村娘は絡まれる
1部から最新話までのリアナのセリフと地の文を一部修正しました。読んだ印象はそれほど変化無いかも。
セリフ:できるだけ中性的な口調で時々女性っぽくなるように調整
地の文:説明口調で、時々男性っぽくなるように調整
今後は週2回ぐらいの投稿になります。
まだ早い時間(お昼前)なのにクリシアによって無理やり起こされたあたしは、と冒険者ギルドに連れて行かれた。
昨日冒険者登録したばかりのあたしはFランクの冒険者で、クリシアも一週間前に登録したばかりで、まだFランクの冒険者だそうだ。Fランク同士のパーティーなので、受けられる依頼もFランクだけである。
ギルドの窓口の正面の壁には依頼書がいくつも張られており、Fランクの印がついたものもいくつかあった。
「へーいろいろ張られてるんだね」
どれどれ、楽そうですぐ終わるのとかないかな……。
「んーダメですわ、リアナ。良い依頼は全然残っていませんね」
「え、なんかいろいろ張ってあるけど?」
「それらは全部誰も手をつけない張られっぱなしのクズ依頼ですわ」
「え、そうなの?」
そう言われて、よくよく読んでみると、かなり安い依頼料に対して、かなり遠方に自生している特定の薬草の採取であったり、小型の魔物を数百匹狩ってくる内容であったりして手間のかかるものばかりだ。
「こんな時間ばかりかかる依頼では、ランクを上げるポイントもお金も貯まりませんわ」
「確かにそうだね。でも、なんでこんなのしか残ってないんだろ」
「それはあなたがいつまでも寝ていらっしゃるからでしょ。新しい依頼は早朝に張り出されますの。早く起きなくちゃ良い依頼はとれないのよ」
楽をしたいなら割のいい依頼を受けなくちゃいけない、割のいい依頼を受けるためには朝早く起きなくちゃいけない。
……詰んだな。
「あたし、冒険者になるの……無理かも」
「ちょ、ちょっと。こんな初期の段階でくじけないでよ」
「あたしもう体が昼までに起きられない体になっちゃてるんだよね」
「昼までに起きられない体ってなによ……。はぁ、仕方ありませんわ、今日はクランに行きましょ。あそこなら期間が数ヶ月単位の依頼とか受けていたりするから、何かしら仕事がもらえるかもしれないわ。クズ依頼よりは報酬もましなはずよ」
ギルドからクラン『銀の風』に移動。
銀の風は団員数40人ぐらいの大型クランだ。あたしもいつの間にか所属することになってしまった。1階は酒場になっていて、今日は2,3人の団員が座っている。昨日みたよりも少ない気がする。
「あ、ロイドさん。この間はありがとうございました」
「おや、クリシアか。たしかパーティーを組む相手が見つかったそうだな」
「はい、おかげさまで、今までお世話になりました」
「いやかまわないよ。こちらも助けられた。えっと、君がクリシアのパーティーメンバーかい?」
「あ、はい。リアナといいます」
「そうか、クリシアは頑固なところもあるけれど、いい子なんだ。しっかり面倒をみてやってほしい」
「はい、わかりました」
「……どちらかと言うと、今のところ私が面倒を見てる気がするのだけど……」
なんでもロイドさん達はDランク冒険者で、この間までクリシアと一緒に依頼を受けていたそうだ。
だけど、通常冒険者ランクが2つ以上離れているとパーティーを組むことはできない。
クラン内での指導という名目で一時的なパーティーを組んでいたそうだ。この場合はクリシアの一つ上のEランクの依頼までしか受けることはできない。
ロイドさんたちにとってはランクが一つ下がるため、利益が少なくなる。そんな中でも後輩の育成のためにと付き合ってくれるロイドさんは結構いい人みたいだ。
そういえば、なんであたしと組むことになったのか、経緯を詳しくは聞いていなかったな。
「EランクかFランクの人でどうしてもパーティーは組めなかったの?」
「このクラン。Dランクのパーティーは多いのだけど、Eランクのパーティーは一つも無いのよ。それで、Fランクのパーティーが一組だけあるのだけれど、そのパーティーで上を目指すのは絶対に無理な気がして……」
「そのFランクのパーティーってそんなにダメなの?」
「ええ、男1人、女3人のパーティーなのですけど、酷いパーティーでしたわ。一度、一緒に行動したのですが、ひたすら痴話喧嘩を繰り広げたり、ゴブリン1匹相手に怪我して大げさに騒いだり、ゴブリン2匹以上が来たら、逃げ出すしで、最悪でしたわ」
「あはは、なかなかすごいパーティーだね」
あたしとしてはゆるいパーティーなら歓迎だけど、話を聞く限り面倒事も多そうなパーティーだな。
「それに、私にはできるだけ早く冒険者ランクを上げたい理由があって、それなりの実力者のパーティーで活動したいの」
ギルドでは依頼の達成や魔物の討伐の報告をするとポイントをもらうことができ、冒険者ランクの昇格にはこのポイントが一定数到達する必要がある。
あたしは今のところそんなに急いでランクを上げたいわけじゃないのだけどなぁ。困ったな。
