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「それが、悪夢なの?」ライは、ロゼの顔をのぞき込むようにして、聞いた。
「……はい」ロゼは、ずっとうつむいたまま、しゃべっていた。
「…………ふーん。シャルゴはどう思う?」
「何が?」シャルゴは、足元の石を見ながらつぶやく。
「何がって……、チリカはなんだろうね。とか…………まあ、そんなところ」
ライは、顔をしかめながら言った。
「チリカはなんだろうね」シャルゴは、顔を上げながらつぶやいた。
「……君、ふざけてるでしょ」
「うん」
「……カーニャがいたら、このクソ坊主とか言っていただろうね」
「言わないでしょう。カーニャさんは、いい人ですから」ロゼは、ニコリと笑いながら言った。
「…………」ライは、ロゼの笑った顔を始めてみた気がした。
「どうかしました?」
「……いや、とにかく、それが全部なんだよね。悪夢の話は」
「ええ」ロゼは、うなずいた。さっきの笑顔はすでに消えていた。
「……それを毎日見る」シャルゴは、ぼそりと言った。
「うん、それを今、聞こうと思ったところ」
恐らく、『先読み』を使ったのだろう。ライがロゼに『毎日見るのか』という質問をしている未来をみたのだ。
ライはうなずいた。
なるほど、時間の短縮という訳か。いかにもシャルゴらしい。
「オレのこと、何も知らないくせに」
ほら、また言おうとしていたことを言われた。
ライは、なぜだか面白くなってきた。
「さっきから、何を話しているんです?」
ロゼは、首をかしげた。