表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
27/44

あいにくのデート日和

日曜日は、あいにくの晴れだった。


雨ならば、「また今度にしよう」って電話しようと思ったのに、快晴の今日はお出かけ日和。

降水確率0パーセントなんて、つい昨日まで雨続きだったのが嘘のようだ。


「心、逢沢くんが来てくれたわよー!」


ママの声が下から聞こえてきて、あたしは慌ててジャケットを掴んで、階下に下りた。

玄関のところまで走っていくと、ちょうど薄く開いたドアの外にもたれかかった兄の背中が見えた。


何しているんだろう?と黙って、兄に近づく。



「あんたが、アルマジロか」


あたしの位置からでは、アルマジロくんの姿は見えなかった。

だけど、きっと兄の前には彼が立っている。


「お兄さんですか?」


アルマジロくんの深い声が響いてきて、あたしの胸はそれだけで高鳴る。


「あぁ、まぁな。アルマジロくん」


わざとらしい呼び方。からかいの色が混じる声に、あたしはハラハラする。

兄がなぜ、アルマジロくんを虐めているのかわからない。


「おにい―――」


止めようと、口を開いたあたしの声はアルマジロくんの言葉に遮られた。


「俺、逢沢次郎です」


アルマジロじゃねぇーから、と続くいつもの言葉をちょっと隠して、丁重に名前を訂正した。


「ふーん」


頷いているようにも見えるお兄ちゃんの表情が、見えない。

お兄ちゃんの意図がまったく、伝わってこない。


「本当に、アルマジロだったら良かったのにな」


お兄ちゃんの言葉が、あたしの心臓を突き刺した。


その言葉の意味は、あたしには良くわかった。

きっと、アルマジロくんには伝わらないだろうけれど。


きっと今、お兄ちゃんはあたし以上に傷ついた表情を見せている。




******************************



アルマジロくんと並んで歩くのは、初めてじゃない。


初めてのデートの時、あたしの胸には嬉しさが溢れて、心が高鳴っていた。

今は冷や汗が出て、喉がカラカラに渇く。


「どこに行くの?」


言葉を発したら、喉に絡まって、声がかすれてしまった。

あたしの様子に顔をしかめたアルマジロくんだったけれど、すぐにカラッと笑ってくれた。


「水族館に行こうか」

「水族館?」

「嫌い?」


顔を覗き込まれて、首を横に振る。


良かった、と頷いて、彼は最寄り駅に向かう。


「ウサコ、水族館が好きそうかなって思ったんだ。イルカショーもあるらしいよ」


調べてきてくれたんだ、って思ったら、ひそかに感動した。

アルマジロくんがあたしを好きだなんて自惚れているわけじゃない。

だけど、ちゃんとあたしを見つめて、あたしを想ってくれていることは確かだ。


「アルマジロくん、ありがとう」


彼から切符を受け取りながら、言った。


あたしの言葉に、アルマジロくんは嬉しそうに目尻を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