変われない自分
アルマジロくんは何も聞かない。
聞かれないから、あたしは何も言わない。
それじゃ、ダメだってわかっているけれど、何も言えないあたしは貝のように口を閉じるしかない。
屋上でお昼を食べないあたしを指摘したアルマジロくんは、にんじんをあたしの口に放り投げたけれど、それ以上詳しいことは聞いてこなかった。
「聞かないの?」
聞かれたくないくせに、訊いたあたしに、アルマジロくんは困ったように首をかしげた。
「聞いていいの?」
逆に聞き返されたあたしは、ちょっと間を空けて、首をふるふると横に振る。
「じゃぁ、聞かない」
あっさりと返された声に、拍子抜けしてしまう。
てっきり無理に聞き出そうとされるかと思ったけれど、アルマジロくんはそんなことはしなかった。
黙ってお弁当を食べている。
怒っているのかな、と思って、顔を覗き込むと、アルマジロくんと目が合って、ニコッと微笑まれた。
あたしにとって、アルマジロくんの隣は、居心地のよいものになった。
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だけど、あたしの病は決して治ったわけじゃない。
そんなことわかっていたはずなのに。
二人で屋上でお昼休みをまったりと過ごしていると、運の悪いことに突然、雨が降ってきた。
「心、早く!」
急かされて慌てて、校舎の中に非難した。
「ったく、ひどい雨だな」
アルマジロくんは浮かない顔で、屋上の扉を閉めた。
「あっ、あたし、ハンカチ持ってるよ」
アルマジロくんの髪の毛の束から、しずくが滴っている。
拭くもの、拭くもの、と慌てて出したのがいけなかった。
あたしの水玉模様のハンカチは、スカートのポケットから出される瞬間、ふわっと舞って、床に落ちた。
「あっ」と小さく呟いて、あたしが手を伸ばす。
その手よりも早くアルマジロくんがハンカチを拾おうとした。
水玉のハンカチのすぐ真上で、あたしとアルマジロくんの手が触れる。
瞬間、ぞくっと背筋に悪寒が走った。
好きな人に触れられたはずなのに、あたしの体はすぐに拒否反応を示す。
「きゃぁぁぁぁっ」
気がついたら叫んで、その場にしゃがみこんでいた。
ゆるゆると顔を上げると、傷ついた表情のアルマジロくんがいる。
「ごめん」
短く謝られた言葉に、あたしは涙が止まらなかった。
あたしがいけないのに、アルマジロくんが謝らないで。
あたしがいけないの。
あたしが、こんな身体だからいけないの。
やっぱり、あたし、誰かを好きになるなんて許されなかった。
「大丈夫だよ、心。気にしないで。大丈夫だよ」
アルマジロくんは一定の距離を保ちながら、あたしには近づいてこない。
少し離れた場所から繰り返し、繰り返し、あたしを慰めてくれる。
彼は笑みを浮かべていて、何度も優しい声音であたしに話しかけてくれていた。
だからこそ、本当に、死んでしまいたくなった。
どうして、あたしはこんなにひどい女なの。
本当にあたしなんて、なくなっちゃえばいいのに。




