村娘は素人に呆れる
ごめんなさい。以前水曜と土曜に投稿と書きましたが、だいぶん遅くなってしまいました。
今週は2回投稿できそうです。
カンッカンッ
1mぐらいの杭を等間隔で地面に打ち込み、その間に特殊な糸を張り巡らせる。
朝っぱらからあたしはこの魔物避けの柵を設置する仕事にせいをだしている。
相方のクリシアが怪我の治療中なので、あたしは団長から柵の設置の手伝いをするようにいわれ、こうして朝から働いているわけだ。面倒だけど、クリシアが動けない中サボるわけにもいかない。
柵の設置や補強はトルク村でもやったことがあるので、手際よく勧めていく。
そうこうする内に、例のFランク4人組の内の1人が柵の材料を運んできた。
「おい、遅いぞ!」
「そんなー、この杭、結構重いんだよ」
「泣き言言わずにさっさと次のを運んでこい!」
「えー、もう無理。こんなの俺の仕事じゃないよ……」
ガッ!
「痛いっ……やめて、脛は蹴らないで……」
こいつは例Fランク4人組のリーダーをしている男で、名前はなんだっけな。ジョブとかそんな名前だったかな。
まあいいや。こいつらも見張りは任せられないということで、柵の設置作業に回されることになった。あたしはこいつと組まされてしまったので扱き使ってやっている。
柵には魔物避けの草の繊維を含ませて、なおかつ特殊な触媒に漬け込んだ糸を使用する。この糸は畑を囲む柵の間に張り巡らされて、最後には大きめの魔石と繋がれる。
魔石は魔物を討伐すると手に入れることができる素材でいろいろな用途に使われる。今回の場合は魔法を長持ちさせるために使われるようだ。ここに魔物よけの結界魔法を使うことで、張り巡らせた糸により柵に結界のような効果をつけことができる。
この結界は低ランクでかつ一定以下の大きさの小型の魔物なら、侵入を確実に防ぐ効果がある。
小型の魔物というのはほとんどがFランクかランク外の魔物で、ゴブリンの半分以下の大きさの魔物をいう。よく出てくるのはドーバーネズミというドブネズミに似た魔物。小さくてすばしっこいため、討伐がとても面倒くさい。こういった小さな魔物から人の手だけで畑を守るのは難しく、柵無しでは作物は作れない。
昼を過ぎた頃、切りの良い場所まで柵の設置が完了した。50mぐらいは設置できたかな。
一仕事するとなんだか気分が良くなってくる。仕事って、はじめはやる気がでなくても一旦やり始めると、結構やる気が湧いてくるもんなんだね。
軽く昼食を済ませると、森の中に狩りに行っていた組が帰ってきた。
すぐに団長に呼ばれて行くと。
「よし、今度は交代で俺たちが狩りに行くぞ。お前たちも来るんだ」
お、どうやら村に残る組と森へ狩りに行く組とで交代することにしたらしい。
集まったのはDランクが3人と例のFランクが4人、それに団長とあたしで合計9人。この合同パーティーで森の魔物の討伐をするようだ。
Fランク4人は足手まといにならないのかと聞くと、ついでだから冒険者としての技能と度胸を鍛えるのだとか。
「私達のこと足手まといだって!」
「きぃー! 自分だってFランクのくせに」
あ、本人らに聞こえてしまった。まあどうでもいいや。
森に入ってもしばらくは魔物が出てこない、近場の魔物はほとんど討伐してしまったようだ。近くにあったゴブリンの巣もしっかり潰したらしい。
森の中を歩くこと20分。だいぶん村からは離れたが、木々の密度は低く視界の見通しがよくて、まだまだ森の外縁部であることがわかる。
あたしの育ったトルク村では村から少し離れると、鬱蒼とした森へと変わる。木の一本一本の大きさもかなり違った気がする。
それに対して今いる森の外縁部は目印があればほとんど迷うことは無いし、出てくる魔物も限られている。だけど、その分だけ採取できる薬草や素材の種類も少ないそうだ。
休憩を入れながらさらに数十分歩く。途中先輩のDランク冒険者が換金できる薬草や森のなかで迷わず進む方法などを教えてくれる。ほとんど知っていることだったけど、素直に聞いておく。例のFランク4人組はたぶん知らないだろうし。
って、4人共全然聞いてないし。
「おい、ちゃんと聞いているか?」
「え……いや、俺たち魔物の討伐できるから、薬草のことなんか覚えたってなー」
「うるさい! ゴブリン一匹の討伐でやっとの癖に生意気言うな! ちゃんと聞け」
ゴツッ!
