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ホーンテッド・プリンセス!  作者: 夜斗
第1章 白桜邸と不愉快な他人たち。
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《第1章/第4話》 白桜邸と不愉快な他人たち。

 開幕から人を寄せつけない態度を全開にしていたのにも拘らず、物好きというモノはこぼれた砂糖に群がるアリのように必ず湧いて出てくる。真っ先にコンタクトを取ってきたのは他でもない姿見由帆だった。


「ハロハロー、転入生クン?」


 転入生という今の自分にしか当て嵌まらない言葉に微かに反応し、御幸は声の方向に一瞥を寄越す。ライトブラウンのショートカットに薄らと施した化粧と仄かに香る香水、背は低過ぎず高過ぎず、ニコーッと愛想たっぷりの笑みを浮かべられれば一般男子ならまず間違いなく悪い気はしない、むしろ気があるんじゃないかと勘違いしてしまいそうなほど魅力に溢れる女子。残念ながら御幸は特にどうとも思わず、他の女生徒と五十歩百歩という程度の印象だったが。


「……何?」

「いやー、ほら、自己紹介って言うか、せっかく同じクラスなんだし親睦深めようと思ってさ。あー、アタシ姿見由帆っての。んでこっちのが親友のなぁなね。よろしくぅ!」

「へ!? や、何で私の紹介まで勝手に……」


 別の名前が出たので御幸が視線をさらに横に動かすと、突然話を振られて困惑を見せる名奈の姿が映る。長い黒髪をまっすぐに降ろしている、何とも素朴で人畜無害そうな女生徒。急に名前を出されて驚いていることを除けば……他に特徴が無くなる。御幸の視線はものの数秒で窓の外に向けられた。


「……いやはや、コイツぁ手強いね。他の子も色々気にはなってるんだけどこの取り付く島の無さ」

「あ、あの……私は、もりお」

「……で、僕に何か用なんですか?」

「やー、色々とお聞きしたい事がサ。お互いに多少なりとも情報が無いと仲良くも何も無いでしょ?」


 さてさて、とミーハーな由帆が手帳を片手に、もう片方の手に握ったボールペンをマイクに見立てインタビュアーを気取る。窓ガラスに映った御幸の表情は物凄くウザったそうにしているが二人とも見えていなかった。


「んじゃー、勝手ながら遠慮なく。白桜クンでいいよね。まず最初は……ベタに家族構成とかから聞いちゃっても?」

「一人」

「……エ? いやいやー、まさか竹からおぎゃあと生まれたわけじゃないでしょー? まぁお父さんとお母さんと……他に?」

「えっと、おじいさんとおばあさん?」

「いっや普通だねぇ! っていうかなぁな、それだと完全にかぐや姫じゃーん! あっはっはっは!」


 何が面白いんだか、と顔が見えていないことをイイコトに御幸はしかめっ面で重い溜息を吐く。


「じゃ次。タレこみ……というか、この辺じゃ知らない人は少ないんだけどさ……“白桜”ってその名字、もしかしてあの『死桜屋敷』こと白桜邸と何か関係あったりするのかな? かな?」


 いつか流行ったアニメだかゲームのキャラの真似をして場を和ませようと由帆は試みるも、むしろ効果はいまひとつどころか何故か御幸の背後から、ゾッ、と底冷えするようなオーラが迸る。思わず由帆もたじろぐも、マイクに見立てたボールペンはギリギリ離さず踏ん張る。


「……えぇ、あそこに越してきました。……それが?」

「お、おう…………えと、何だその」


 あまりの威圧感に由帆の身体が一歩後退。背中だけでこれまでの迫力が出せる高校一年生というのも相当珍しいというか、この時期の高校生なら少なからずコミュニケーションに応じるようなものなのだが御幸は一切見せずむしろ頑なに拒否している。

 いや、拒否というよりかは……


「つ、次ね次。オーストラリアからの転入って、向こうじゃどんな生活とか送ってたの? やっぱり英語とかは得意だったりする? そ、それからサ……」


 何かと話し掛ける度に由帆の胃がキリキリと痛んでいく。由帆としては、まるで棘の付いた壁にでも話しかけているかのようだったが、そんなやり取りを休み時間が来るたびに繰り返し、やがて午前のオリエンテーションが終わり昼休みを迎えると彼女は机の上でばたりと突っ伏してしまった。


「……あんな男子初めてだわ」

「お、おつかれさま……」


 購買で買ってきたというコロッケパンを片手にぶら下げながら由帆は、まるでフルマラソンを全力で走り終えたかのような疲れ切った表情を浮かべる。心配した名奈が飲み物を勧めても、今はちょっと無理、と手で制した。


「転入生って言うと他の人を警戒しちゃったりとか、まぁ分かるけどアレは何か違う。ベクトルっていうか、警戒じゃなくて完全に防御に回ってる感じ。戦車防衛とか、徹底抗戦というか……」

「……専守防衛?」

「それ。んー……下手に関わらない方がいいのかもねぇ。お近づきなりたいって声けっこうあるんだケドなー」


 よっこいしょの掛け声に合わせて身体を起こし、名奈が差し出したジュースにストローを突き刺してずじょじょじょじょと凄い音を立てながら一気に飲み干す。名奈もクリームパンをかじりながら、いつの間にか姿を消していた御幸の席に視線を動かす。


