月夜の切なさ
彼はあたしを家まで送り届けてくれた。
夕方の真っ赤に染まった陽の中を、あたしとアルマジロくんは並んで歩いていく。
道にはあたしとアルマジロくんの伸びた影。
背の高いアルマジロくんの影はずっと遠くまで伸びている。
影すら、あたしとアルマジロくんはつり合っていない。
「悪かったな」
家の前で、アルマジロくんはポツリとつぶやいた。
「えっ?」
「さっき、悪かった」
あたしは首を横に振った。
「大丈夫だよ」って笑うと、アルマジロくんもちょっとだけ笑ってくれた。
「なぁ、明日は日曜日だろ。どうやって、メリットを教えてくれんの?」
「あ、のね」
うわっ。
――――――聞かれると思ってなかった。
聞いてもらえないと思っていたから、だから、言い出すきっかけを作ろうと思ってた。
なのに、さきにアルマジロくんに話題を出されて、声が裏返ってしまう。
「あ、したのめりっとね」
「なに、緊張してんの?」
声が裏返ったあたしを、アルマジロくんは可笑しそうに笑っている。
「明日も会うのは難しいと思うから、ケータイの番号を教えてほしいの」
一気に叫んだあたしに、アルマジロくんはケラケラ笑っている。
「おまえって意外に要領いいよな」
「そう――――――かな?」
いくらか、あたしをからかっていたけれど、アルマジロくんはポケットからケータイを取り出してくれた。
「んじゃ、明日な」
番号を交換したアルマジロくんは、片手を挙げてさっさと道を引き返していく。
今から別の女の子に会いに行くアルマジロくん。
胸がキリキリと痛むけれど
「また、明日ね」
日曜日なのに、明日って言える今日は、幸せだよね。
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次の日の夜。
あたしは部屋の窓を開ける。
夜風が、開いた窓から吹き込んでくる。
真っ暗な空に、ポツンと浮かぶ光り輝く月。
あたしはケータイでメールを打つ。
――――――今日、とっても綺麗な月だよ
短く、それだけを打ったメールの返信は意外にも早く返ってきた。
――――――それが今日のウサコのメリット?
――――――うん。綺麗な月夜を見逃さないの
今度はすぐにはメールは返ってこない。
あたしはケータイを窓枠において、空を見上げた。
輝く月夜を、もしかしたら、アルマジロくんも見ているかもしれない。
離れている場所にいるのに、同じ景色を見ている。
そう思うだけで、胸がトキメク。
あたしは相当、重症なんだってわかっている。
ブルル――――――と、ケータイのバイブ音が鳴った。
――――――確かに綺麗だな
あたしは知らず知らずに笑みを浮かべた。
「綺麗だよね」
言葉にした声は、アルマジロくんまで届かないけれど、彼と会話ができているような気がして、すごく嬉しかった。




