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リンはとってもすばらしいところだ。
恵美は、嬉しかった。
人間界から来たというだけで、長のシャルントから、手厚いお出迎えがあったからだ。
「これ、おいしいですね」恵美は、赤い木の実を、ほおばりながら言った。
「そうじゃろう、そうじゃろう。人間界には、ないのか?」
「ええ、ないです。似たようなもので、リンゴがありますけど。でも、こっちのほうが、甘い」
「ほう、リンゴとな。一度食べてみたいもんじゃわい。──シャルゴ、シャルゴ! ライとばっかり話してないで、こっちにたくさん、木の実を持ってくるのじゃ」
「はいはい」
シャルゴと呼ばれた少年は、ライと共に、たくさんの木の実をテーブルに置いて、イスに腰掛けた。
「リンのみなさんも、魔法が使えるんですか?」恵美は、微笑みながら言った。
魔法の世界だから、当然だろうとは思ったのだか。
他の三人は、一瞬顔を曇らせたような気がした。
「い、いや、リンの住人は魔法を使えないんだ。ただ、『先読み』があるけどね」ライが、微笑みながら答えた。
気のせいか、恵美にはすこし、ライが青ざめているような気がした。
「…………『先読み』ってなんですか」
少し、空気が重くなったが、気になっていることは、聞きたい恵美だった。
「ああ、未来が分かることだよ」シャルゴが答えた。
恵美は、シャルゴが思っていたよりも高い声なので、びっくりした。
「へえ、それは、すごいですねえ。あ、その『先読み』を、やってもらえたら嬉しいなあ。わたし、いつ人間界に帰れるのかって」
恵美は、いくら、魔法の世界が好きだとしても、やはり元の世界には帰りたいと思っていた。
「ああ、いいじゃろう」シャルントは数秒の間、目を閉じていた。
目を開くと、「今日中には、帰れるじゃろう」と言った。
恵美はすこしガッカリした。元の世界には、帰りたいが、一日じゃ短すぎる。
「ええ!今日中ですか。それじゃあ、はやくクウクに行かなきゃ。カーニャになんて言われるか」
「オレも行く」
シャルゴが、イスから立ち上がった。