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 「着いたはいいが、どこにいく?」ライは、サクリに着くなり言った。

 「さあね」と言いながら、キョロキョロとあたりを見渡すキリア。

 シャルゴも、無言であたりを見渡していた。

 恵美も見てみる。

 一瞬、人間の世界に戻ってきてしまったかと思うほど、ごく一般の町並みが広がっていた。

 木造二階建ての一軒家があれば、八百屋さんがあり、肉屋さんがあった。

 ただ一つ、違っているものといえば、サクリの中央にそびえたつ、たてにも横にも大きい、ドーム状のレンガの建物があるくらいだ。

 「とりあえず、あそこにいってみるか」

 ライが、指さしたさきには、あの大きな建物があった。


 「近くで見ると、迫力満点」キリアが恵美の頭ぐらいの高さまで浮きながら言った。

 「サクリ図書館だって」シャルゴが看板の文字を読む。

 「図書館か……、入ってみるか」

 重い戸を開けると、壁一面に本がつまっていた。

 ここは、本好きに取っての天国だ。と恵美は思った。

 中央には、らせん階段が、六本ほど延びていて、二階へとつながっていた。

 二階へ上ろうとすると、近くにいた人に呼び止められた。

 「二階には、本はないよ」

 「それじゃあ、なにがあるのさ」キリアが聞く。

 「作家さんたちの創作場だ。お前さんたち、編集さんかなんかかい?」すると、キリアは、一歩前に出て、微笑みながら話を始めた。

 「ええ、そうです。この人。ツェンター・カロコの編集さんですわ。あの、カロコさんは、どちらにいらっしゃるのかしら」キリアに背中を押され、前に出る恵美。

 どうやら、恵美がその編集さんらしい。

 恵美は、あわてて、目の前のサクリの住人に、引きつった笑顔を向けた。

 「カロコさんのかい。それは、失礼。場所は、階段の『5』って書いてある所から上ると、一番近いよ」

 言うが早いが、その人は、本棚のほうへ歩いていった。

 「はあ、びっくりした。キリアさん。何してくれるんですか」恵美は胸をなでおろした。

 「あはは、ごめんごめん」キリアは頭をかきながら、笑った。

 「でも、ツェンター・カロコの場所が分かってよかったじゃない」

 「だれですか。その人」

 「まあ、とにかくあって見ましょうか。『海の中の住人たち』の作者に」



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