表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
38/44

特別の理由

幼い頃から、あたしは男の人が怖い。

ご飯もほとんど、食べられない。

どうして、こうなったか、原因は自分が一番よく、わかっている。


でも、原因がわかったって、治るわけじゃない。


だから、一生、誰かを好きになることなんてできないって思った。

一生、男の人に触れるなんてできないと思った。


だけど、アルマジロくんだけは特別だった。



あたしにとって、彼だけが特別。



「ウサコ」


窓枠にぐったり寄りかかって、泣き続けているあたし。


ドアを叩くノック音が聞こえてきても、返事をしなかった。

ちょっとためらったように間が空いて、部屋のドアがゆっくりと開いた。


「お兄ちゃん」


顔を上げたら、お兄ちゃんがドアを開けて立っていた。


「泣いているのか」


お兄ちゃんはあたしの横のベッドに腰掛けるけど、それ以上、近づいてはこない。

ティッシュをあたしに差し出してくれるけれど、手が触れないように気遣っている。


あたしがお兄ちゃんすら、怖いと思っていることを知っているから。



「あたしね、アルマジロくんは特別だって思ったの」



お兄ちゃんは黙って、あたしの事を見つめている。


あたしのこの病気のことを一番、心配してくれているお兄ちゃん。

そして、一番、責任を感じているお兄ちゃん。


「最初に出会ったとき、本当に一目ぼれだったの。でも、顔とか雰囲気とかそんなものだけで好きになったわけじゃないの」


「ウサコは、一目ぼれする性質じゃねーもんな」


お兄ちゃんの声は柔らかくて、優しい。


「好きだから大丈夫だと思ったの」


「うん」

「でも、ちょっと違うかなぁ。触れられたから」


「えっ?」


お兄ちゃんが驚きを表情に乗せた。

見開いた目で見つめられて、あたしはハハッて小さな笑い声をあげた。


「ちゃんとじゃないけど、アルマジロくんだけがあたしに触れられるの」


「あいつが?」


あたしの微笑みに、お兄ちゃんはそれ以上追求してこなかった。


アルマジロくん、貴方だけなの。


貴方だけが、あたしの特別。




朝が来て、太陽が空に輝いても、昨日のすべてが無くなるわけじゃない。


あたしは玄関を開けて、目を伏せた。


アルマジロくんはあたしの家に迎えに来ていなかった。


毎日来ていた、アルマジロくんの姿がない。


あたしはたった一人ぼっちで、学校へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