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クリスタループ  作者: 紅夜れな
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腕力と頭脳



何もないことに、落胆した。

幸いにも、高校生で人並みの腕力はあるため物理攻撃のきく相手なら何とかなるかもと思った。


「危なかったな~」


初めて目にした魔物に焦り、無我夢中で戦った。

最後の方は危なかったが、保志がいてくれて助かった。

篠宮は、保志が持っている三角定規に目をやった。


「大丈夫か?それ使って、大事な勉強道具だろ」


「いいんです。こんなのでも使わないと、魔物に頭脳じゃ勝てませんから」


言いながら、保志も自分の手を見つめている。

小学生の保志では、篠宮のように腕力でどうにかなる相手ではなかった。

ましてや、ここは学校のない別世界。

魔物を相手に、今まで学んできた知識などなんの効き目もないのだ。そんなことは、魔物を実際に目の当たりにした保志が一番良くわかっていた。


「お前、すげえ頭良いのな?」


篠宮が感心しながら保志に言う。


「勉強は好きです。やれば結果は裏切らないので」


努力すれば、しただけの結果が必ず出せる。保志が勉強を楽しむ理由に、そんな思いが込められているのだ。


「俺には頭の痛い言葉だぜ」


勉強を好きだと思ったことはなく、成績も後ろから数えた方が早い篠宮は、保志の言葉に尊敬した。


「篠宮さんも、塾に通えば?」


「やなこった。俺は帰ってゲームするのが生き甲斐なんだよ」


思いがけない保志の言葉に、篠宮は瞳を曇らせる。ただでさえ学校に行くのが嫌いだというのに、終わってから塾に通うなどよっぽど気が変わらない限り行くことはないだろう。



突然、篠宮は思い出したように声をあげた。


「そういえば、メロルは?」


この森の中に来て、魔物が出てきたまでは一緒にいたはずのメロルが、魔物と戦っているうちにいつの間にかいなくなってしまっていた。


と、茂みの向こうからガサガサと音がする。

また魔物か!?と二人は身構えた。


「しのみー!ほっしー!」

二人の警戒とは真逆に、相変わらずニコニコ顔のメロルが元気にピョンと飛んで姿を見せた。


「メロル、どこにいたんだ!?」

篠宮の心配とは裏腹に、あまりにもケロッと帰ってきたメロルに訪ねてみる。


「魔物がどれくらいいるのか、この森を調査してきたみゅ」

「でかした!んで、どうだった?」


メロルの行動を褒め、その先の言葉に二人は聞き耳をたてた。


「いっぱいいたみゅ!」


「へ!?」


元気いっぱいに伝えられた言葉は、あまり期待していないものだった。二人は驚き、顔を見合わせ愕然とする。


「もっと向こうの、小さな泉がある辺りにいーっぱいいたみゅ」


メロルは二つの情報をくれた。

もう少し先に行けば、小さな泉があること。

そしてそこには、さっきのような魔物が沢山いるのだと。


「嘘だろ・・・」


「・・・どうしますか?」


考えている篠宮の横で、保志が恐そうに訪ねた。

すると、メロルは再び口を開き始めた。


「魔物を倒さないと、邪神メデスには辿り着けないみゅ」


言葉を聞いた篠宮は、はっとした。


「そうだよ!RPGの定番じゃないか!」


「し、篠宮さん?」


急に語りだした篠宮に保志はついていけなった。


「いいか、保志!邪神メデスは、いわばラスボスだ!ラスボスを倒すためには?」


「・・・自分達のレベルを上げる?」


「そうだ!その辺のザコな魔物を倒しまくって、どんどんレベルを上げるんだよ!」


語りながら、何故か篠宮の瞳は希望で満ち溢れていた。

嬉しそうな篠宮に、保志は気づいていた。


「それで、メデスを倒して自分が本当の勇者になると?」


「そのとおり!!」


ビシッ!と尖らせたその指を保志に向かって指した。


「保志!俺とお前で、本物の勇者になってメデスを倒そうじゃないか!そんで、行方不明の王女様も探し出す!」


勇ましい篠宮の発言に、メロルはその場でピョンピョン跳ねて喜んだ。


「さすがだみゅ!がんばるみゅ!勇者様がこの世界を救うんだみゅ!」


ヤル気満々の篠宮は、どや顔で誇らしげに腕組みしている。そんな彼に冷やかな視線をおくる保志は、冷静に言った。


「魔法も武器もないのに?」


篠宮はそのまま固まった。

一番の欠点をつかれた気がして、一瞬で心細くなった。


「大丈夫!この拳でなんとかしてみせる!」


言いながら拳を作ってみせる。

強気な事を言ってはいるが、その顔は未来を見据えていなかった。


「なにか、武器とかないの?メロル」


いつでもにこやかなメロルに、保志は聞いてみる。


「ないみゅ!ここは、それぞれの種族が集まる場所なんだみゅ、魔法使いも剣士も、生まれ持った力で成り立つんだみゅ」


メロルは説明した。

メロルの言葉に、保志は反応する。


「それって、どこかに魔法使いと剣士が存在してるってこと?」


「そうだみゅ」


一筋の光が見えた気がした。

勢いを失いかけていた篠宮が再び元気を取り戻した。


「よしっ!その魔法使いと剣士を見つけ出して、俺たちの仲間にしてやる!!」


「仲間になってくれるかはわからないけど、僕たちだけよりはかなり頼もしい存在にはなりそうだね」


ようやく笑顔になってきた保志の瞳にも、これからの戦いを前向きに考えられる素振りが見えてきた。


「よし!そうと決まれば善は急げだ!その、魔物がいっぱいいる泉に行ってみよう!」


篠宮の合図で、3人は目的地に向かって足を運び出したのだった。


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