村娘はパーティーを組む
前回までのお話。
トリスお姉さんに強引に連れ回されている内に、冒険者登録と銀の風というクランへの入団をさせられてしまい、最後はクリシアという女の子とパーティー結成をかけて勝負することに。
「優しくしてあげるですって! ずいぶん舐めたことを言ってくれますわね。後悔させてあげるわ」
「あ、ちょっと待った」
「何ですの、今さら……」
「いや、あたしが勝ったら、あたしがリーダーってことでいいよね」
「ふん、かまいませんわ。その代わり私が勝ったらせいぜいこき使ってあげましょう」
あれ、あたしとはパーティーを組むつもりは無かったんじゃ……。まあ、いっか。あたしがリーダーになってのんびりとした予定を組めばいい。そのためにも勝たないと。
「用意はいいか、それでは……」
「はじめ!!」
ダッ 「あらっ…」
合図とともにバックステップで距離をとるクリシア。
どういうことだ、武器は木刀を持っているのになんで距離をとるんだろ?
「決して折れぬ刃にして身の盾となる剛体を求む、武器強化」
え、何今の中二病っぽいセリフ。……あ、魔法か。
しまった、詠唱するスキを与えてしまったのか。さっさとこっちから仕掛けよう。
タンッ あたしは軽く地面を蹴って、弧を描くようにして距離を詰める。
カンッ
木刀同士がぶつかる乾いた音が響く。
ヒュッ
「……っ」 ズサッ
あたしは返す刀ですかさず突きを繰り出し、クリシアは身をひねってかろうじて躱す。
なかなかいい反応をしている。
でも、大きく体勢を崩している。このまま上段から避けられない位置に強く振り下ろす。
ガッ!!!
バキッ!!
体勢を崩しながらもあたしの一撃に対して木刀を振り上げて迎え撃ったクリシアは、衝撃を受け止めることができず、2mほど吹っ飛んだ。
だけど、同時にバキッという嫌な音がし、あたしの木刀だけが2つに折れてしまった。
「え、うそ……」
一瞬、思考が止まる。なんで、あたしの木刀だけが折れるんだ。
おっと、考えるのは後だ。
武器を失った今、クリシアが体勢を立て直す前に距離を詰めないと。
距離を詰めるあたしに対して、中腰のまま木刀を振るクリシア。
『見切り』を発動したあたしは身を捻って木刀を躱し、クリシアに掴みかかる。
クリシアはとっさに木刀を捨てて、あたしの手を弾きながらあたしの右手首をつかむ。同時にあたしは左手でクリシアの右手首をつかむ。
よし、ここから投げを……あれ?
・・・・・・
お互いの手首を取り合って数分。
なぜか膠着状態になってしまった。
「な、なかなかやりますわね」
「そ、そっちこそ」
クリシアのやつ、手の弾き方といい腰の落とし方といいどうやら投技の心得があるみたいだ。
お互いに足を払ったりして転ばそうとしているけど、どちらも相手を投げることができないでいる。
そりゃあ実践なら頭突きとか目潰しとかで、こんなに膠着したりはしないけれど、あくまで模擬戦なので、お互い攻め手に欠ける。
「よし、引き分け! もう終わりだ」
「え、そんな、まだ決着がついてない」
「そうですわ。私もまだまだやれます」
「そうはいってもまだまだかかりそうだし、俺は忙しいんだ。クリシア、そいつがお前と同程度の実力者なのはわかったはずだから、さっさとパーティーを組め。トリス、後はまかせたぞ」
「わかった、任せてー」
「それじゃあ、さっさとギルドの受付までいくわよ」
「ちょ、ちょっと待って……この決着だけはつけないと」
「そうよ、この勝負はまだ終わってませんわ」
あたしとクリシアは取っ組み合ったままなのだ。
「ごめん、待てない、なので……チョーップ!!!」
あたしとクリシアは同時にトリスお姉さんのチョップによってKOされた。
よって、勝敗はトリスお姉さんの一人勝ちということに。
「仕方がないので、あなたで満足してあげる。私とパーティーを組めたことを感謝することね」
「そっちこそ感謝したらどうなんだ。誰も組む相手がいなかったそうじゃないか」
「む、それは私と釣り合いのとれる新人がいなかったせいですわ。さっさとランクを上げれば組む相手はいくらでもいますの。あなたも私に捨てられないようにせいぜい励んでほしいものですわ」
「まったく、どこまで上から目線なんだ。あと、あたしの名前はリアナだから。あなたではなく名前で呼んでくれ」
「む…………アナライヤ家の私が気安く平民の名前を呼ぶわけには……」
「じゃあパーティーは組めない。名前も呼んでくれないんじゃあやってけないよ」
「え、ちょ、ちょっとまって……わかったわ。……リ、リアナ。こ、これでいいでしょ!」
ちょっと顔を赤らめながらあたしの名を言うクリシア。かわいい。
「なにニヤニヤしていますの」
「いや、なんでも……。とりあえず、よろしく、クリシア」
「ええ、こちらこそよろしくですわ、リアナ」
そうして、あたしはクリシアとパーティーを組むことになった。
「それではパーティー名はどうしますか?」
「もちろん、華麗なるアナライヤの翼よ」
「なにそれ、妙にかっこつけてる上に自分の家名まで入れて、ダメでしょ」
「だったら、リアナはなんて名を付けるのかしら」
「あたしは、うーん、ブレイカーズとか…」
「なんです、その妙に気取った名前は、逆に恥ずかしいですわ」
う、確かに自分でもどうかと思うネーミングセンスだけど。
「あ、じゃあゴールドレッドにしちゃおう。これで登録よろしく」
ギルドの受付にてパーティー名で悩んでいたら、これまたトリスお姉さんにさっさと決められてしまった。
パーティー名、ゴールドレッドはこうして誕生した。
「いつまで寝てますの! ほら、起きて!」
「う、うーん……。……誰?」
「私よ、昨日パーティー登録したクリシアよ。ギルドで朝から待っていたのになんで寝てるのよ」
「うん、うん、覚えてる………………スヤー」
「寝るなー! ほら、依頼を受けにいくわよ!」
「うーん、むにゃむにゃ……太陽の位置が低すぎる、まだ寝る時間だよ」
「もう昼前です。寝る時間じゃありません!」
「うーん、あと10分寝かせて……」
「そりゃっ!」
バフッ! ドシャッ!
「イタ……」
布団を引っぺがされて、床に叩きつけられる。あれ、きのうもこんなことされたような。
「ほら、さっさと準備して。今日は2人で依頼を受けに行きますわよ」




