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妹と一泊


 部屋の窓から都内が一望出来た。薄暗い景色、ポツポツと明かりが点灯し始める。ホテルの一室から見える凄くロマンチックな景色……そこに女子と二人きりなんて、童貞の俺にとっては夢の中としか思えないシチュエーション……ただ問題はその女子が……実の妹って事なんだが……


「わーーーー凄い凄い、お兄ちゃん凄い景色だねえ」


「いや、俺まだこの事態を飲み込めて無いんだが」


「良いじゃん、この景色見たかったんだよね~~」


「いや、さっきのレストランで見た景色と一緒じゃん」


「ああ、もうつべこべとうるさいなあ」


「つべこべって……」


「お兄ちゃんとしか来れないでしょ? 高校生がホテルになんて」


「いや、ラブホとかじゃないんだから一人で泊まれば」


「お母さんになんて言うのよ!」


「いや、友達の家に泊まるって言えば、環なら母さん信じるだろ?」


「駄目だよ、嘘は、もしバレたら漫画の事根掘り葉掘り聞かれたり…………あ」


「……へーー母さんもお前が漫画を書いているの知ってるんだ」


「い、一応は……」


「プロ志望なのも知ってるのか?」


「え? あ、うん……」


「──そうか……なら俺じゃなくて母さんと」


「だ、駄目! 私にはお兄ちゃんが必要なの!」


「──環?」


「あ……ち、違うの、別に、お兄ちゃんが好きとかじゃないから! 勘違いしないでよね!!」


「いや、なぜツンデレる? そもそも漫画じゃあるまいし、兄妹でとかなんて思うわけない…………あ」


「──漫画って……お兄ちゃんって、その……そう言うの読むの?」


「へ? あ、えっと……いや、ま、まあ……俺も一応男だし……それなりに」


「そ、そう、そうなんだ……へ、へーーーー」


「ま、まあ……って、な、なんだよその目は」


「え! べ、別に……高校生だもんね、そりゃ……ね……キモ」


「くっ、なんで環とこんな事喋ってんだ俺は……」


「え? ああ、そう、そうか……そう言うのをちゃんと聞かないと……」


「な、なんだ?」


「えっとさ、そう……お兄ちゃん私に協力してくれるんだよね?」


「ああ、そう言ってるけど、て言うか今は一応彼氏役なんだろ忘れたのか?」


「あ~~そうだったよね、もうかなり経っているからね」


「かなり?」


「ううんなんでもない、そ、そか……じゃ、じゃあさ、えっとお兄ちゃん……お兄ちゃんってその……経験ってあるの?」


「あ、あのなぁ、キスもした事無いって言っただろ? それ以上の経験があったら逆に怖いわ!」


「あ、そうだよね、あはははは」


「そうだよ、なに言ってるんださっきから、だからいきなりこんな所に来ても、なんの取材にもならないだろ? 俺は彼女すら居た事無いんだから、こういう時どうしていいかわかんねーよ」


「それは私もだけどさーー、まあ……とりあえずソファーに座って外でも眺めて見ようよ、その……今日は一応……恋人同士って事なんだから、ね」


「…………まあ、それくらいなら」


 俺は窓際のソファーを窓の外側に向けそこに腰掛けると、妹は俺の隣に座った。そして二人で外の景色を眺める、暫く何も言わずにただただ眺めていた。


 それにしても妹の目的がいまだによくわからない、デビューもしていないのに取材、まあそんな小説家気取りの輩もいるとは聞くし無い事は無い……でも俺に恋人のフリ迄させるって……妹の真意が全くわからない。



 その後二人で夜景になる迄外を眺め、寝るにはまだ早いとホテル内や近辺を探索しようと、うろうろしたり、そこで見つけた喫茶店でコーヒーを飲んだりしながら時間を潰し再び部屋に戻った。


「さて、お風呂入ってくるね」


「え! あ、うん」


「なんで驚く? あ、お兄ちゃんエッチ、私と一緒に入りたいとか思った?」


「な! そんなわけ無いだろ!」


「いくら恋人のフリって言っても、そこまでは…………」


「どうした?」


「え? あ、ううん……そうか……そう言うのもありか……」


「は?」


「ううん、なんでもない、そこまでは協力してもらわなくても想像で…………あ」


「想像? 本当なんなんだ一体」


「な、なんでもない! 覗かないでよねお兄ちゃん!」


「覗かねえよバーーカ!」

 妹は俺にあかんべーをして脱衣場に入っていった。

 結局俺はからかわれているのか……それにしても最近の妹の行動は本当に謎だ。

 妹は何かを隠している。でもそれが一体なにかはわからなかった。


 

◈◈◈



 深夜1時……ようやくお兄ちゃんの寝息が聞こえてきた。お兄ちゃんは中々寝つけなかったのかさっきまでスマホを触っていたがようやく眠りについた様だ。 私はお兄ちゃんが寝るまでずっと寝たフリをしてずっとこの時を待っていた。


 私はベットからそっと起き上がると、お兄ちゃんのベットの脇に立ってお兄ちゃんを見た。カーテンは閉めていなかったので暗闇ではない、うっすらと見えるお兄ちゃんの寝顔……ぐっすりと寝ているのを確認し、私は徐に着ていた服を全部脱いだ。


 下着も外し真っ裸でお兄ちゃんのベットに入る。起こさない様に慎重に慎重にゆっくりと入った。


 お兄ちゃんの匂いがする。そして温もりが肌に伝わる。

 ドキドキが止まらない、心臓の鼓動が早鐘の様に打ち始める、このまま死んでしまうんじゃないかって位に速く……


 私は更に踏み込み、お兄ちゃんの腕に身体を押し当てる。

 これが限界だ……本当は抱き付きたかった……でもこれが限界。


 これが私の本当の目的、お兄ちゃんと一緒に寝る事……どんな気持ちなるのか、これはいくら考えてもわからなかった。想像では無理だった。かといって家では出来ない……でも……ここなら間違えた寝ぼけたで誤魔化せる。


 「これが男の人と一緒に寝るって感覚、これがお兄ちゃんと一緒に寝るって感じ……か」

 想像だけじゃわからない、妹が兄と一緒に寝るってどんな感覚なのか、どんな感じなのか分からなかった。

 

 こんなにもドキドキするんだ、こんなにも暖かいんだ……

 そして、こんなにも……こんなにもお兄ちゃんの事を……愛しく感じるんだ……


 こんなにも…………




 




申し訳ありません1ヶ月振りの更新です。

一応エタらせるつもりは無いんですが、ブクマ数と書きやすさ優先で書かせて貰っております。

ご了承下さい(笑)( ;゜皿゜)ノシ

先が気になる方はブクマ、評価等宜しくお願いいたします。


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