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「ふむ、ライが、なぜそんなことをすると思うのかね」
カーニャは、ゆったりとしたイスに座りながら言った。
黒いローブをはおっているせいか、シャルゴにはカーニャがとても大きく見えた。
シャルゴが、カーニャの家についてから、一言もまだ話していないのに、いきなり質問をされた。きっと、思考を読んだのだろう。
「石の玉座の辺りから、甘い匂いがしたのです。ですから…………」
言い終わらないうちに、カーニャが口を開いた。
「わたしの魔法を見せてあげよう。──おいで」そういうと、カーニャは、スッっと消えた。
「え、おいでって、どこへ行けば…………」
シャルゴは、カーニャが座っていたイスに近づいた。
「あっ!」
イスの周りに、ほのかな甘い匂い。その匂いは、石の玉座の周りにあった匂いと同じ匂いだった。
「わっ!」
シャルントが、イスを凝視していると、先ほどを同じように、スッとカーニャが現れた。
「分かったかね」
カーニャは、ニヤリと笑った。
「はい……」
シャルントは、深呼吸してから言った。
「あなたが、宝玉を盗んだのですね!返してください!」
カーニャは、あきれて言葉も出なかった。
「ええ!魔法使いは、魔法を使ったら、全員同じ匂いを発するんですか」
「そう、だから、魔法を使って消えて見せたのに。これじゃあ、口で言ったほうが早かったわい」
「ははは……。すみません」シャルントは、軽く頭を下げた。
「ということは、ライじゃなくとも、魔法が使えるつまり、マクニの人が、リンの宝玉を盗んだのですね」
「そうとは限らん」
「……どういうことです?」
「ライのやつが、あらしで全壊状態のリンを魔法で元に戻したんだろう。そのときの匂いかも知れん。余計なことをしたもんじゃ」
「ああ……なるほど。でも、家に帰ってから、何の匂いもしませんでしたけど」
「石の玉座の前では、集中していたからじゃろう」
「…………そんなもんですかね」
「そんなもんじゃ」
「それじゃあ、これからどうすればいいでしょうか」
「ふむ、そうじゃのう…………」カーニャは、しばらく目をつぶったあと、こう言った。
「リンに戻って、よく探してみたらどうかの?」そして、軽くウインク。
おばあさんが、ウインクをするなんて、なんかかっこういいな。シャルゴは、クスリと笑った。
「それじゃあ、リンに帰ります」
「ああ、気を付けて」
家の外に出て、シャルゴは、あることを思い出した。
また、あの道を通って、帰るのか……。
シャルゴは、深く、ため息をついた。