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アルマジロくん  作者: 魚沢凪帆
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本気の本気

昨日のメリットは、メールで送った。

だけど、昨日はメールの返事も返ってこなかった。


嫌われたんじゃないかって恐怖がこみ上げてくる。

心を冷やすような恐怖は、あたしの身体の自由を奪っていく。


力が抜けていき、気力がなくなる。

あたしにはアルマジロくんが必要だ。


彼はあたしにとっての唯一の存在なのだから。


***********************************


あたしは朝から、アルマジロくんの姿を探した。

教室にも廊下にも、いつもの木陰にも彼の姿はない。


学校には来ているはずなのに、なかなか彼を捕まえることができない。


昼休み、屋上に上がった。

必死で走って、押し開けた扉の向こうには晴天の空が広がっていた。


話し声は聞こえてこない。

周囲に彼の姿はない。


給水タンクに上がる鉄ハシゴ。

逸る気持ちを抑えて、慎重に登った。


「見つけた」


給水タンクの上で、ようやく愛しいアルマジロくんの姿を見つけた。


「ウサコ」


眠っていた彼は、あたしの気配に気がついて起き上がる。

彼はあたしを見ると、いつもは見せない嫌そうな顔をした。


やっぱりあたし、アルマジロくんに嫌われちゃったの?

あたしは、アルマジロくんの横にぴたんと、正座をする。


ひざがアスファルトに当たって痛いけれど、そんなことはどうでも良かった。


あたしの心は昨日から、悲鳴を上げている。


「なんで、無視するの?」


あたしの言葉にもアルマジロくんの冷たい表情は変らない。


「あたしは、アルマジロくんのことが好きなの。好きになってもらえなくても、一ヶ月猶予をもらったでしょう。まだ時間はあるはず。あたしの本気を無視しないで」


アルマジロくんに訴えながら、あたしの感情は爆発した。

ポロポロと涙が零れ落ちてくる。


「好きなの。アルマジロくんのことがすごく、すごく好きなの」


あたしの涙ながらの告白に、アルマジロくんは冷え切った氷のような声音で返した。


「おまえ、好きだ好きだって言うけど、どこまでその言葉信じられるの?」


「ア、ルマジロくん?」


涙がぴたっと止まる。

なぜなら、アルマジロくんの声があたしよりもずっと、傷ついているように聞こえたから。


アルマジロくんの視線はアスファルトを捉えていて、あたしと視線がかみ合わない。


「そんなに好きだっていうなら、証明してみせろよ」


攻撃的な言葉は、アルマジロくんの傷の深さを示しているような気がした。


「アルマジロくんは、ずるいよ」


あたしの言葉に彼が顔を上げる。


なんでだろう

さっきまで泣いていたのはあたしのはずなのに、今のアルマジロくんのほうがよっぽど泣きそうな顔をしている。


「はなから信じようとしていない人に、心の中を証明するなんてできるわけないよ」


「女なんて、俺はどこをどう信じていいかわかんねぇ」


彼の声を初めて聞いた気がした。

彼の心の声が聞こえてきている気がする。


「あたし、信じて、なんて言わない」


「―――――――」


「軽々しく、言えない」


「んじゃ、どうやって、俺を納得させてくれんの?」


アルマジロくんの声は、心なしか震えているように聞こえる。


「アルマジロくんの目にあたしが映ってるかぎり、あたしは貴方の傍にいる」


あたしはまっすぐに、アルマジロくんの目を捉えた。


―――――――受け止めてもらえなくてもいい。

振られるとしても、ちゃんと受け入れる。


だから、疑わないで。

あたしの本気。


「すぐに信じられなくてもいい。あたしは、傍で何度でも好きって気持ち、伝えるよ。だから、信じなくてもいいから、心配はしないで」


「―――――――」


「無償の愛を送り続ける、それがあたしのメリットだから!」


あたしの言葉に、アルマジロくんは表情を変えなかった。

喜怒哀楽のどんな感情も映さない表情で、アルマジロくんはあたしを見つめていた。


「アルマジロくん、あたしは貴方のことがすごく好きだよ」


あたしの告白は、風にさらわれて消えていった。

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