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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
25/44

逆転

様子がおかしいということを、あたし以外のみんなが、気がついていた。


あたし一人が、変だということに気が付いていなかった。

つまり、変だということに気がつけなかったあたしは、やっぱり普通の状態じゃなかったんだと思う。



******************************



「ウサコ」


あたしは、手に持ったフルーツオレのパックをチュッチュッと吸いながら、顔を上げた。


「アルマジロくん!?」


お昼休みもまだ、始まったばかり。

教室と廊下を繋ぐ窓から顔を出したアルマジロくんに、あたしは目を見開いた。


「どうしたの?」

「迎えに来た。飯は?」


迎えに?

あたしはきょとんとして、アルマジロくんを見上げる。

もしかして、昨日のことを気にしている。



ううん、もしかして、何か、勘付いている?


不安を押し隠して、あたしはけらっと笑みを浮かべた。


「もう、食べたよ」

「もう?」


アルマジロくんの顔が曇る。


失敗したかも、と思いながらも、あたしは、戸惑いながら小さく頷く。


アルマジロくんが、何かを言いたそうに口を開いた。


「ウサコ!って、逢沢次郎」


重苦しい空気を打ち破ったのは、美紀の声だった。

彼女はあたしの傍にいるアルマジロくんを睨みながら、近寄ってきた。


「逢沢じろ」

「美紀!」


アルマジロくんに突っかかりかけた美紀の腕を、あたしはとっさに掴んだ。


「美紀。さっき、話があるって言ってたよね」

「はっ?」


わざとらしいかもしれない、なんて考えている余裕はなかった。

あたしはアルマジロくんを見上げて、作り物の笑みを顔に貼り付ける。


「アルマジロくん、今日はあたし、美紀と話があるの。屋上に行けないけど、だめ?」

「ダメじゃないよ」


アルマジロくんは顔をしかめて、だけどさ、と呟いた。

アルマジロくんはその言葉を続けなかった。

結局、何が言いたかったのかわからなかった。


確かに何かを言いたそうなアルマジロくんは、黙って、教室を去っていった。


美紀があたしの前に腰掛けて、体だけあたしに向ける。


「ウサコ、本当に逢沢次郎は特別なの?」


美紀の言葉の意味をあたしは、知っている。

理解しているからこそ、今となっては答えられない。


たぶん、きっと。


ううん、あたしは確かに感じていた。


アルマジロくんは特別。

なのに、どうして、傍にいられないの?

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