「……たしかに、あの人ちょっと変わってるね」

ちょっと(、、、、)って、アレはもはやキチガイとかに一歩踏み込んじゃってるレベルだと思うけど。あの態度のまんまで「はーい二人組作ってー」なんて言われたらもう一人を殺しかねないんじゃないの?」

「そうかなぁ……そんな風に、見えなかったよ。何かこう……うぅん」


 上手く言い表せないこのもどかしさに名奈が悩んでいるその様を見て、何故か由帆は目を真ん丸にして見つめていた。


「……ん、どうしたの由帆ちゃん?」

「どうしたの、はこっちの台詞よ。だって、今までなぁなが男子のことをそういう風に見て意見しようだなんてしなかったじゃないの」

「え? ……そうだったかな?」

「だいたいは何か適当な感じに相槌打つだけだったのに………………っは!? もしかして、恋!?」

「ちちち、っちち違うよぉ! もう、そんな、大声で言わなくてもいいのに……」


 おかげで数名分の視線が刺さって名奈の顔がカーッと熱くなっていく。カッカッカと快活に笑われてしまったが、名奈からしたら笑いごとではないくらいに恥ずかしい。


「へぇ……なぁなってば、ついにときめいちゃったワケだ? 白馬の王子とまではいかないけど、なぁなの理想ってちょっとファンタジー過ぎるからそのうち腐っちゃうんじゃないかと思ったけど……その分だと心配なさそうだね?」

「く、腐るって……」

「こりゃアタシも頑張って応援しなきゃかねぇ……?」

「も、もぅ……ッ」


 昼食が終わって、それからしばらくは別の話題で雑談に興じる。午後の授業もまたオリエンテーションに割り振られていて、先生の話では委員会などを決めるという風に聞いている。様々な委員会があり、基本的にはクラスで二名ずつ選出する必要があるとのこと。


「でも決まっちゃえさえすれば帰れるって話だし、アタシとしてはさっさと決めて帰りにどっか寄りたいトコなんだよねー」

「じゃあ、由帆ちゃんはもう何処に入るとか決めたの?」

「入らないよ?」

「あはは……」


 それから名奈が少し席を外して戻ってくるといつの間にか御幸が着席していて、程なくして先生が教室にやってくる。この授業さえ終われば放課後だという事もあってか生徒のムードは少々緩み気味。簡単な説明の後先生は黒板に各委員会の名前と仕事内容を列挙していく。


「さっきも言ったが少なからず二名は出てくれよな。あと、図書委員と生徒会は後で少し集まってもらうもんで、図書委員は図書室に、生徒会は生徒会室に放課後顔を出すようにな」


 そして先生は「ちょっと生徒の自主性に任せてみるか」と言って進行役から離れてしまった。喧騒が大きくなりつつある中、名奈は書き出された委員会に目を移す。


「学級委員、美化委員……前期限定の文化祭実行委員……ふぅん」

「うっわ、どれもめんどくさそうねぇ。体育委員とか……わ、野球部の応援とか無理無理」

「誰か美化委員やんなさいよ」

「生徒会とかやりたくねぇわ……」


 ちょこちょこ文句が飛び交う中、ほとんど生徒の手が伸びないのが件の図書委員と生徒会だった。両方とも放課後に小話があると分かってしまった所為でほとんどの生徒は見向きもしていない様子。


(……白桜君はどうなんだろう?)


 何となく気になって横目で見てみると、意外なことに興味があるらしいのか黒板の方へ視線を向けている。その先は、図書委員に向けられているような気がした。


「早く決まればそれだけ早く帰れるぞー。図書と生徒会以外はなー」


 そんな発破が効いたのか、数名の生徒が渋々といった感じで重い腰を上げ黒板に各々の名前を書き込んでいく。名奈もタイミングを見計らって図書委員の方に名前を書き込む。何故か周囲から「おぉ」みたいな小さな歓声が湧いて恥ずかしい。


「んじゃ、あとは図書委員だけだな。誰かいな」

「これでいいですか?」


 気が付けば名奈の名前の隣に御幸のフルネームがハッキリと書かれ、先生の顔を畏怖で凍り付かせている。異論を上げるものなど誰もおらず、むしろ嬉々として帰れる状況を迎えたというのに誰一人椅子に釘づけになってしまったかのように動かない。そして、当人と言えばそそくさと席に戻り、身支度を早々に済ませ教室を無言で出ていってしまった。


「……お、おし。んじゃ今日はか、解散な。生徒会の二人は二階の生徒会室、森尾は一階の図書室に行ってくれ」

「は、はい……」


 先生の声を皮切りに凍り付いた時間がゆっくりと氷解するかのように生徒たちが動き出し、しがらみから解放されて笑顔を浮かべていく。数名、若干引き攣っている気がするが。


「……なぁな、大丈夫?」

「え、何が?」

「何がって……そうだ、柔道部のコを護衛にするってのはどう?」

「森尾さん、必要なら竹刀も持っていくよ?」

「と、図書室にそんな物騒なモノ要らないよ……って、私も行かないと」


 真っ先に図書室に向かったであろう御幸のことを思い出し、名奈も慌てて身支度を済ませ教室を小走りに出ていった。

あっという間にゴールデンウィーク終了。

んー、特にこれといったことは無かったかな。

というか、連休って逆に出かけたくなくなるんですよねぇ……


次回更新は5月15日の22時頃。

では、待て次回。

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