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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
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呼び方

アルマジロは、ハリネズミじゃないし、アリクイじゃない。

ハリネズミみたいにハリはないし、アリクイみたいに毛もない。


ガチガチの板に包まれたのが、アルマジロ。


もちろん、あたしが大好きな逢沢次郎くんは

姿カタチもアルマジロに似ているわけじゃない。


モデルもこなすスーパー高校生なんだから。



だけど、実を言うと、逢沢次郎くんとアルマジロにはいくつかの共通点がある。


外見じゃない見えない共通点――――――


*************************************


「アルマジロくんだ!」


アルマジロくんが渡り廊下から、教室に向かって歩いていく。

今日のアルマジロくんは、男友達と一緒だから、席に座ったまま声をかけて手を振った。


アルマジロくんは顔をしかめて、「アルマジロじゃねぇ」ってお決まりの台詞を返してくれる。


「あー、この子が宇佐美ちゃん?」


「はいっ!」


アルマジロくんの隣の男の子が、あたしに近寄ってきた。

カッコいい男の子のところには、カッコいい男の子が集まるのかな?


アルマジロくんとトモダチだと思われる男の子も、端整な顔立ちをしている。


「俺、時岡正宗ときおか まさむね


「正宗くん?」


「そうそう」


正宗くんが笑うと、太陽みたいに周りが明るくなる。


「おい、なんでこいつは、普通に?正宗くん?なんだよ」


アルマジロくんが機嫌の悪そうな声で、口を挟んできた。


「えっ?」


きょとんとして、見上げたあたしに、アルマジロくんは顔を寄せてくる。


「俺がアルマジロで、なんでこいつは普通に呼ぶんだって聞いてんの」


なんで、って聞かれても

答えに詰まったあたしは、しばらく固まって、突然、顔を上げた。


「アルマジロくんは、アルマジロくんだから!」


答えになってねぇ――――――って言いながら、アルマジロくんは頭を抱えている。

隣に立っていた正宗くんはおなかを抱えて笑っている。


「もういいよ」


アルマジロくんはそう言って、片手で振って歩いていってしまう。

「またねー」って正宗くんが笑ってくれたから、あたしは二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。



***********************************




「だから、あのドラマの主人公ってさ」


美紀が昨日、見たドラマの話を熱く語っている。


帰りの昇降口。

ローファーを出そうと、下駄箱をあけた瞬間、ビビッとあたしのレーダーが動く。


バッと校庭を見ると、アルマジロくんの背中を見つけた。


「あんなところで、告白とか言っておかしいよね?そう思わない、ウサコ?」


「ごめん、美紀。ちょっと、あたし、先行くね」


「はっ!?!」


まだ上履きのままの美紀を昇降口に置き去りにして、あたしはアルマジロくんの背中を追いかける。


「アルマジロくん!」


彼の隣には、昼間、会った正宗くん。

アルマジロくんの隣に女の子がいないことは珍しいから、見つけたときは駆け寄ることに決めている。


「おまえって、よく俺を見つけるよな。しかも女と一緒じゃねぇ瞬間を嗅ぎ分けて」


呆れたようにアルマジロくんがあたしを見下ろす。


「うん。だって、あたしにはアルマジロくんレーダーがついているから!」


「アルマジロくんレーダー?」


聞き返したのは、隣にいた正宗くんだった。


「うん、あたしね。100人いても1000人いても、アルマジロくんがどこにいるか見つけられるよ」


あたしのアルマジロくんレーダーには自信がある。

これが本気の恋のパワーだって、胸を張れるの。


「ふーん」


「どこにいても、アルマジロくんを見つけられる。それが、今日のあたしのメリットだよ」


あたしの言葉にアルマジロくんが目を見開いた。


「――――――」


アルマジロくんは、なにを考えているのかわからない目であたしを見下ろしている。


「ちょっと、ウサコ―――!!!」


突然、後ろからあたしを呼ぶ声が聞こえる。

振り返れば、美紀が鬼のような形相で立っている。


「い、今、行く!!」


美紀の呼びかけに答えて、もう一度、アルマジロくんに視線を向けると、彼は不思議そうな顔をしていた。


「ウサコってなに?」


「あたしの名前、うさみ ここだから、略してウサコなの」


「ふーん」


聞いたわりには興味がないのか、彼は返事のような呟きを残して、正宗くんと歩き出す。


「バイバイ、アルマジロくん!」


慌てて叫んだあたしに、アルマジロくんの足の歩みを少しだけ緩めて振り返る。


「あぁ、また明日な。ウサコ」





幸せで胸がはちきれるかと思った――――――

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