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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
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変われない自分

アルマジロくんは何も聞かない。

聞かれないから、あたしは何も言わない。


それじゃ、ダメだってわかっているけれど、何も言えないあたしは貝のように口を閉じるしかない。


屋上でお昼を食べないあたしを指摘したアルマジロくんは、にんじんをあたしの口に放り投げたけれど、それ以上詳しいことは聞いてこなかった。


「聞かないの?」


聞かれたくないくせに、訊いたあたしに、アルマジロくんは困ったように首をかしげた。


「聞いていいの?」


逆に聞き返されたあたしは、ちょっと間を空けて、首をふるふると横に振る。


「じゃぁ、聞かない」


あっさりと返された声に、拍子抜けしてしまう。

てっきり無理に聞き出そうとされるかと思ったけれど、アルマジロくんはそんなことはしなかった。


黙ってお弁当を食べている。

怒っているのかな、と思って、顔を覗き込むと、アルマジロくんと目が合って、ニコッと微笑まれた。



あたしにとって、アルマジロくんの隣は、居心地のよいものになった。




***********************************




だけど、あたしの病は決して治ったわけじゃない。


そんなことわかっていたはずなのに。



二人で屋上でお昼休みをまったりと過ごしていると、運の悪いことに突然、雨が降ってきた。


「心、早く!」


急かされて慌てて、校舎の中に非難した。


「ったく、ひどい雨だな」


アルマジロくんは浮かない顔で、屋上の扉を閉めた。


「あっ、あたし、ハンカチ持ってるよ」


アルマジロくんの髪の毛の束から、しずくが滴っている。

拭くもの、拭くもの、と慌てて出したのがいけなかった。


あたしの水玉模様のハンカチは、スカートのポケットから出される瞬間、ふわっと舞って、床に落ちた。



「あっ」と小さく呟いて、あたしが手を伸ばす。



その手よりも早くアルマジロくんがハンカチを拾おうとした。


水玉のハンカチのすぐ真上で、あたしとアルマジロくんの手が触れる。




瞬間、ぞくっと背筋に悪寒が走った。

好きな人に触れられたはずなのに、あたしの体はすぐに拒否反応を示す。



「きゃぁぁぁぁっ」


気がついたら叫んで、その場にしゃがみこんでいた。

ゆるゆると顔を上げると、傷ついた表情のアルマジロくんがいる。



「ごめん」


短く謝られた言葉に、あたしは涙が止まらなかった。

あたしがいけないのに、アルマジロくんが謝らないで。


あたしがいけないの。


あたしが、こんな身体だからいけないの。


やっぱり、あたし、誰かを好きになるなんて許されなかった。


「大丈夫だよ、心。気にしないで。大丈夫だよ」


アルマジロくんは一定の距離を保ちながら、あたしには近づいてこない。

少し離れた場所から繰り返し、繰り返し、あたしを慰めてくれる。


彼は笑みを浮かべていて、何度も優しい声音であたしに話しかけてくれていた。


だからこそ、本当に、死んでしまいたくなった。

どうして、あたしはこんなにひどい女なの。


本当にあたしなんて、なくなっちゃえばいいのに。

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