1話 ありふれた異世界転生
◇◇レンside◇◇
僕は雨宮蓮。どこにでもいる高校三年生、十八歳。
いつものように学校に行き、退屈な授業をうけて友達とだべって休み時間を過ごし、部活に勤しんで家に帰宅、そのまま晩御飯を食べお風呂に入り一日の疲れを癒したらベットにダイブして眠り、また明日同じような退屈な日常を過ごす。
でも、今日は違った……。
部活も終わって帰宅中、いつも渡る横断歩道を同じ制服の女の子が渡っている。
その先に大型トラックがかなりのスピードで走ってるのが見えた。
やばい! 轢かれる!
そう思った瞬間、僕はもう走り出していた。陸上部で身につけた瞬発力で一気に加速する。
「あぶないっ!」
女の子は僕の声に驚いたように一瞬振り向く。
「え……?」
そんな、女の子の驚きの声はかき消され、「どーーーーん!!」 と、すごい音がしたと思ったら、僕の意識は暗い闇の中へと消えていった。
■■
次に目を覚ました時、そこは真っ白の何も無いところにいた。上も下も右も左も分からない空間、ここはどこだろうか。
「きゃっ!」
隣から可愛らしい悲鳴が聞こえて顔を向けてみると、横断歩道で僕が助けようとした女の子がいる。
「怪我ない??大丈夫??」
「えっと、はい、大丈夫です。あの、ええと、ここは?」
女の子はこの何も無い空間をキョロキョロと見回す。ここがどこなのか分からないのは僕だけじゃなかったみたいだ。
「大丈夫ならよかったよ、ここは僕も分からん。気づいたらここにいた」
「はい、ありがとうございます! 何も無い場所ですね、どこなんでしょう?」
とりあえず、彼女に怪我がなくて一安心、二人でここはどこなのか討論を始めた。
その時、目の前が光ったと思ったら人の影のようなシルエットと、聞く人を落ち着かせるような神秘的な声が聞こえてきた。
「ようこそ、魂の祭壇へ、あなた達は先程トラックに轢かれて死にました」
いきなり現れて死にましたと言われる。冗談だろう。この人は誰? 神ですか? シルエットだから小柄なのはわかるがどんな顔してるのか分からない。
「冗談ではありません、そう! 私は神様です!!」
おおっと、喋ってないのに答えられた?! 心を読めるのかな?
「はい! あなたの心のうちの中にある醜〜い感情まで見え見えです! あれ? 清らかですね、おかしい……」
なんだか失礼なこと思われてない? なんなんだこの人。
「あの……私たちが死んだって……」
おっと、そうだった、一番聞きたい事を忘れてたよ、ナイス! 女の子!
「はい、あなたたちは死にました。トラックに轢かれてぐっちゃぐちゃのめっちゃめちゃです」
うわわ、ぐっちゃぐちゃのめっちゃめちゃって……あれ? でも、今、自分の体あるよね??
「はい! お二人の体は私が作り直しました! 」
「ほんとに、死んじゃったのかー……まぁ、そこそこ楽しい人生だったけど毎日同じような日常でちょっと退屈だったかも、神様! 来世はもっと刺激的な人生にしてください!」
なかなか荒唐無稽なことを言い出すもんだから、悪ノリしてそんなことを言ってみる。
まぁ、実際にあんまりこの世界で生きてる事のありがたみが分からない時があったし。もし、行けるなら行ってみたいね!
「はい! お二人にはやってもらいたいことがあるのです! 」
「やってもらいたいこと? なんです?」
おっと、この謎人は結構ノリがいいのか? でも、死んだって言うのはなかなか悪趣味じゃない?
