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9
「あそこの林に向かって、一気に走って」
みんなから一足遅れて図書館から出ると、シャルゴが百メートルぐらい先の林を指さして言った。
「え? どうして」
「さっき、シャルゴに『先読み』をしてもらったんだ。したら、あの林に向かって走ったら、人間界に戻れるってさ」
「早くしないと、戻れなくなよ!」シャルゴがせきたてる。
「バイバイ。楽しかったよ」キリアは微笑んで手を振った。
「えっ、でも」
「早く!」
恵美は走り出した。
でも、ひとつ、気になることがある。
「ねえ、どうして…………シャルゴが見た未来では、わたしは林に向かって走ることになったの?」
恵美は、走りながら叫んだので、息が切れそうになった。
「それはねー」後ろからライの叫んでいる声が聞こえた。
「シャルゴが『先読み』をしたからだよー!」
「えー! そんな、堂々巡りなのー?」
「そうだよ。でも────」
林に入った。
「でも」のあとは、なんだったのだろう。
恵美は、考えているうちに、元の世界へ帰ってきていた。
たまに通る、見慣れた林。
恵美は、足を止めて振り返った。
そこには、さっき行ったコンビニの照明が光っていた。
「戻ってきたんだ」
腕時計を見ると、夕方の六時になっていた。
「二時間しかたってない…………」
こっちだと、時の流れが遅いのだろうか。
何だったんだろう。と恵美は思う。
二時間なんて、とっても短くて、忙しい旅行だったな。
でも、よかった。楽しかった。
10
今日は、まったくもって、ついている日だ。恵美はそう断言できた。
お久しぶりです。
この作品は、某出版社の新人賞に応募して、見事に落ちてしまった作品です。
読んでみてぜひ感想、評価をお待ちしています。
今後の創作に役立てたいと思いますので、ぜひお願いいたします。
それでは。