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TS村娘は冒険者になる  作者: りゅうせい
第1章トルクの村
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村娘は狩りの訓練をする

 この世界には魔物と呼ばれる危険な生き物が存在する。

 その為、森で囲まれたこの村は住居を丈夫な柵で囲み、さらに畑も簡素な柵で囲んでいる。

 畑を囲む柵は特殊な魔法がかけられており、小型の低ランクの魔物を限定して侵入を確実に防ぎ、畑を守っている。

 そして、この柵を超えられる中型の魔物は人の手で間引き、生活しているのだ。




 あたしは10歳になったことで身長もだいぶん伸びてきた。今は140cmぐらいかな。

 とはいえまだまだ身体は子供で、水面に映る自分の姿を見ても、まだまだ幼い顔立ちをしてる。赤い髪と少し日に焼けた白い肌、目や鼻の形も綺麗で、自分で言うのもなんだが、将来は美人になりそうな気がする。

 体つきも女性らしい成長はまだ見られない。

 正直、女性らしい成長はあまり来てほしくないと思っているけど、そうはいかないだろう。

 確か女の子は10歳ぐらいから第二次性徴が始まって、胸が膨らむ等の女性らしい身体の変化が起きると聞いたことがある。

 今はあたしの胸もわずかにふくらんでいる程度だが、これから成長とともに大きくなってくるのだと思うとなんとも言えない気分になる。


 だけど、身長がある程度伸びたら、やりたいと思っていたことがある。

 ゲームやファンタジー作品が好きな人間なら一度は憧れたことがあるだろう、ハンティングすなわち狩りだ。

 この村は周囲を森に囲われているため、狩りのできる人間も多い。

 父も時々、狩りに出かけてうさぎ等をとってくることがある。まあ、半分以上一匹も取れずに返ってくるので、あまり上手ではないのかもしれない。


 さっそく父に狩りをしたいとお願いしてみと…。


「女の子なんだからそんな危ないことしなくてもいいじゃないか? そうだ、裁縫なんかを習って綺麗な洋服を作ってみるのはどうだい」

 とあまり乗り気でない様子。

 どうもあたしに狩りをさせたくないようだ。

 とはいえ、裁縫なんて趣味じゃない。

 女だからって狩りをさせてもらえないのもいただけない。ちょっと癇癪を起こして要望を通してやろう。


「うぇーん…ぐす……うぇーん…ぐす……なんで…なんでダメなのよおー! いやだー! ぜったいにいやだー! …狩りに行きたいよおー!…うぇーん…ぐす…」


 本能のまま思いっきり泣き叫ぶあたし。


「わ、わかった。狩りに行けるようにするから……な、リアナ。もう泣き止んでくれ……」

「え、本当。ありがとう。お父さん大好き」


 精神年齢は30歳以上だけど、恥や外聞なんか忘れちゃったもんね。





 翌日、父に言われてやって来たのは村一番の狩人ロブの家。

 なんでもこの村では狩りに出たい者はロブの指導を受けて合格をもらわないと狩りにでてはいけない決まりになっているらしい。

 そもそも父の許可はいらなかったじゃん。

 なんでもロブは元冒険者だったらしく、若い頃は国の中でも指折りの実力者だったのだとか。

 ロブの家に着くと私以外にも数人がいた。彼らもロブの指導を受けるようで、大人や子供など年齢もバラバラだ。

 その中にはジョセ兄とトム兄もいた。


「お、リアナも来たか」

「大丈夫かリアナ、ロブに怒鳴られたら泣いちゃうんじゃないか」

「泣いたりなんかしないよ。でも、ロブってそんなに怖いの?」

「ああ、睨まれただけでおしっこちびりそうになるぜ」

「はは、実際ジョセはちびったからな」

「なっ!……ちびってねーし!」

「冗談だよ。でも、ロブは顔は怖いけど教え方は丁寧だ。ロブに教わってから俺って結構強くなったんだぜ」


 話をしている内に家からかなり怖い顔をした筋骨隆々の40代ぐらいのおっさんが出てきた。この男がロブらしい。


「おーし、集まったな。今日は新しいのもいるから初めから説明しながらやってくぞ」


 そうして、ロブによる訓練が始まった。

 最初は身体を伸ばしたり捻ったりして身体をほぐすように言われる。

 最初の方だけ全員同じメニューだったが、すぐにそれぞれ違うメニューを始める。

 村の周囲を走って体力を付ける者。

 岩を担いで力を鍛える者。

 半数ほどは森の中へ入っていった。


「あれ? あの人達ってロブの訓練を受けてるのに森に入る許可をもってるの?」

「なんだ、知らないのか? 何人かは狩人になる合格をもらっているけど、森の中層部で狩りをする許可をもらうために訓練してるんだ」


 なるほど。

 この世界では森は中心部に行くほど強力な魔物が多くなる。そして、浅層、中層、深層でがらりと生息する魔物が変わる場合が多い。

 この村からは東の方角が森の中心部に当たる。

