あいにくのデート日和
日曜日は、あいにくの晴れだった。
雨ならば、「また今度にしよう」って電話しようと思ったのに、快晴の今日はお出かけ日和。
降水確率0パーセントなんて、つい昨日まで雨続きだったのが嘘のようだ。
「心、逢沢くんが来てくれたわよー!」
ママの声が下から聞こえてきて、あたしは慌ててジャケットを掴んで、階下に下りた。
玄関のところまで走っていくと、ちょうど薄く開いたドアの外にもたれかかった兄の背中が見えた。
何しているんだろう?と黙って、兄に近づく。
「あんたが、アルマジロか」
あたしの位置からでは、アルマジロくんの姿は見えなかった。
だけど、きっと兄の前には彼が立っている。
「お兄さんですか?」
アルマジロくんの深い声が響いてきて、あたしの胸はそれだけで高鳴る。
「あぁ、まぁな。アルマジロくん」
わざとらしい呼び方。からかいの色が混じる声に、あたしはハラハラする。
兄がなぜ、アルマジロくんを虐めているのかわからない。
「おにい―――」
止めようと、口を開いたあたしの声はアルマジロくんの言葉に遮られた。
「俺、逢沢次郎です」
アルマジロじゃねぇーから、と続くいつもの言葉をちょっと隠して、丁重に名前を訂正した。
「ふーん」
頷いているようにも見えるお兄ちゃんの表情が、見えない。
お兄ちゃんの意図がまったく、伝わってこない。
「本当に、アルマジロだったら良かったのにな」
お兄ちゃんの言葉が、あたしの心臓を突き刺した。
その言葉の意味は、あたしには良くわかった。
きっと、アルマジロくんには伝わらないだろうけれど。
きっと今、お兄ちゃんはあたし以上に傷ついた表情を見せている。
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アルマジロくんと並んで歩くのは、初めてじゃない。
初めてのデートの時、あたしの胸には嬉しさが溢れて、心が高鳴っていた。
今は冷や汗が出て、喉がカラカラに渇く。
「どこに行くの?」
言葉を発したら、喉に絡まって、声がかすれてしまった。
あたしの様子に顔をしかめたアルマジロくんだったけれど、すぐにカラッと笑ってくれた。
「水族館に行こうか」
「水族館?」
「嫌い?」
顔を覗き込まれて、首を横に振る。
良かった、と頷いて、彼は最寄り駅に向かう。
「ウサコ、水族館が好きそうかなって思ったんだ。イルカショーもあるらしいよ」
調べてきてくれたんだ、って思ったら、ひそかに感動した。
アルマジロくんがあたしを好きだなんて自惚れているわけじゃない。
だけど、ちゃんとあたしを見つめて、あたしを想ってくれていることは確かだ。
「アルマジロくん、ありがとう」
彼から切符を受け取りながら、言った。
あたしの言葉に、アルマジロくんは嬉しそうに目尻を下げた。




