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第1話

「今日から私が雪流ちゃんの後見人です」


 今通っている小中高大一貫校である中学の卒業式を終え高校が始まるまでの春休み何をしようかなぁと自宅でのんびり考えていた私こと『水城みずしろ雪流ゆきな』の前に突然金髪碧眼で見るからに外国人であるグラマラスな女性が流暢な日本語で突拍子もない事を告げてきた。まったくもって事態に頭が追いつかない私は?の表情を浮かべながら女性を見ていると、女性もまっすぐに私を見ながら一息ついてこうなった事情を話し始める。


 女性はシャロン・グランディアと名乗り弁護士記章-俗に弁護士バッジといわれるもの-を見せながら自分は弁護士ですとまずは自己紹介してきた。そして次に、シャロンさんは私の両親が事故で亡くなったことを告げる。シャロンさんは悲しい表情を浮かべ少し涙ぐんで話したが、正直私は両親の死を聞いてもこれからの生活や学校とかどうしようかなぁという考えが浮かんだだけで両親の死そのものに対して全く悲しいという気持ちは湧いてこなかった。それもそのはず、物心が付いた時には既にお手伝いの香夜かよさん(70)と2人暮らしである。そして、小学校高学年からは香夜さんの高齢+お孫さんの一緒に暮らそうという打診もあり香夜さんはどうするか随分悩んでいたが、私は大丈夫と色々後押しすることによって香夜さんはお手伝いを辞めその後は今日までずっと1人暮らしを続けてきた。それまで両親に会ったことはおろか声すら聞いたことない。唯一接点があるといえば月初めに最低限の生活費が私の口座に振り込まれているくらいである。故に私は「そうですか」と一言答えるだけで特に何も言う事はなかった。


 両親の死に対して何の感情も露わにせず素っ気無い態度をとったことでシャロンさんは困った顔をして少しだけ気不味い空気が漂ってしまう。シャロンさんが悪いわけでもないし困らせるつもりなかったので空気を良くするため話題を変えてみるかな。とりあえず今後の生活はどうしたら良いかを尋ねてみると、シャロンさんは「心配いりません」と言って預金通帳と判子を提出してくる。名義は私になっていたので中を確認した瞬間、私は唖然として思わず通帳を落としそうになってしまった。深呼吸し気持ちを落ち着けてからこの大金について尋ねると、このお金は両親の遺産でもちろん相続税の納付や全ての名義を私に変更するのも済んでいるとのことである。突如手に入った一生遊んで暮らせるだろう大金はまだ成人にすらなっていない私にとって困惑の対象でしかなかったので、成人するまでシャロンさんに管理してもらいその間今まで通り生活費だけを振り込んでもらうことにした。それと同時に、この大金でふと疑問に思った両親の職業について聞いてみたが、シャロンさんは微笑むだけで何も話してくれなかった。どうやら聞いちゃいけないことみたい、うん止めとこ・・・・・・なんか怖いし。


 2日日後、シャロンさんが取り仕切り両親の葬儀が何事も無く終了する。その時私は生まれて初めて両親の顔を見たが、やはり何も感じることは無かった。


(両親が亡くなったといっても、もとよりずっと家に居なかったし生活習慣は今までと全く変わらないなぁ)


 そんな事を考えながら翌日いつも通り馴染みの商店街に向かと、ある一画にガラポンの抽選コーナーが設置されている。


「あっ、雪流ちゃん。どう、やっていかない? 今日からだからまだまだ沢山の景品が残っているわよ」


 受付に立っていた八百屋のおばさんが私を見て声をかけてきたので、とりあえず景品一覧を一瞥してみる。3等の米10kgには大変魅力を感じるが、他は特に欲しい物は見当たらない。


(ここはやっぱり3等狙いかな、外れてもテッシュくらいは貰えるでしょ)


「それじゃ1回だけ」

「はいよ」


 補助券5枚をおばさんに渡しガラポンを適当に回した。


 ガラガラガラガラガラ! カラン! コロコロコロ


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・


・・


「やっほ~。雪流がゲーム店の袋を持ってるなんて何かあったの? もしかして、ついに雪流もゲームに目覚めた!?」


 買い物を終えて帰路につく途中、突如横合いから声をかけられた。隣に目を向けると小学校からずっと同じクラスの腐れ縁と言ってもいい幼馴染『黒沢美緒くろさわみお』が歩いている。


「残念でした、これは抽選の景品」

「な~んだ、残念。やっと雪流とゲーム談義ができると思ったのに。それで、それどうするの?」

「う~ん、今のとこゲームする予定はないし欲しいならあげるよ?」

「ホント! どれどれ、何のゲームかな~? ・・って、これ『Infinite Dream Online(インフィニット・ドリーム・オンライン)』(=IDO)じゃない!」

「なにそれ?」

「はぁ~、たまにはそっち方面の情報も仕入れよ~よ。これは初めてVRバーチャル・リアリティ技術を使って作られたオンラインゲーム。専用のVRヘッドギアは初回生産5000個のみで、その内の1000個はクローズβ参加者に無料配布されたから残り4000個はかなりの激レア商品なんだから」

「ふ~ん、だったら尚更いる?」

「ありがとうって言いたいけど、私は運良くクローズβ参加できたから既に持ってるの」

「それじゃ他の人にでもあげようかな」

「それよりも一緒にやろう、いつも雪流の本探しとか付き合ってるんだから私のゲームも付き合ってよ」

「私はいつも美緒の宿題を手伝わされていると思うけど」

「え、えっと・・・・・・。もう! なんでもいいから、一緒にやろ! うん、決まり。そうと決まったら早速準備しないと、初期設定とか色々と面倒なんだから」


 話を強引に終らせて手を引く幼馴染に「しょうがないなぁ」と苦笑しながら特に抵抗せず家路についた。

 美緒は自宅に到着してすぐに私の部屋に行き初期設定に取り掛かり、前面&左右側面&背面から撮った私の全身画像のスキャンや身体データである身長&体重&その他もろもろの数値を打ち込んでいく。一度はやった事ある為かそれらの作業を非常にテキパキとこなしていき、手持ち無沙汰となっている私はとりあえずお茶菓子を準備することにした。


「あほはほおはほひんひふはへはほ」

「食べながら喋らない、何言ってるのか全く解らないから」


 饅頭を頬張りながら喋る美緒を窘める。


「あとは脳波の検出だけだから寝る前にVRヘッドギアを着けてね、朝起きた時には終わってるから」

「そんなに時間がかかるもんなの?」

「2~3時間程度で終わるけど、それだけに時間取られたくないでしょ? だから寝る時でいいから」

「なるほどねぇ」

「そういえば。あっ、メール、誰からだろ? ・・・・っ! ごめん、お母さんに買い物頼まれていたの忘れてた。急いで帰らないと! 脳波の検出忘れちゃダメだからね!」


 最後まで念を押して、バタバタと足音を立てながら帰っていった。


 それじゃ、本日の家事でも終わらせるとしましょうかね。


ここまで読んで下さりありがとうございます。


こちらは別作品の気分転換という感じで書き始めました。

なので不定期更新となりますが、長い目で本作品もよろしくお願いします。


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