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「クウクのみなさんは、すごいですねえ」
クウクの『飛び』を間近でみて、恵美は感激していた。
「なあ、ライ。さっきからこいつ、すごいとしか言ってないぞ」
「まあ、そういうお年頃なんでしょう」
ライとシャルゴの会話がうしろから聞こえるが、恵美は無視していた。
背中に羽が生えているなんて、妖精みたい。
しかも、羽の色が一人ひとり違っていて、きれい。これが十人十色ってやつね。
「わあ、あの人の羽、すごくきれい」恵美が指さした人は、濃い青色の羽を持つ少女だった。
「ああ、キリアさんだ」
ライが、恵美のそばに立って言った。
濃い青色の少女は、ライの声に気付いたようだ。こっちに降りてくる。
「ライ。久しぶりね」ライの前に立って、ニッコリと笑うキリア。
「そこの方は?」キリアは恵美に気が付いて言う。
「恵美っていう、人間界から来た奴。こっちはリンのシャルゴ」
「こんにちは」
「こんにちは。へえー。人間界からか。はじめてみた」
キリアは恵美をジロジロと見る。
恵美も負けじとキリアを見た。
羽の色と同じ、濃い青色のショートヘア。
目がパッチリとして、鼻は高くもなく低くもなく、整った顔だった。
きれいじゃなくて、かわいい感じの人だ。
恵美はそう思った。
「キリアさん、クウクを案内してやってよ」
「オッケー。まかして」キリアは、恵美にパチンとウインクした。
それから、恵美は、いろいろなものを見た。
中央に立つ三本の木。
時計のように並ぶ、十二軒の家。
その家の中。
書斎。
本がすきな恵美は、その部屋に釘付けになった。
「へえ、本がそんなにすきなのね」キリアが微笑みながら言う。
「はい、とっても」
「それじゃあ、次に行くところは決まりね」
「ああ、サクリか」
「そう、あたし、一度行ってみたかったのよ」
「自分が行きたいのか」ライは、軽くため息をついた。
「まあね」
「オレも、ずっと行ってみたかったな、サクリ」シャルゴが言う。
「サクリってどんなところですか?」
「行ってみれば分かるさ。って、ぼくたち、一度も行ったことないけど」
ライは、首をすくめた。