不意のしぐさ
何が原因か、要因か。
そんなことはわからない。
だけど、ある時からアルマジロくんが変わったことは確か。
そして、その変化にあたしが付いていけていないことも確かなのだ。
「心、ポッキー食う?」
天気の良い午後の屋上。
今日もアルマジロくんの隣には誰もいない。
この間から、立派なお弁当を食べているところも見かけない。
「こーこ?」
アルマジロくんの目にはあたしの姿が映っている。
いつもその瞳に、色とりどりの女の子の姿を映しているアルマジロくん。
だけど、最近のアルマジロくんは友達といる姿は見ても、女の子と一緒に居るところを見かけない。
嫉妬心はなくなったけれど、言いようのない不安は募る。
「こーこ?食べる?」
「へっ?」
「だから、ポッキーだよ」
アルマジロくんはあたしの目の前に、苺のポッキーを差し出していた。
「ありがとう」
手渡しでもらうとしたら、口元に突き出されて、仕方なくあたしはそれを口にする。
誰かを餌付けするのが好きなのかな?
アルマジロくんは餌付けが趣味なのかもしれない。
「ウサコ、頬にカス付いてる」
くくっと喉を鳴らしたアルマジロくんが右手を差し出してきた。
えっ?と思う間もなく、彼の手があたしの頬に触れる。
頭の中に、パァーッと閃光が走る。
「止めて!!!」
******************************
「ウサコ」
アルマジロくんの手が宙を浮いている。
あたしは血の気が引くのを感じた。
嘘。
こんなはずじゃない。
大丈夫だったはずなのに、どうして!?
あたしは青ざめた顔を両手で、覆った。
あたしの様子がおかしいことに気がついているはずなのに、アルマジロくんはあたしに何も訊かなかった。
「大丈夫だよ」
落とされたのは、甘い甘いアルマジロくんの声。
叩かれたアルマジロくんよりもずっと泣き出しそうなあたしに、アルマジロくんが優しく微笑んだ。
余計に軋む心
「ごめんね」も口に出来なかった。
「そろそろ、戻ろうか」
身動き一つ出来なくなっていたあたしに、立ち上がるきっかけをくれたのも、アルマジロくん。
あたしは結局、最後まで、何も言えなかった。
言い訳ひとつできなかった。
なのに、アルマジロくんは何も訊かずにただ笑ってくれた、と思っていたのに。
あたしはアルマジロくんの背中に向かって、形だけ口を動かした。
ごめんね
4文字は彼には届かない。