「痛い……」
生意気言って先輩に頭を殴られるリーダーの男。この男はアホかどMのどっちかだ。
「ジェコル痛かったねー」
わざとらしくこの男の頭を撫でるツインテールの女。
「あ、またレナったらジェコルにベタベタ触ってる。キィー!」
よく金切り声をあげる短髪の少女。
「フォリラだって手を繋いでるわよ。ってこの子またボーとしてる」
ジェコルの手を繋いでいるのはウェーブがかった髪型の少女。ちょっと天然っぽい。
あまり関わりたくないので名前を覚える気はない。
でもこいつらってどういう関係なんだ? どうも3人の少女はこの男が好きなようだけど、どこがいいのかさっぱりわからん。顔は整っているみたいだけど、頭は悪そうだし、度胸もなさそうだ。
そうこうする内に先行していたDランクの冒険者が戻ってきて、団長に報告する。
「この先にゴブリンが2匹いる。たぶん昨日取りこぼしたやつだ。どうする?」
「そうだな、Fランクのガキどもに経験を積ませたい。悪いがお前らは横から回って退路を塞いでやってくれ」
「わかった。任せてくれ」
「よし、聞いたかお前たち。この先のゴブリン2匹だが、お前たちだけで討伐しろ」
「お、おう。や、やるぞ」
「こ、怖いよー」
「だ、大丈夫よ。やれるわ」
「えい、えい、おー」
「あれ? あたしはどうするの?」
「お前も一緒にやれ。ただ、お前が2匹とも倒したらつまらんから、4人の後ろからついていけ」
「わかった」
・・・・・・
「い、行くぞー!」
先行するのはリーダーの男。
体は緊張でガチガチに固まっていて、ガサガサと結構な音を立てて歩を進める。
「グギイイー!!」
「うわあっ!」
こちらも向こうも同時に発見したようだ。あたしの方からも緑色の魔物が2匹見える。
慌ててツインテールとウェーブヘアの2人が弓を構える。
ちょっと焦りすぎじゃないかな……。
あ、外した。
ゴブリンは2匹とも激しく棍棒を振り回す。
男と短髪の2人が剣を構えて退治しているけど、びびって間合いから倍以上離れている。
「グギイ!」
相手が怖気づいているのを見てすかさず飛びかかるゴブリン。
「うわあっ!」
「いやあー!」
すぐに背を向けて逃げ出す2人。おいおい……。
「キャー!」
「こっち来ないでー!」
後衛の2人もすぐに逃げ出す。あ、ウェーブヘアが転んだ。
「いやー! 助けてー!」
ダメだこりゃ。
仕方ない、助けるか。
まずは弓でウェーブヘアに近づいたゴブリンを狙う。近距離で胴体を狙えば普通外すことは無いんだけどな……。
後はナイフで喉をえぐり、止めを刺す。棍棒なんて振り切った後、スキだらけだから短いナイフでも余裕なのに……。
「す、すごーい。あなた強いのね」
いや、君らのパーティーの根性がなさすぎるだけでしょ。
ゴツッ! 「痛い……」
あ、またリーダーの男が殴られてる。
「帰ったら訓練場でもう一度鍛えてやる。それまではお前たちに魔物の討伐は受けさせん」
「そ、そんなー」
なんか打ちひしがれているけど、今の状態だと一緒に討伐に行っても全然訓練にもならないだろうね。しっかり鍛えてもらえばいいよ。
その後は先行する先輩が低ランクの魔物は仕留めてしまうようになった。
こっちにはもう回してくれないようだ。暇だな……。
そうしてちょっと気を抜いた時だった。
「む、あいつらどこに行った?」
「え……あれ、いない!」
団長が先行する冒険者の報告を聞いているタイミングでFランク4人組がこっそり抜け出して別行動を始めたようだ。
「くそ、何考えているんだ。すぐに探すぞ」
慌ててみんなで周囲を探し始めが、ちょうど周囲が茂みの多い場所でなかなか見つからない。
あたしも探しに行こうとしたところで、首根っこを掴まれる。
「おまえは俺と一緒だ。二次遭難したら困る」
「でも……」
「他の奴らはこの辺の地理に明るいが、お前はここに来るの初めてだろ?」
確かに、あたし1人で行動したら迷う可能性がある。ただ、村のだいたいの方角はわかるし、1人で帰れる自信はある。それを言っても信用されそうにないので、今はおとなしく団長と行動しよう。
あの4人の癖に上手く行動したようでなかなか見つからない。
「くそ、生存を第一に逃げ方と隠れ方だけを徹底的に鍛えたのが不味かったか……」
なるほど、今までもクランで4人を鍛えてきたのか。鍛え方がちょっと極端だったね……。
その後、森の中を歩き回るけど、日が沈むまでに見つかることは無かった。
周りが暗くなる前になんとか村に帰還する。
もしかしたら村に戻ってきているかも、と思ったが、やっぱり戻ってはきていなかった。
というわけで明日、日の出と同時に4人の捜索を開始することになった。
まったく面倒なことをしてくれる。




