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やっとこさ、リンの家に帰ると、シャルゴは、倒れこんだ。
「つ、疲れた……」
「おうおう、ご苦労じゃったな。どうじゃった。ライじゃなかったろう」
「うん……」
「やはりな、そうだと思ったわい」
シャルントは、ヒョヒョヒョと笑った。
「宝玉がなくなったのに、よく笑っていられるな……」
シャルゴは、祖父に微かな殺気を覚えた。
「見つかったぞ。宝玉」
「ええっ!」
シャルゴは、カバッと起き上がると、石の玉座に向かって、走り出した。
家に残されたシャルントは、「まさか、ライが、魔法でリンを戻すときに、あらしで転がった宝玉を、戻し忘れていたとはなあ。玉座にちゃんと縛り付けておいたはずなんじゃが、あらしで吹き飛ぶようではだめじゃのう。まあ、近く草むらの影に止まっていたから助かったがのう」と言い、ヒョヒョと笑った。
「あった」それは、石の玉座の上に、チョコンと乗っかっていた。
シャルゴは、その場にへなへなと座り込んだ。
「それじゃあ、どうして、じいちゃんの『先読み』が失敗したんだ?」
きっと、風邪でも引いていたんだろう。
シャルゴは、草むらに寝ころんだ。
『先読み』をしてみる。
近い将来、リンに別の世界から一人、人間がやってくるのが、見えた。
そのとなりには、ライがいた。
またライが、自分を振り回すのだろうか。
シャルゴは、『先読み』をやめた。
青い空に白い雲。木が青々と茂っていて、小鳥の鳴き声が聞こえる。
風が、ほほをなでた。
気持ちがいい。
それでいい。
シャルゴは、ライが来るまで、この気持ちよさを、ぞんぶんに味わうことにした。