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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
6/44

ポイント

今日のかに座の運勢は、最悪。

血液型占いも最下位だった。




だからかな?

今日は朝からアルマジロくんの姿を見ていない。


何度覗いても、アルマジロくんは渡り廊下から歩いてきてはくれない。

休み時間のたびに、窓から木の下を見下ろしたけれど、アルマジロくんの姿を見つけることができなかった。


昼休みになって、あたしのテンションは底辺まで落ち込んでいた。


「美紀、フルーツオレ、買ってくる」


いってらっしゃい、と手を振られて、あたしは自販機に向かう。

いつものフルーツオレを買い教室に戻る道すがら、屋上に繋がる階段が目に入った。


もしかして、屋上にいるかもしれない――――――

あたしは階段を駆け上がった。


屋上の重たいドアを押し開けると、太陽の光が目に飛び込んでくる。

まぶしくて目を細めながら、空の下に出た。


「天気、いいなぁ」


「ウサコじゃねぇか」


胸がどきんっと飛び跳ねる。

あたしの心臓は、周りに聞こえるんじゃないかってぐらいバクバクと音を立てている。


「アルマジロくん!」


声の方向に振り向くと、アルマジロくんが一人でお弁当を広げていた。

今日は給水タンクの上ではなく、フェンスに寄りかかってお弁当を食べていた。


とっさに周囲に目を配ったが、彼は一人でここに居るみたい。


「なんで、一人で食べてるの?」


あたしが近寄ると、アルマジロくんは箸を銜えながら、「うーん」と返事をした。


「俺にだってたまには、一人になりたいこともあるの」


「一人に?」


「そっ。女の子を撒いてきたら、ここにたどり着いた」


「あっ、じゃ」


あたしは慌てて、立ち上がった。


「どこ行くの?」


アルマジロくんの不思議そうな目に見上げられて、あたしは慌てて手を振った。


「ごめんなさい。アルマジロくんの時間を邪魔する気はなかったの」


あ、そういうこと、納得しながら、アルマジロくんはタコさんウインナーを口に放り込んだ。


「別に五月蝿くしなけりゃ、ここに居てもいいよ」


アルマジロくんの言葉に、あたしの胸の中にパーッと花が咲く。

あたしは再び、アルマジロくんの隣に座りなおした。


「それって、お昼を作る子が作ってきてくれたの?」


あたしの視線の先には、アルマジロくんのお弁当。

カラフルな食材には、手の込んだ細工をしてある。

どれも残り物とは思えないから、全部、朝、手作りしているんだろうなってわかる。


「うん」


アルマジロくんは悪びれもせずに、素直に頷く。

あたしの心中は複雑。


お弁当を作ってきた子はきっと、アルマジロくんを真剣に好きな女の子。

すっごくすっごく好きだから、朝からどんなに手間がかかっても気にならない。


なのに、そのお弁当をあっさりと感謝もせずに食べているアルマジロくん。

美紀が言うように、アルマジロくんは世間一般的に見て悪い男なのかもしれない。


だけど――――――


だけど、不思議なことになぜか、嫌いになれない。

アルマジロくんの整った指が箸をつかんで、色っぽい口に食べ物を運んでいる。


太陽にさらされた茶色い髪は、きらきらと輝いて、頭上に天使の輪ができている。


「そんなに見られたら、食べづらい」


我に返ったあたしは、アルマジロくんの眉間のしわに気がついてパッと顔を背けた。

でも、すぐに我慢できなくなって、横目でアルマジロくんの顔を見つめてしまう。


――――――ってあれ?


アルマジロくんの箸が一瞬だけ、弁当箱の中で泳いだ気がした。

アルマジロくんの顔が一瞬、ゆがんだ気がした。



――――――もしかして


「アルマジロくんって、人参が嫌いなの?」


あたしの言葉に、アルマジロくんは目を見開いた。


「えっ? 俺、人参が嫌いなんて誰かに言ったことないんだけど」


「うーん、なんだか嫌そうな顔したような気がして」


アルマジロくんは驚きを隠せずに、あたしを見ている。


「人参、食べてあげようか?」


笑ったあたしに、アルマジロくんは素直に、人参を箸でつかんであたしに差し出してくる。

あたしはそれをパクッと口にした。


「今日のあたしのメリットだよ」


「はっ?」


「嫌いな人参、いつでも食べてあげる」


あたしの言葉に、アルマジロくんは嬉しそうな顔はしない。

なぜか妙に渋い顔をしている。


「あんたってさ、微妙にポイントがずれてるよな」


呟いたアルマジロくんの言葉の意味が、わからない。

きょとんとして、首をかしげたあたしに、アルマジロくんはため息を漏らした。

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