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私はこうして漫画家になった。

 


 某大手有名出版社で私は編集者の人と会っていた。


 何度か新人賞に応募するも惜しいところで落選、自分なりに良いものは描けているはず、私は思いきって持ち込みしてみたいと大手出版社に電話をしてみた所、女性編集者の阿部定世さん通称アベサダさんが会ってくれる事になった。


「あのぅ、どうでしょうか?」

 出版社の待合室の一角、パーティションで仕切られた打ち合わせブースの中、私の持ち込んだ原稿を1枚1枚と捲るアベサダさん。


「うーーんそうね、凄く表現力がいいわね、ただ絵がね……」

 周囲から小さな泣き声や笑い声等も聞こえる中、圧迫面接の様な恐怖を感じ始めた時、読み終えた編集のアベサダさんに切り出される。


「絵が?」


「この作品に合ってないというか……」


「合ってない……」


「うーーん」

 なにか歯に物が詰まった様な言い方、私はこの恐怖から早く逃れたい、そんな思いを抱きながらも頑張って言った。


「はっきり言ってください、私……漫画家になりたいんです!」


「えっと言っていいのかしら……うーーん、貴方の絵ね……その……エロいの」


「エロ……ふえ?」

 え、は? な、なにを言ってるのこの人……


「そう……いやらしいの……高校生にこんな事言いたくないんだけどね、はっきり言うとそう」


「えええええええ!」


「だから……ちょっとうちの雑誌では使えないのよね」


「そ、そんな……」



「もう少しおとなしめに描けないかな?」


「おとなしめに……」


「うーーん無理か……これはこれで凄いんだけどね」


「凄いって……でも使えない……?」


「うーーーん、えっとねどうしてもなら、あるにはあるんだけど」


「え?」


「貴方の才能を活かせる所が……」


「ほ、本当ですか! お、お願いします! なんでも描きます!」


「いいのかな~~?……じゃあとりあえず、ちょっと聞いてみるわね」


「お、お願いします!!」


 そして連れていかれたのは近くの雑居ビル、某大手出版社の子会社の子会社、そこの編集長と会い、即私の漫画家デビューが決定した。




 こうして私は……エロ漫画家なった……



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