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TS村娘は冒険者になる  作者: りゅうせい
第1章トルクの村
5/24

村娘は狩りをする

 

 12歳になった。

 最近、身体の変化に戸惑っています。

 ここ2年ほどで身長は10cm以上伸びている。そして、同時に胸もしっかりと成長してしまった。

 1年ぐらい前まではあまり存在を主張しなかったのに、今は服を着替えるたび、その膨らみと弾力が存在を主張する。大きさは身長相応の大きさだと思う。手のひらでちょうど収まるぐらいのサイズだ。


 前世のあたしの記憶だとごく普通に女性の胸は好きだったと思う。巨乳、貧乳、適乳オールオッケーだ。

 でも、自分の胸に乳が付いていてもあまり嬉しくないものだなと、今は思っている。

 服を着る時は気をつけないといけないし、外では胸への視線にときどき気づいてしまう。近所の男の子、リグット君も顔をそむけながらもちらちらと見てきやがる。


 まあ、胸の変化はまだ全然耐えられる。

 それ以上に辛いのが、1年ほど前からやって来た女の子特有のあの日である。

 まじで血が出るし。めっちゃ気持ち悪い。お腹の痛さと恥ずかしさで最悪な気分が続き、毎月これを繰り返すなんて、女に生まれたことを本気で呪ったものだ。


 そして、今日もその日がやって来てしまいました。

 朝から身体がだるかったが、下手に丈夫な身体は朝の畑仕事をやり遂げてしまう。

 お昼前、家に帰るとあたしの足跡に赤いものが混じっていて、すごく焦った。

 無理をしたせいで、午後は完全にダウン。

 ちなみに、生理用品なんて便利なものはない。母から手渡されたのはわずかな綿と普通の布。これを繰り返し使えということらしい。しっかり洗って使っているのだけれど、衛生面がちょっと怖い。

 この1年間でちょっとだけ慣れたけど、憂鬱な気分になる。



 夕方になると、少し気分がましになったので家の周りを散歩する。

 おや、隣の家の影からこっちを見てるのは近所の男の子リグットかな。


「おーい、リグー。あたしに何か用事?」

「べっ、別にー用事なんて無いし。……ちょっとお使いのついでに様子を見に来ただけだし…」


 ニヤニヤ

「ほほーぅ。あたしを心配して来てくれたんだぁー」

「ち、違うし! 心配とかしてないし」

「えー、じゃあー何。のぞき見?」

「なっ、のぞき見なんてしてるわけないだろ!」

「ははは、冗談だよ。顔が真っ赤になってるよ、リグット」

「お前が変なこと言うからだろ……。あ、そうだ。これ、余ったからついでにやるよ」

「ん、これデミイチゴ。いいの?」

「ああ、こんなもんいつだって取れる。じゃあなー」

「あ、ちょ……行っちゃった」


 このデミイチゴ。取るのは結構大変なはず。

 本当は今日、午後からはジョセ兄とリグットとあたしで狩りに行く予定だった。

 たぶん、あたしの体調を心配して取ってきてくれたのだろう。

 素直じゃない奴め。


「お、リアナ。もう調子は悪くないのか?」

「あ、ジョセ兄。帰って来たんだ。今日は一緒に行けなくてごめんね」

「別にいいよ。近場しか行ってないから、2人でも問題無い。

 あ、そのデミイチゴ……」

「そうかそうかー、リグの奴。なるほどねー」ニヤニヤ

「何、そのニヤニヤ笑い…」

「いや、リグの奴。わかり易いなーて。どうりでデミの木を一生懸命登っていた訳だ」

「へー、そりゃ大変だったね」

「えー、それだけかよー」

「だって、あたしがお礼を言う前にさっさと帰って行っちゃったもん。あたしははっきり言わないかぎり、気持ちを察してあげるほど優しくはないもんね」

「あー、リアナらしいなぁ」


 うん……リグットがあたしのことを意識しているのはなんとなく知っている。

 近所で年も近いから、昔からよく遊んでる。しょっちゅう喧嘩もしていたのだけれど、最近は喧嘩をしなくなった。代わりに、あたしの読書や自己練に付き合うことが増えた。

 時々、顔を赤らめて口をパクパク開けて何か言おうとするものの、結局何も言えずに終わることもある。とてもわかり易い。


 正直、もし告白されてもちょっと困る。

 いやだって、前世男だったからね。男と手を繋いだり、イチャイチャしたり、キスしたり。

 ……う、想像するだけでもきつい。

 やっぱり前世の記憶は男との恋愛を拒否してしまう。

 身体に感情が引っ張られてしまうこともあるけれど、前世の感情や価値観が消えてしまったわけでもない。


 だが、かといって女の子とつきあえるだろうか?

 たまに近所の綺麗なお姉さんと川で水浴びをすることがある。もちろん女同士なので、裸を無防備に晒すし、結構スキンシップも取ってきたりする。

 若干おっぱいにときめいたりもするが、前世ほど興奮はしない。

 それに同性同士の恋愛には躊躇する理由もある。

 前世でも同性同士は少数派だったが、この世界ではそれ以上に偏見が多いようだ。

 人権なんて概念もないため、かなりリスキーな選択である。

 それに、この村では男女間での差別は見られない(女が狩りに行っても、心配されることはあっても咎められることは無い)が、本を読む限り、この国自体(特に貴族)は男性優位の社会である。なので、女の子同士で付き合うのは世間からの当たりが強いかもしれない。


 あたしはこの先1人だけで生きていくのだろうか?

