本気の本気
昨日のメリットは、メールで送った。
だけど、昨日はメールの返事も返ってこなかった。
嫌われたんじゃないかって恐怖がこみ上げてくる。
心を冷やすような恐怖は、あたしの身体の自由を奪っていく。
力が抜けていき、気力がなくなる。
あたしにはアルマジロくんが必要だ。
彼はあたしにとっての唯一の存在なのだから。
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あたしは朝から、アルマジロくんの姿を探した。
教室にも廊下にも、いつもの木陰にも彼の姿はない。
学校には来ているはずなのに、なかなか彼を捕まえることができない。
昼休み、屋上に上がった。
必死で走って、押し開けた扉の向こうには晴天の空が広がっていた。
話し声は聞こえてこない。
周囲に彼の姿はない。
給水タンクに上がる鉄ハシゴ。
逸る気持ちを抑えて、慎重に登った。
「見つけた」
給水タンクの上で、ようやく愛しいアルマジロくんの姿を見つけた。
「ウサコ」
眠っていた彼は、あたしの気配に気がついて起き上がる。
彼はあたしを見ると、いつもは見せない嫌そうな顔をした。
やっぱりあたし、アルマジロくんに嫌われちゃったの?
あたしは、アルマジロくんの横にぴたんと、正座をする。
ひざがアスファルトに当たって痛いけれど、そんなことはどうでも良かった。
あたしの心は昨日から、悲鳴を上げている。
「なんで、無視するの?」
あたしの言葉にもアルマジロくんの冷たい表情は変らない。
「あたしは、アルマジロくんのことが好きなの。好きになってもらえなくても、一ヶ月猶予をもらったでしょう。まだ時間はあるはず。あたしの本気を無視しないで」
アルマジロくんに訴えながら、あたしの感情は爆発した。
ポロポロと涙が零れ落ちてくる。
「好きなの。アルマジロくんのことがすごく、すごく好きなの」
あたしの涙ながらの告白に、アルマジロくんは冷え切った氷のような声音で返した。
「おまえ、好きだ好きだって言うけど、どこまでその言葉信じられるの?」
「ア、ルマジロくん?」
涙がぴたっと止まる。
なぜなら、アルマジロくんの声があたしよりもずっと、傷ついているように聞こえたから。
アルマジロくんの視線はアスファルトを捉えていて、あたしと視線がかみ合わない。
「そんなに好きだっていうなら、証明してみせろよ」
攻撃的な言葉は、アルマジロくんの傷の深さを示しているような気がした。
「アルマジロくんは、ずるいよ」
あたしの言葉に彼が顔を上げる。
なんでだろう
さっきまで泣いていたのはあたしのはずなのに、今のアルマジロくんのほうがよっぽど泣きそうな顔をしている。
「はなから信じようとしていない人に、心の中を証明するなんてできるわけないよ」
「女なんて、俺はどこをどう信じていいかわかんねぇ」
彼の声を初めて聞いた気がした。
彼の心の声が聞こえてきている気がする。
「あたし、信じて、なんて言わない」
「―――――――」
「軽々しく、言えない」
「んじゃ、どうやって、俺を納得させてくれんの?」
アルマジロくんの声は、心なしか震えているように聞こえる。
「アルマジロくんの目にあたしが映ってるかぎり、あたしは貴方の傍にいる」
あたしはまっすぐに、アルマジロくんの目を捉えた。
―――――――受け止めてもらえなくてもいい。
振られるとしても、ちゃんと受け入れる。
だから、疑わないで。
あたしの本気。
「すぐに信じられなくてもいい。あたしは、傍で何度でも好きって気持ち、伝えるよ。だから、信じなくてもいいから、心配はしないで」
「―――――――」
「無償の愛を送り続ける、それがあたしのメリットだから!」
あたしの言葉に、アルマジロくんは表情を変えなかった。
喜怒哀楽のどんな感情も映さない表情で、アルマジロくんはあたしを見つめていた。
「アルマジロくん、あたしは貴方のことがすごく好きだよ」
あたしの告白は、風にさらわれて消えていった。