「えー、ちょっと地球とは違う世界に行ってその世界で生活して欲しいのです」
「え?! いわゆる異世界転生ってやつですか??ほんとにそんなことあるんですねー」
「まぁ、そんなとこですねー、あなたたちにある所に行ってもらってそこを開拓してもらいたいんです」
「あなたたちってことは、僕とこの子でですか??」
いつまでこの茶番劇に付き合えばいいんだろう? というか、さっきから何も話さない女の子の方を見てみると……なんか顔をキラキラさせて目をギラギラさせていた。
「どうしたの? 大丈夫??」
「わわわわぁぁぁぁーー!!! 異世界転生!! 異世界転生ですよ!! 夢が叶いますーー!!! 」
安否を聞いたら、いきなり叫びだしてビックリ、流石の僕もちょっと引き気味……。
「よ、よかったねー……あははー……」
とりあえず、頑張って顔が引き攣らないように言っておいた。
まぁ、僕も異世界転生もののラノベとか読んでだから気持ちは分からない訳でもない。ていうか、本当に異世界に行くの?
「あのあの! あれないんですか?! お約束のチートスキルとか!」
女の子が目をキラキラさせながら興奮気味に言う。シルエットの人もちょっと引いてない?
「え、えと……うーん、そうですね、では、なにか欲しいものとか持っていきたいものとかありますか?」
「はい! んーと、んーと、魔剣もいいしスマートフォンもいいな〜、あ! 駄女神様とかもよさそう! どうしよっかな〜……」
「あなたはなにがいいですか??」
女の子が思考の大海原へ出かけていくのをすっごい楽しそうだな〜って思いながら横目で見てたら神様が僕に話しかけてきました。
「ん? 僕ですか?? んー、そうだな〜……」
「なんでもいいですよ??」
「じゃあ、才能をください!」
「才能ですか? わかりました! あなたのほうは決まりましたか??」
適当に言ってみたが、なんか承諾されたようだ。抽象的だけど大丈夫なの? って思ったけど、この神様は特に何も言わずに女の子の方に視線を戻した。
「………はっ! 決めました!! あらゆる転生者たちの経験を見て電子辞書を持っていきたいと思います!!」
「はい! わかりました! では、改めて伝えたことを確認します! まず、あなたたちは死にました、なので私が生き返らせて異世界に転生させます、あなたたちはそこで生活し土地を開拓してください、ちなみに送る場所は森です、その森を開拓してくれるのなら何をしてくれてもいいです、その他には………」
女の子は電子辞書を持っていくことを決めたようだ、僕は才能って言っちゃったけど大丈夫かな? でも、この話を聞いているとこの人が言っていることが冗談なんかではなく現実なのだと思い知らされる。
でも、僕は本当に死んじゃったんだ……まぁ、特に元の世界でやりたいこともなかった。毎日無気力に日常を送っていただけだし。両親とか友達とか後輩とかには迷惑かけるかもしれないけど、これはこれで良かったかもしれない。
神様の説明を長々と聞いていよいよ異世界に出発する時が来るみたいだ、いろいろ不安なこともあるけどそれ以上の期待とドキドキ感を胸に、
今飛び立とう!異世界へ!! ……まぁ、ほんとに行けたらだけどね。
「では、いってらっしゃい!!」
神様がそう言うと、いきなり正面がすごい輝きで光り出す。僕は、眩しくて咄嗟に腕で顔を覆う。
こうして、トラックに轢かれて死んだ僕達二人は地球とは違う世界で暮らしていくことになった。
これからどんなことが起きるのかドキがムネムネだ!
■■
神様に見送られて目を開けたらそこは深い森の中だった。
右を見ても左を見ても木! 木!! 木!!! この世には木しかないのかと思うくらい木しかない。なかなか禍々しい木だ、日本にこんな木はないだろう。
本当に異世界に来たんだと確信を持った。元の世界でやり残したこととかも沢山あったけど、半ば諦めかけてたからね。第二の人生を楽しむとしようか!
とりあえず女の子、これからのパートナーと親睦を深めよう。
「これからよろしくね!!」
と、握手をしようと手を出す。
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」
僕と女の子は固く握手をした。
第一話をお読みいただきありがとうございます!
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よければもう一つの作品、「異世界から帰ってきた先輩のカノジョになりました!~先輩がそばにいてくれるだけであたしは幸せなんです!~」という現実世界のラブコメも書いてます。読んで頂けると嬉しいです。
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