ープロローグー
静かな時間が一瞬、通り過ぎた気がした。
大きな邪心の塊を前に、凛と立ち向かう彼女を中心とし、戦士たちの額からは一筋の雫が流れ落ち、その重たい空気の中に耐えようと、ごくんと唾を飲み込み息を整えている。
「もう、お終いよメデス。」
戦士たちの中心で、真っ直ぐな青い瞳を向けながら彼女は叫び両手の平に浮かぶ水晶を眩しく光らせていた。
しかし、その光が闇を包み込んだと思った矢先、その力に反発する何かが戦士たちに反射してその力を静止た。
「なっ・・・」
戦士たちは、その力の強さに驚きを隠せないでいる。今まで旅を重ね今日の為に力をつけてきた。全ては、この世界を暗黒の闇に陥れようとしている邪神メデスを消滅させる為だ。
しかし、その力が目の前で簡単に消えてなくなってしまった。
「ははは、お前たちの力はその程度か」
まるで、もう少し楽しませて欲しかったと言っているかのようにメデスは笑いながらそう吐き捨てた。
「いえ・・・まだよ」
水晶の力を解き放っても効き目がないことを知った彼女は、何かを決心したかのように再び熱い眼差しをメデスに向けた。
彼女の額には、見たこともない不思議な形の印が赤く浮かび上がっていた。
「お止めください!!ミルフローラ様!!」
彼女を囲んでいた戦士たちの一人が、自分の武器であろう剣をその場に捨て、全力で彼女を止めようと両腕をいっぱいに広げて目の前に立ち塞がった。
「これで良いのよ」
額の印を解放させながら、彼女は戦士たちに優しい眼差しを送り告げた。
「大丈夫、信じているわ」
言ったと同時に、彼女はこれまでにない大きな白い光に包まれてメデスの方へ飛び込んで行った。
「な、なに?!!」
メデスはそのふしぎな力に身動きが取れず、そのまま彼女の光と共に遥かな時空へと飛び散ってしまった。
「ミルフローラ様ー!!」
彼女の残像を追いかけようと必死で追いかけるも、すでに戦士たちの叫び声がその空間に虚しく響いているだけだった。