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四話

いつの間にか出口のところに維摩が立っていた。ニコニコとして、してやったりという表情をしているのが気にくわない。


「なかなか楽しい余興であったよ、女狐どの」


「私の正体を見破っていたの!」


「いやいや」


私が問うと彼は違うよと首を振った。


「見事な変化の術だ。私の神通力をもってしても見破れなかったよ。遠見の術でそなたが油断して狐の姿になるとことろを見なければ、未だにそなたが何者なのか気づかなかったよ」


この男、神通力を持つというのか。油断できない。


「だだ者ではないのは初見で分かっていたがね。あまりにも美しすぎるのだよ。この世の者ではない美女が普通の人であるはずもない」


そう言って維摩は肩をすくめた。


「貴様ー! 私を愚弄するな!!」


私は変幻自在の法で竜に変化した。身体が巨大化し空中に浮かび上がる。維摩に向かって唸り声をあげた。私は単に竜の姿になっただでではない。まさしく竜そのものになったのだ。私はいま竜の持つ能力をも身につけている。

竜の能力は雨風を呼ぶ。

私は暴風雨を生み出し、その圧倒的な風圧と水圧のすべてに指向性を持たせた。維摩めがけて。

暴力的な風と水が維摩に打ち出された。

だが、大人一人吹き飛ばすくらい簡単な威力が維摩に届かない。おそらくは出口にたどりつかない術の応用だ。


「ならば、これならどうだ」


竜の力では倒せぬと見た私は別のものに変化する。

竜から姿を変える。竜よりは小さいものの、象を馬のように跨ぐほどの巨人へと変化する。赤褐色の肌、髪や髭まで赤い威圧感のある男。人間ではありえない存在感を持ち、手には雷を天から呼びよせる法具ーーヴァジュラーーを手にする神の姿。

雷神インドラである。

古文書『リグ・ヴェータ』に記される伝説の神へと変化した。


「ーー!?」


さすがの維摩も息を呑む姿を見せた。

奴に向けてヴァジュラを構え、そして雷を撃ち放つ。

そもそも、出口にたどり着けないのも、維摩に攻撃が届かないのも目の前の場所が見えているよりも遠く先にあるからだ。決して存在していないわけではない。遥か彼方には存在してはいるのだ。

雷の速度は人間や風の比ではない。普通ならたどり着けに先にたどり着く。

わずかな時間で雷は維摩に届き襲いかかった。奴は驚きながらも、雷が届くわずかな隙をついて雷を素早く避ける。


「ならば、こうだ!」


私は自らを雷へと変化させる。


「え? そんなことまでできるのか!」


維摩の叫ぶ声が聞こえる。

さあ! 轟け我が身体よ。

私は自らを撃ち放つ。たどりつかぬはずの距離を踏破した。

維摩は私自身をなんとかかわすがわずかに体勢を崩した。すかさず私は大男の戦士の姿に変化して大剣を維摩めがけて打ちおろす。

両手を前に差し出す維摩。そして、剣は維摩の創り出した結界に阻まれた。

なんとか切り抜けた維摩は私から慌て距離をとった。


「ちょっと待った、待った!」


私は続けて攻撃するのをやめた。別に維摩が待てと言ったからではなく、いまのをかわされてしまい奴に対して有効な攻撃が思いつかなかったからだ。


「まったく驚かせてくれるものだ。ただの化け狐ではなく、大妖狐の類であったか……」


維摩の感心したといわんばかりの態度と物言いがはなについた。


「しかし、このまま戦い続けても千日手よ。お互いに力比べからは手を引こうではないか?」


忌々しいが同感だった。この男の神通力も侮れない。下手をするとこちらの命が危うくなるかもしれない。

維摩は忌々しくニヤリと笑いながら語り続けた。


「だが、勝負に決着がつかないのも気持ち悪い。そこでーー」


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