ウサコのメリット
「こーこ」
昼休みになって、廊下と教室を繋ぐ窓から、アルマジロくんの顔が覗く。
「屋上、行かね?」
あたしは一瞬、戸惑ったものの、素直に頷いた。
一緒に居られるのは嬉しい。
でも、一緒に居れば居るほど、アルマジロくんにあたしのすべてがばれてしまいそうで怖い。
きっとアルマジロくんだって、あたしなんかじゃ、めんどくさいって思うに決まっている。
一緒にいるのが苦しいのに、でも一緒に居られないのはもっと苦しい。
欲張りなあたしは、アルマジロくんの隣を誰にも渡したくない。
「飯は?」
ふと気がつくと、アルマジロくんにじっと見つめられていた。
あたしの手に握られているのは、フルーツオレ。
お弁当も何もない。
「なぁ、俺、授業が終わってすぐに誘いにきたよな」
「う、うん」
「おまえ、飯、食ってないだろ」
あたしは答えられなくて、目を伏せた。
「食えねーの?」
アルマジロくんの視線に囚われて、あたしはポツリと呟いた。
「まったく、というわけじゃないの。ちょっとなら」
アルマジロくんはあたしをちらっと見ると、手元のお弁当に視線を向けた。
パカッとあけると、色とりどりのお弁当が覗いている。
その中からにんじんを選ぶと、アルマジロくんがあたしの目の前に突き出してくる。
「口あけろよ」
ただ、それだけの言葉が色っぽくて、あたしはドキドキする。
恥ずかしくて、唇を薄く開くと、「そんなんじゃ、食えねぇだろ?ちゃんと開けろ」と急かされた。
あたしの熱は、上昇中で、止まらない。
思い切って開けた口の中に、にんじんが一つ、転がってきた。
「食ってくれんだろ?」
あっ、あたしのメリット。
ちゃんと覚えていてくれたんだと思うと、感動した。
ウルウルと見つめていたのが、ばれてアルマジロくんに苦笑された。
「おまえって本当にわかりやすいよな」
ふっと笑われたけれど、あたしは幸せでいっぱいだった。
アルマジロくんが笑うと、あたしも笑顔になる。
あっ、あたしが初回に提示した利点そのものだね。
笑顔は笑顔を呼ぶ。
あたしたち、一緒にいたら、もっと幸せになれるかな?




