!」


 ミーナが酒溜りから手でお酒をすくって飲んでる。


 いいなぁ……僕も飲みたい……右手で華憐支えてるからすくえないし、そもそも禁止されちゃってるしなぁ……


 かなり羨ましそうな顔してたのか、ミーナに気づかれて笑われた。


 ミーナはフラフラヘラヘラしてる華憐をちらりと見て、


「レン様こっち来てください」


 ミーナに呼ばれたから近くによると、ミーナはお酒を口に含んで顔を近づけてきた。


「ちょっ、ちょちょ、ミーナ? 何してるの??」


 ミーナは口に含んでたお酒をゴクンと飲んで、


「何って、レン様がお酒飲みたそうにしていたので飲ませてあげようと思いまして」


「それで、なんで顔を近づけてくる?」


「口移しであげようと思ったからです! カレン様には内緒ですよ?」


 ミーナはなんでもない事のようにサラッと言ってのけた。


「ミーナ、そういうのは良くないってば」


「でも、カレン様とはキスしたんですよね? それならいいじゃないですか」


 え、なんでミーナが知ってるの?!


「エリュさん、レン様を抑えてくれませんか?」


 エリュは僕とミーナのことを交互に見てる。


 エリュ! 頼むぞ、そんなことしないでくれ!


「あとで、何かひとつ言うことを聞いてあげます!」


「………わかった」


「エリュ!! やめいやめい!!」


 エリュが買収されて僕のことを後ろから抑えてくる。


 右手は華憐に掴まれているから動かせない。


 ミーナは三度お酒をすくって口に含み僕にキスしてきた。


「ちょっ……ミー…………」


 僕の喉にお酒が流れ込んできて、ミーナはちゃっかり舌も絡ませてくる。


「……んっ………プハッ! えへへ、またしちゃいました」


 僕はお酒の美味しさとか唇の柔らかさとかキスの気持ちよさとかで頭がとろけそうだ……それでもなんとか理性をフル動員して自我を保つ。


「もう一回します?」


 ミーナがちょっとイタズラっぽい笑顔を浮かべてくる。


「…………しない」


 ちょっと抗いづらい誘いだったけどしっかりと断る、僕が好きな人はゆいりなんだ。


 ミーナはちょっと残念そうな顔をして、


「もうちょっとな気がしたんですけど……レン様のお気持ちもありますし、今回は諦めます、でも覚えておいてくださいね、私はカレン様にもユイリさんにもクルアさんやルカさんにだって負けませんから! 」


 なんで、ミーナはこんな未練タラタラな男に呆れもせずに好意を寄せてくれるんだろう?


「エリュさん、今のは内緒にしててくださいね? 家に戻りましょ!」


 ミーナはエリュと一緒に家に戻っていく。


 と、思ったらクルッとこっちを向いて、


「レン様、私が誘拐された時、私のために怒ってくれて、守ってくれて、考えてくれてありがとうございます! 大好きです!!」


 大きな声で言ってきた。


 そんなにどストレートに言われると気恥ずかしくなる。


「れぇ〜〜くんっ! いい匂いがしゅる〜!!」


 華憐は気楽そうだなぁ……


 僕は頬ずりしてくる華憐を抑えて家に帰った。


 家に戻ったらダシンさんにお酒の木を教えてあげると、すごく喜んでお酒の木に出かけて行った。

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