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それは、何故か。
答えとしては、ありきたの話かもしれないが、地形が森の樹海で有ったこと、エルフの大軍に慢心が有ったこと、エルフの戦い方が自分達の手を汚さない魔法戦が主体だったこと、最前線に配属されていた司令官がエルフの知略より上にいっていたこと、そして何より司令官が欲しかった人材が揃っていたこと、司令官が欲しかった人材とは、最低でも弓50メートル先の的を打ち抜ける人材のこと。
それらが、今回の攻砦戦では弓士として有名な貴族シリウス・バートが率いる弓兵隊450が最前線の戦いに組み込まれた事が、此の攻砦戦に置いての分岐点に成ったと言ってもいいかもしれない。
此の説明だけだと魔法より弓矢の方が威力が有るように受け取られるだろうがそれは違う。弓矢が魔法よりも優れている所は、射程距離の長さと目標に届くスピードだ。それに対して魔法の特性は、多様性と威力が桁違いと言うことになるのだろう。
エルフが使用する魔法の威力と人間が使用する魔法の威力を簡単に比較させてもらうが、人間の扱う魔法の威力は初級魔法で大体一人か二人を巻き込み高等魔法で二十数人を倒す威力。才能がずば抜けている人間でさえ、大体五十人ぐらいが限界。
それに比べてエルフの平均的な魔法の威力は初級魔法で十数人、高等魔法で百人を巻き込む威力に相当する。更にたちが悪い事に、エルフ達は同系統の魔法を使用すると威力が跳ね上がる現象を利用した集団同調魔法を開発した。只此にも弱点が有る。
それは、集団同調魔法を使用する場合、同系統の魔法が集まる関係上制御する人間を小隊事に設置しなければ、魔力が暴走し、増幅された魔法が自軍内で爆発を引き起こし二千人規模の命を散らす事態を引き起こす。
今回の場合ブランコ騎士小国側は此の弱点を突こうと考えた。