「なので、私と同等ぐらいの実力者としかパーティーは組むつもりはないと言ったら、リアナが来たのよ。このままだと、あのパーティーに入るはめになったかもしれないから、助かったわ」
「でも、その割には出会ったときはずいぶん高圧的な感じだったけど」
「う、ごめんなさい。ちょっと気が立っていましたの。それに、リアナって広場で歌なんか歌って小銭を集めたりなんかしていたじゃない。なんだか、面白半分に冒険者をやっているだけなのではないかと思って」
「まあ、いいけど」
ただ、音楽に対してどうも批判的な感情がある気がする。今度、うまいことして広場に連れて行って、無理にでも参加させてやろう。
「こんにちはマスター」
「よく来たね、クリシア。それから君はリアナだね。ようこそ銀の風へ、歓迎するよ」
続いてあたし達は奥のカウンターまでやってきた。カウンターの向こうには綺麗に髭を生やしたゴツい男性が立っていた。クリシアからはマスターと呼ばれている。
「マスター、Fランクでできる仕事は何かありません?」
「ちょうどよかった。今団長も含めて15人ぐらいがハマキ村の依頼に向かっているよ。クラン指定の依頼でね、FからDランクの間で最大25人までの内容になっている。3日ほどかける依頼だけど、今からでも参加可能だよ」
「え“、3日間ってことは泊まり込みですか?」
「うむ、向こうで民家が使えるから心配はいらんよ」
やだなー泊まり込みで仕事とか……もっと他に楽なのを。
「どうだ、参加するかね」
「もちろんですわ。さっそく今からでも出発しましょう」
「ちょっ……」
「うむ、わかった。少し手続きがいる。ちょっとまっておれ」
「ちょ、ちょっと、なんで受けちゃうの。3日とか働きすぎだよ」
「でしたら、3日働いた後、休日にすればいいですわ。メリハリをつければいいのです。私と組んだ以上、毎日昼まで寝てばかりの生活なんてさせませんわ」
「えーやだよー、早起きとか不健康だよー」
「ええい、いい加減腹をくくりなさい」
「待たせたな。これがハマキ村までの地図だ。あと、すまんが二人共、ギルドまで行って依頼メンバーが追加されたことを報告してきてほしい。これが書類じゃ」
なんだかんだ言っているうちに話が進んでしまった。
仕方ない、3日間はなんとか頑張って働こう。その後、しっかりだらだらするぞ。
クランの5件隣、ギルドの前まで来ると、クリシアが誰かに呼び止められた。
「よう、クリシア。お前まだあんな泥臭いクランにいるのか」
声をかけてきたのは金髪、高身長の青年。全身を結構高そうな装備で覆っている。イケメンだが、いけ好かない感じがする。あたしは見た瞬間嫌な感じがした。
理由もすぐにわかった。こちらの全身を舐め回すように、しかも商品かなにかのような目線を感じたからだ。背筋がぞわぞわする。
この気持ち悪い青年のすぐ後ろには3人の男。パーティーメンバーだろうか。
「まだ、パーティーにも入れてもらえてないらしいじゃないか。まあ、没落貴族の女じゃあしかたないよな。しかたないから俺のクランに入れてやる。本来ならお前のような平民に没落した女を入れたりはしないんだけどな。昔のよしみだ、ありがたく思うんだな」
なんだこいつ。目線も気持ち悪いけど、言動はもっとムカつく。いきなりクランとクリシアの悪口を言いはじめて、最後はいきなりクランに入れてやるとか言い始めた。
「お断りします。ジーク様、先日もお答えしたとおり、あなたのクランに入る気は一切ありません。それに私はもうこの子とパーティーを組んでいますので」
バッサリと断ったクリシア。いいぞ、いいぞー。はっきりいってやれ。
あたしは面倒くさそうなので黙ってるけど。
「ははは、女2人でパーティー組んでるのか。やめとけ、やめとけ、女だけで冒険者の真似事なんかしてもゴブリンに攫われるのが落ちだ。女は女らしく男の言うことを聞いておけばいいんだよ。クリシア、お前はそこそこ使える加護を持っているから俺が使ってやるって言ってるんだよ」
え、なんだこいつ。女に何か恨みでもあるのか。あ、そういえば格好も言動もこいつはどうやら貴族らしいな。これが貴族の価値観なのか? だとしたら、この国やばくね。
「ジーク様、だったら自分の言うことを聞いてくれる女を探せばいいではないですか。私の加護は私だけのものです。あなたの言うことを聞く必要がどこにあるんですか?」
「てめぇ、強がるなよな。平民に落ちた女が栄光をつかめるとか思うなよ」
はは、この勘違い男、しつこいな。
そう思っていたら、急に矛先がこっちに来た。
「ふん、お前がクリシアのパーティーメンバーか。田舎の娘だが、見てくれは悪くないな。よし、お前はうちのクランで給仕をさせてやる。こい!」
そう言って、いきなり近づいて来て手をつかみ引っ張ってきた。
くるんっ
ドカッ!
「がぁっ!!」
ほぼ反射的に投げ飛ばしてしまった。
ジークは面白いように一回転して、背中から地面にぶつかる。
苦しそうにもがいて、立てない様子。
この程度でそんなダメージ受けるとか軟弱過ぎる。
「あら」
前を見ると、後ろの3人が武器を構えている。
え、この程度でそんな物騒なもの出すの。




