2;01 A piece of story of adventure 〜もう一つの冒険の話〜
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元に戻っている。すべてが。なにもかも。
死んでいった動物たちも、すべてが元通りになった。
木々は、空に向かって、突き刺さんばかりに背伸びして。
花は、やさしい風にさそわれて、いますぐにでも、ワルツを踊りだしそうだった。
その光景は、昨日見た、リンと同じ。
まったく同じ。
あらしが、去ったあと、マクニの少年ライが、ほどこした魔法。
それはそれは美しいものだった。
シャルゴは、今まで見てきたマクニの魔法の中で、最高に美しいものだと思った。
あのすばらしい声。もう一度聞きたい。
小鳥のさえずりのよう?──いや違う。
風のささやき?──違う。
もっとこう──すべてを、包み込むような、やさしい声。
すばらしかった。ほんとうに。
だけど。
ちがうんだ。
シャルゴは、奥歯をかみしめた。
『先読み』が。
何の役にも立たなかった。
どうして?
他の区域にはない、『先読み』を使えるリンが『先読み』を失敗するなんて。
今までになかった。こんなこと。
『先読み』がリンからなくなったら、何がのこる?
ただ単に、木を育てているだけじゃないか。
それは、それでいい。
だけど。
リンにとって、『先読み』は誇りだった。
そもそも、『先読み』は、今あった、あらしなどの自然災害を前もって知るためのあると、考えられている。
それが。
ライの魔法で、すべてが否定された気がした。
『先読み』なんかなくても、魔法があれば、リンを守ることが出来る。
そんなことを、あの魔法で言われた気がした。
確かに、そうかもしれない。
でも、ちがう。
自分の身は、自分で守りたい。
リンは、リンの住人が守るんだ。
確かめてやる。
確かめてやる。
どうして、『先読み』が失敗したのか。
あの、ロゼとかいうマクニの少女の悪夢退治なんて、もう、どうでもいい。