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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
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ブラコン

「あれ?もしかして、ウサコ?!」


二人で並んで歩く帰り路の途中で突然、声をかけられた。

あたしとアルマジロくんは同時に、振り返った。


そこに居たのは、あたしの中学のときのクラスメート、尚美。


「久しぶりだね!」


中学を卒業して半年振りの再会にあたしのテンションもあがる。

尚美は、ちらっとあたしの横を見て、耳元で囁いた。


「逢沢次郎くんだよね?モデルの」


「うん」


あたしが頷くと、尚美はテンションが上がったみたいで、顔を真っ赤に染めている。

道の真ん中で、やっぱり~~~!!って大きな声をあげた。


「やっぱり、逢沢くんってカッコいいね!!ウサコのお兄ちゃんもカッコいいけど」


「ウサコって兄貴が居るの?」


きゃぴきゃぴしている尚美に、口を挟んだのはアルマジロくん。

アルマジロくんに話しかけられて、尚美の顔はもっと真っ赤に染まる。


「ウサコのお兄ちゃんは超カッコいいんですよ。父兄参観のときに来て、クラスが大盛り上がりしたもんね」


「そうなんだぁ」


アルマジロくんに微笑まれて、尚美はもう熟れたりんご状態。

熱でもあるんじゃないかって疑っちゃうほどだ。


チャランチャンチャン


不意に尚美のポケットから着メロの音が響いた。

ケータイを取り出して、覗き込んだ尚美は「あっ」と小さく声を上げた。


「あたし、そろそろ行かなくちゃ。このあとバイトなんだ」


「またね、尚美」


あたしに手を振り返した尚美は、アルマジロくんには緊張した面持ちで「バイバイ」と言って別れた。



***********************************



尚美が居なくなって、あとしとアルマジロくんは再び、並んで歩きだす。

あたしはちらっとアルマジロくんを見上げた。


なんて、アンバランス。


時々、ショーウインドーに二人の姿が映るけれど、妙にデコボコしていてつりあわない。

あたしは小さくため息をついた。


「なー。ウサコんちって父親、忙しいの?」


アルマジロくんはちらっとあたしを横目で見た。


「えっ?」


「さっき、父兄参観に兄貴が来ていたって言ってたじゃん」


「あー。うちは、今、父親いないの」


「えっ?」


アルマジロくんの目が見開く。

あたしはカラッと笑って答えた。


「離婚しているから」


「わりぃ」


瞬間に顔色を変えるアルマジロくんにあたしは両手を振る。


「別に気にしないで。今時、離婚なんてよくある話だよ」


あたしが取り成すと、アルマジロくんはさらに、困ったように笑った。


「それより、明日、土曜日だよね」


「あー」


突然、コロッと話題を変えたあたしに、アルマジロくんは空を仰ぐ。


「もしかして――――――暇だったりする?」


控えめに切り出したあたしに、アルマジロくんはじっとあたしを見つめる。


「暇だって言ったら?」


「明日のメリットは、明日、直接伝えたい!デートして」


息継ぎせずに、一気に叫んだ。

あたしの必死さが可笑しかったのか、アルマジロくんは、ぶはっと息を吐き出すように笑い出した。


ひとしきり笑ったアルマジロくんは、ちょっと意地悪そうにニッと口端を持ち上げた。


「ほかの子と約束あるんだよねー」


「あっ、そっか……」


「でも、夜の約束だから、4時ぐらいまでならいいよ」


――――――夜の約束というのが、ちょっとだけ気になった。


だけど、それは突っ込んではいけない気がした。

突っ込んで聞いたら、きっと、あたしは泣いちゃう気がした。


だから、あたしは「ありがとう」とだけ言って素直に喜んだ。

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