1;09
9
いつの間にか、夜になっていた。
三人は、まだリンから抜け出せていないため、野宿をすることにした。
「ここから、クウクは遠いんですか?」ロゼは、焚き火の炎を見ながら言った。
「うん、かなり歩くことになるね。魔法で飛んで行ってもいいけど、シャルゴは飛べないだろ」
「オレは、足手まといかよ」フンと鼻を鳴らすシャルゴ。
「いや、君は役に立つからね。足手まといには、絶対ならないよ」
「でも、オレ、飛べないし」
「リンの住人だから、当たり前だよ。今は、飛ぶことよりも、『先読み』の方が、重要な気がするんだ」
「………………」ライには分からないが、シャルゴは沈黙した。
分からないので、ライも、沈黙した。
ロゼは、何故二人が、急に押し黙ったのか分からなかったので、沈黙した。
ふしぎな沈黙がその場を包んだ。
ヒュォ────。
そのとき、冷たい風が、三人のほほをなでた。
そして、ゴロゴロという音。
その音を聞いて、シャルゴはすばやく立った。
「あらしが、来る!」
シャルゴは、あたりを見渡すと、ライに向かって言った。
「もうすぐ、やって来る!オレ、じいちゃんの手伝いしてくるから、ここにいて!」
「僕も行くよ!」ライも立ち上がる。が、時すでに遅し。シャルゴは、それこそあらしのように、森の中に入っていった。
「…………どうして?」
だんだんと強くなってくる風に目を細めながら、ロゼはつぶやいた。
「そう、リンの『先読み』では、あらしは一ヵ月後のはずだった。なのに、今来ている。──リンの『先読み』が間違っていたのか?いや、そんなはずは……」
ライは、森を見すえながら、つぶやいた。
「とにかく、ここにいては、危険です。近くの家に非難しましょう」
「うん……」