 村の周囲は浅層で、村から東に半日ほど歩くと中層部に入る。わざわざそんなところまで行くのは、貴重な素材が手に入るからだ。


「よし、お前がオルジんところのリアナだな」

 いつの間にかロブが近くまでやって来ていた。近くで見てもよけい厳つい顔をしている。


「なんだ、俺の顔に何かついてるか?」

「いえ、なんもないです」

「そうか、まあいい。まずは体作りからはじめる。走り込みの後、木刀の素振りだ」


 あたしが子供であることもあってか、ほどほどのハードさで訓練を行う。

 体力だけでなく、木刀の素振りでは力を入れるポイントや重心の位置などもアドバイスしてくれる。


 はじめは木刀に振り回されるような素振りになってしまっていたが、訓練を繰り返す内にかなり様になってきた。

 指導内容は思っていたよりも理論的で驚いている。

 この国全体はどうなのかわからないけど、子供への教育といいこの村は結構進んでいるのかもしれない。



 ――――


 訓練をはじめて半年ほどが経った。

 体力もついてきて、走り込みや素振り以外にも模擬戦や弓の扱いも教わるようになっている。

 兄達や他の村の子供とも模擬戦を行う。加護『見切り』があるせいか、同年代相手だとほとんど負け無しだ。

 だけど、ロブと模擬戦すると、あっという間に加護がバレた。しかも、全然通用しない。

『見切り』は攻撃を受けた時に思考速度と俊敏性が強化されるわけだけれど、ロブは常にそれ以上の俊敏性と反応速度を有しているため、まったく歯が立たないのだ。

 とんでもない化物だ。

 加護がバレたことについては、あまり問題にならなかった。加護じたいそもそも珍しいものではないし、教会に行かないと確認できないため、あたしみたいな子供は加護を無自覚で使ったりすることはよくあるそうだ。

「間違いなく戦闘用の加護だぞ。よかったな」なんて言われたぐらいだ。

 それからは、あたしはロブや他の大人相手に模擬戦でしごかれることに…。

 虐待かな?




 数日後

 今日は闘気術を教わることになった。

 なんでも、ある程度体を鍛えると、体にごく僅かだが魔力を纏うようになるらしい。この体に纏った魔力のことを闘気ともいうらしい。

 長い間体を鍛えれば自然と身につくものなのだが、闘気を感じ取る術を身につければそれよりも短期間で闘気術を身につけることができる。また、闘気を感じ取り、意識して動かす方が上達も速くなるそうだ。


 さっそく瞑想を始める。

 ジョセ兄とトム兄も一緒に闘気術を教わる。

 あぐらをかいて座り、目を閉じる。

 そして、じっと動かないように指示される。

「動けば動いた瞬間木刀で叩くから注意するように」

 座禅かな?


「いいか、お前たちはここ数ヶ月体を鍛えたことによって徐々にだが体に闘気が纏うようになってきた。ただし、それは極僅かなので、今のお前たちに感じ取ることはできないだろう。

 なので、まずは俺の闘気を感じ取る術を身につけろ。それから徐々に感覚を鋭くしていって、自分の闘気を感じ取ることができればこの授業は合格だ」


「よっしゃー! やってやるー」

「動くなと言っただろ!」バシーン!

 さっそくジョセ兄が叩かれている。

「イテー」

 面白いのでからかってやろう。ロブからは見えない位置でニヤニヤ笑いながら舌を出して見せると、ジョセ兄は悔しそうに顔を歪める。うっふっふ。

「リアナ、お前も動くんじゃない」バシーン!

 痛い……。



 その後、一人ひとりに対してロブは手のひらを背中に触れないギリギリの位置に近づける。

「今俺は手のひらに闘気を集めている。集中してそれを感じ取るんだ」


 ……お、何だこれ? 

 触れられていないのに背中に奇妙な感覚を感じる。

 普通、人間が皮膚で感じることのできる感覚は温度や痛覚、痒みや圧力などである。

 今、あたしはこれらのどれにも当てはまらない奇妙な感覚を感じている。これが闘気の感覚?


「全員感じ取ったか。次は闘気を少し弱めていく。

 ランダムで闘気を当てて行くので、闘気を感じたら来たと答えるように」


 うーん、分からない。

 とらえどころの無い感覚なので、手を離された後、どんな感覚だったかも思い出せなくなってしまう。


「リアナ、今闘気を当てたが気づかなかったか?」

「え! うーん…気づかなかった」

「もう一度違うタイミングで闘気を当てる。集中するんだ」


 その後、10回近くやってようやくあたしは弱めた闘気も感じ取ることができるようになった。ジョセ兄とトム兄がすぐにできるようになっていたのがなんか悔しい。


 それから、自分の闘気を感じ取ることができるようになるまで、ジョセ兄とトム兄は4日ほど、あたしは1周間かかった。


 後は毎日少しずつ瞑想を行い、闘気への感覚を鋭くしていくだけだ。

 闘気術は急に上達することはできないものだそうだ。こつこつ努力するしか道はないという。


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