一日一回
あたしが玄関に着くと、お兄ちゃんとアルマジロくんはピタッと会話を止めた。
突然、シンッとした雰囲気に違和感を感じる。
「あたしに聞かれたくない話?」
「まぁな」
お兄ちゃんはあっさり頷いて、タバコの紫煙を吐き出した。
「大人同士の話だ。ウサコにはまだはぇよ」
くくっと笑われて、あたしは頬を膨らませた。
「なに、それ~~~!!」
叫んでは見るものの、お兄ちゃんに笑われる一方で、止まらない。
「もうっ、お兄ちゃん!!」
****************************************
「兄貴と仲良いよな」
「うん、大好きだもん」
アルマジロくんとともに、歩き出したあたしは、お兄ちゃんの話に笑みがこぼれる。
「妬けちゃうな」
「えっ?」
「ほかの男に好きなんて言われると、ヤキモチ妬ける」
「ほ、ほかの男って、お兄ちゃんだよ?」
「だから? 男には変わりないだろ?」
あたしは真っ赤になった顔を隠そうと、うつむいた。
「心、もうメリットを伝えてくれないんだな」
ポツリと呟くような声が、隣から響いてきた。
寂しげな声音に、気持ちがざわめく。
「だって、こんなに迷惑かけてるのにメリットなんて」
アルマジロくんは眉間にしわを寄せた。
「変な奴。いまさら、気を使うんだな」
「ごめん」
「謝るな。謝られると俺が傷つく」
「えっ、あっ、ごめんなさい」
アルマジロくんは、はぁーっとこれ見よがしの大きなため息を吐いた。
「謝られたい事かどうか、俺が決める。心、決めてんじゃねーよ」
「うっ、ごめんなさい」
「だ・か・らっ!!」
「わわっ、ごめんなさい」
「わざとやってんのか!!」
ついに、怒鳴られた。
話の続きを切り出しづらくて、あたしは無言でアルマジロくんの隣を歩く。
「なぁ」
不意にアルマジロくんが、口を開く。
「あんたの代わりに今度は俺が一日一回伝えてやろうか」
「えっ?」
あたしは唖然として、アルマジロくんを見上げた。
「メリットを?」
「いいや」
いつのまにか足を止めていたあたしの数歩前で、アルマジロくんも立ち止まる。
振り返った彼の表情は、妖艶でドキッとした。
「一日一回、愛の言葉」
アルマジロくんがあたしの傍に近寄ってくる。
息遣いも感じるほどに近くまで寄ってきたアルマジロくんは、かすれた声で囁いた。
「心、好きだよ」




