ブラコン
「あれ?もしかして、ウサコ?!」
二人で並んで歩く帰り路の途中で突然、声をかけられた。
あたしとアルマジロくんは同時に、振り返った。
そこに居たのは、あたしの中学のときのクラスメート、尚美。
「久しぶりだね!」
中学を卒業して半年振りの再会にあたしのテンションもあがる。
尚美は、ちらっとあたしの横を見て、耳元で囁いた。
「逢沢次郎くんだよね?モデルの」
「うん」
あたしが頷くと、尚美はテンションが上がったみたいで、顔を真っ赤に染めている。
道の真ん中で、やっぱり~~~!!って大きな声をあげた。
「やっぱり、逢沢くんってカッコいいね!!ウサコのお兄ちゃんもカッコいいけど」
「ウサコって兄貴が居るの?」
きゃぴきゃぴしている尚美に、口を挟んだのはアルマジロくん。
アルマジロくんに話しかけられて、尚美の顔はもっと真っ赤に染まる。
「ウサコのお兄ちゃんは超カッコいいんですよ。父兄参観のときに来て、クラスが大盛り上がりしたもんね」
「そうなんだぁ」
アルマジロくんに微笑まれて、尚美はもう熟れたりんご状態。
熱でもあるんじゃないかって疑っちゃうほどだ。
チャランチャンチャン
不意に尚美のポケットから着メロの音が響いた。
ケータイを取り出して、覗き込んだ尚美は「あっ」と小さく声を上げた。
「あたし、そろそろ行かなくちゃ。このあとバイトなんだ」
「またね、尚美」
あたしに手を振り返した尚美は、アルマジロくんには緊張した面持ちで「バイバイ」と言って別れた。
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尚美が居なくなって、あとしとアルマジロくんは再び、並んで歩きだす。
あたしはちらっとアルマジロくんを見上げた。
なんて、アンバランス。
時々、ショーウインドーに二人の姿が映るけれど、妙にデコボコしていてつりあわない。
あたしは小さくため息をついた。
「なー。ウサコんちって父親、忙しいの?」
アルマジロくんはちらっとあたしを横目で見た。
「えっ?」
「さっき、父兄参観に兄貴が来ていたって言ってたじゃん」
「あー。うちは、今、父親いないの」
「えっ?」
アルマジロくんの目が見開く。
あたしはカラッと笑って答えた。
「離婚しているから」
「わりぃ」
瞬間に顔色を変えるアルマジロくんにあたしは両手を振る。
「別に気にしないで。今時、離婚なんてよくある話だよ」
あたしが取り成すと、アルマジロくんはさらに、困ったように笑った。
「それより、明日、土曜日だよね」
「あー」
突然、コロッと話題を変えたあたしに、アルマジロくんは空を仰ぐ。
「もしかして――――――暇だったりする?」
控えめに切り出したあたしに、アルマジロくんはじっとあたしを見つめる。
「暇だって言ったら?」
「明日のメリットは、明日、直接伝えたい!デートして」
息継ぎせずに、一気に叫んだ。
あたしの必死さが可笑しかったのか、アルマジロくんは、ぶはっと息を吐き出すように笑い出した。
ひとしきり笑ったアルマジロくんは、ちょっと意地悪そうにニッと口端を持ち上げた。
「ほかの子と約束あるんだよねー」
「あっ、そっか……」
「でも、夜の約束だから、4時ぐらいまでならいいよ」
――――――夜の約束というのが、ちょっとだけ気になった。
だけど、それは突っ込んではいけない気がした。
突っ込んで聞いたら、きっと、あたしは泣いちゃう気がした。
だから、あたしは「ありがとう」とだけ言って素直に喜んだ。




