村娘は勝負をする
14部村娘は街でだらけるに追加シーンをいれました。
トルク村がどうなってしまったかを記載。
「……んっ……ふぁ……あ、そこダメ」 ビクッ
「ん? どうしたの、リアナちゃん。私、どこも触ってないはずだけどなぁ……」
「巻き尺が……その、何度も当たっていて……はぅ」 ビクッ
「ふぅん……どこに当たっているのかな、言ってくれないとわからないなぁ」
「……その、先端の方に……」
「ふぅん……どこの先端かしらぁ、お姉さんに教えてぇ」
「もうっ! 意地悪しないでください」
あたしはあたしの胸囲を測っていたトリスお姉さんから巻き尺をぶん取った。
「あら、まだ測り終わってないのに」
「さっきからどれだけ時間をかけてるんですか! わざとらしく、何度も上下に動かして」
「あれ、バレてた」
「普通、気づきますよ」
「仕方ない、セクハラはここまでにしておこう」
「隠す気も無いんですか……」
今、あたし達がいるのは東門近くの防具屋さん、ジュドの防具店。
いろんな種類の防具がある中、トリスお姉さんのおすすめでオーク素材でできたレザーアーマーを購入した。
今は男性の店員の代わりにトリスお姉さんに採寸を測ってもらっているところ。
「トリスお姉さん、スキを見せるとすぐにセクハラするのは自重してください」
「ごめんごめん。でも、村で身につけていた防具をほとんど売っぱらっちゃったリアナちゃんも悪いのよ。いったい何に使ったのかしら」
「……それは、生活費とかに……」
本当は全部お酒に消えた。
「まあ、どちらにしてもちゃんとした防具は必要だったからかまわないわ」
「でも、今日はお姉さんににいろいろ払ってもらってばかりで……」
「いいの、いいの、気にしない。その代わりやってもらうことがあるから」
「え、やってもらうこと?」
「うん、うん、冒険者登録よし、装備よし。ふぅ、これでようやく私の用事を始められる」
え、まだ用事は始めてもいなかったの?
「じゃあ、こっちについてきて」
すごく嫌な予感がするけど、すでにいろいろおごってもらってしまったので、今さら逃げるわけにもいかない。
やって来たのは冒険者ギルドの5件隣のそこそこ大きな建物。
柱には木でできた看板が立てかけられている。
「ここは……銀の風? なんの建物ですか?」
「ああ、それは大手クランの名前で、ここはその本拠地だよ」
クランとは、冒険者同士の互助を目的として作られた組織でこの街にも4つほどクランが作られているそうだ。
冒険者ギルドは基本的に依頼の仲介とランクの査定しかしない。
そのため、情報交換や大規模依頼での連携、新人教育などを担う組織が必要となるのだ。
こういった大きな街では冒険者は信用も必要で、依頼の受注も所属するクランによって優先的に受けられることも多い。同時にそれは癒着や腐敗にもつながっていたりはする。
そのためか新人冒険者はどこかのクランに所属しないと生活するのは難しいとも言われている。
そのクランの一つ銀の風の建物の中に入っていくトリスお姉さん。
1階は酒場のようになっていて、装備に身を包んだ荒事の専門家みたいなやつばかりが座っている。皆知り合いらしく、トリスお姉さんと軽く挨拶をかわしている。
あれ、もしかしてあたしもここに所属させられるのかな。なんかサラリーマンっぽい立場になりそうで気がのらないのだけど。
2階に上がるトリスお姉さんについて行き、奥の部屋に入ると、ゴツい感じの中年のおっさんに出迎えられた。髭を綺麗に剃り、髪型は七三にぴっしり分けて外見は小奇麗にしているのに、なぜかむさ苦しさが抜けていない感じの大男だ。
「ようこそ銀の風へ、俺は団長のバルトロだ。トリスよ、こいつがお前の言っていた新人だな」
「そうそう、リアナちゃんっていうの。Dランク以上の実力はあるとおもうよ」
あ、一応それなりの評価はしてくれていたんだ。でも、この流れだとあたしは本当にこのクランに入れられそうなんだけど……。
「よし、すぐあいつを呼んでくるから、訓練場で待っててくれ」
「わかった。先に行って待っとくよ」
そんな訳で、来た早々に冒険者ギルドの訓練場に逆戻りすることになった。
「あの、トリスお姉さん。どういう話になっているのか全然わからないのですけど」
「あ、まだ話してなかったね。リアナちゃんとパーティーを組んでほしい子がいるの。今日はその顔合わせをするつもり」
「……え、やですよ、知らない人間とパーティーとか……」
「まぁまぁそう言わずに、ちょっとツンツンしてるけど、いい子なのよ」
「ていうか、あたしまだこのクランに入るかどうかすら答えてませんよ」
「あーダメダメ。もうリアナちゃんはうちの団長に挨拶しちゃったから、入団扱いになってるよ。まあ、諦めることね」
はめられた。わざと何も知らせず奥まで連れて行ったんだ。大人って汚い。
訓練場で待つこと数分で団長のバルトロがやって来た。
その後からついてきているのはあたしと同年代ぐらいの女の子だろうか。
うわ、可愛い!
プラチナブロンドの髪に白い肌。均斉の取れた顔立ちに長いまつ毛、近づくほどより美しさが際立つ。
それだけじゃなく、その立ち振舞もどことなく、高貴な雰囲気があり、より引きつけられるものがある。どこかで似た人を見たような気がするけど、どこだったかな。
ん、なんだか睨みつけられているような気もするけど、気のせいかな。でも、このツンツンした表情がまたたまらないなぁ。
この子とパーティーかぁ……うん、全然OKだね。早く親密になりたくなってきた。
「こんなのとパーティーを……絶対に嫌ですわ!」
せっかく前向きになってきたのに、強烈な拒否反応を示された。ちょっと心が折れそう。
「広場で見世物をしているような女とパーティーを組むなんて、アナライヤ家の名を汚すような真似できませんわ」
「だがクリシアよ、お前がパーティーを組む条件として言ったことを忘れたわけじゃ無いだろうな」
「ええ、覚えていますわ。私と同等かそれ以上の実力者としかパーティーを組む気はないと言ったことでしょう。この女にそんな実力があるとは思えませんが」
「だったら模擬戦で勝負してみることだ、確かにお前は実力があるけど、まだFランクなんだから。いつまでもランク違いのパーティーを組んでいるわけにはいかんのだ」
「でしたら、何度も言うようにソロで活動させていただきたいのですが……」
「ダメだ。うちのクランじゃ、よほど事情がない限り2人以上のパーティーでの行動しか認めん」
なんだかよくわからないが、この子と模擬戦をするってことかな。
ちょっと腹も立ってきたから、そのツンツンした表情も歪めてやろう。
「なんだ、お前もただのFランクじゃん。なんか、どこかのお嬢様っぽいし、偉そうなこと言っているけど、屋敷の中でお茶でも飲んでる方が似合ってるんじゃないのか?」
「な、なんですって! いいわ、相手してあげる。しばらく立てなくしてあげますわ」
「じゃあ、あたしは優しくしてあげる」
お互いに木刀を向けあう2人。
あたしはこのクリシアという女の子と勝負をすることになった。