 そんなことを考えていると気分も憂鬱になってくる。これは、生理中特有の不安定な精神ってやつだろうか。

 ダメだ……考えすぎるのはやめよう。




 ――――


 それから3日後、生理痛も収まったのでジョセ兄とリグットとあたしの3人で狩りに行くことに。

 2年近くロブの元で地道に訓練してきたかいもあって、あたし達は一通り武器を扱えるようになり、闘気術も冒険者登録ができる程度の力は身につけることができた。

 そして、1ヶ月前ようやく森へ狩りに行く許可をもらうことができた。

 トム兄はあたしたちよりも早く許可をもらい、同年代の他の友達と狩りに行っている。あまり、頻繁には行っていないようだが。


 リグットとあたしは二人共弓とナイフを装備。ジョセ兄は槍を担いで出発する。

 あたし達は村から数百mの範囲で狩りを行い、それ以上遠くへは行かないように言いつけられている。

 村の近くまで来る魔物はあまり多くなく、来ても小型の魔物しかやってこない。

 数十cmの小型の魔物は人間を見ると攻撃はせずに、すぐに逃げてしまうため、あたしの『見切り』は出番がない。

 足音を立てないように歩き、弓で獲物を仕留める。


 もし、中型の魔物が現れたらジョセ兄が槍で仕留めることになっているけど、今のところ出くわしたことがない。


「なぁなぁーそろそろ少し村から離れてもよくねーか? ここじゃあ小さい魔物しか出てこないだろ」


 ジョセ兄がこう言うのも無理はない。この1ヶ月出番が無いため不満も貯まるだろう。


「ダメだよ。ロブから目印のある位置より遠くへ行かないように言われてるじゃない。バレたら狩りに行くの禁止されちゃうよ」

「大丈夫だって。森の中なんだし、ちょっとぐらいバレやしないって」

「うーん、でもなぁ……」

「頼むよ-。こんなんじゃ張り合いがないよー。リグも小物ばっかりじゃつまらないだろ?」

「え、そうだけど……」


 コソコソ「リアナにいいとこ見せるチャンスだろ」

「な、いいだろ?」

「お、おう。そうだな……」


 うーん、2対1じゃあ仕方ないかな。というか、あたしもちょっと中型の魔物とか相手にしてみたい。ちょうど言い訳もできる状態だし……。


「しょうがないなぁー。ちょっとだけ行ってみよっか」

「そう来なくっちゃ。っていうか、本当はリアナも中型の魔物を相手してみたいんだろう」

「ど、どうかなー」




 村は100ヘクタールぐらいの楕円形の土地を柵で囲み、その内側で作物を育てている。

 柵からすぐ外はすべて森になっており、街の方角へ道が一本だけ伸びている。

 また、柵から200mの地点で村をぐるっと一周するように木々に目印が付けられていて、森に迷うのを防いでくれる。狩りの初心者はこの目印の内側で狩りをすることになっている。

 他にもそれ以上遠くへ行く人のために、村から八つの方向に対しても直線状に結ぶ目印が付けられている。


 あたし達は村から北西の方角に向かう目印をたどることにした。

 東の森の中心部からは離れる方角だし、沢や薬草の群生地などのポイントも無いため、この方向へ狩りに行く人は少ないと踏んだからだ。


 目印は色を付けた紐を枝などにしっかりくくりつけているため、ちょっとやそっとで消えたりはしないようになっている。

 緊張しながら歩くこと10分。多分いつもより10倍ぐらい村からは離れたと思う。

 だけど、現れたのは小型の魔物ドーバーネズミが一匹だけ。

 あたしとリグの2射でしとめる。


「やっぱり、森の中心部から反対方向だと魔物も少ないのかなぁ」

「かもなー」

「引き返すかー」

 ジョセ兄とリグもすっかりやる気を無くしてしまった。


 引き返してすぐ、困ったことになった。

「やば! 隠れて」

「どうした?」

「村の方から人が来る」

「え、やばいじゃん」

「なんとか、隠れてやり過ごそう」


 茂みに隠れてしばらくすると、やって来たのは村の中で見たことのあるおじさんが2人。

 のんきに晩ご飯の話をしながら通り過ぎていった。


「ふぅー緊張した。さっさと帰ろうぜ」

「賛成―」

 帰りはジョセ兄を先頭にして、早足で帰る。


「あれ? ジョセ兄、来るときって目印の色、あんな色だったっけ?」

「え? いや、覚えてないけど……ここまで目印は一種類しか無かったじゃん」

「うーん、おかしいなぁ……」


 歩くこと10分。

「あれ? おかしいな。もう村に着いてもいい頃なのに…」


 気のせいか、森の木の密度も高くなっているような気がする。

 そして、唐突に洞窟が現れる。ちょうどそこで、目印もきれてしまった。


「なんだろう、この洞窟?」

「ていうか、やっぱり目印間違ってたじゃん。どっかで違う目印をたどってしまったんだよ」

「えーそんなの分かるわけないよ」

「あれ、なんだか洞窟の方から変な音が……」

「あーあ、これじゃあ帰るのが遅くなって絶対叱られるよ」

「なんだよ! リアナだって遠くへ行くこと賛成したじゃん」

「目印を間違えたのはジョセ兄の方じゃん!」

「目印を間違えたのはリアナが隠れろって言ったせいじゃん!」


「……グヒ」


「「「……え?」」」


「ちょっ、リグットなに変な声出してるの」

「いや、俺の声じゃないよ」


「グ、グワオ“オ”オオオオオオオ!!」

 洞窟から頭を見せたのは巨大な鼻と巨大な牙。

 体長3mを超える大牙イノシシ。中型どころか大型に分類される魔物だった。



 ――――


 ちなみにジョセ兄の弓の腕はまっすぐ構えているのに後ろや横に矢を飛ばしてしまうぐらい下手くそなので、ジョセ兄は弓を使うことを禁止されている。


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