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 マクニ (魔法使用許可区域) のはずれの森のおくに、ライとカーニャが住んでいた。

 マクニの平地から、カーニャの家に行くまでは、約二時間は歩く、ふつうの山道ならまだしも、道とは言えない道を、二時間も歩く。

 このことを、知っているのか知らないのか、カーニャは約百四十七年前から、魔法を使った商売を始めた。

 当然、客など、めったに来ない。

 もし、ここマクニが、魔法がないところだったならば、多少は客が来るのかもしれないが、残念な事に、マクニに住んでいる人たちは、魔法が使える。カーニャに勝るものはいないが、通常、少しは使えれば生活には苦労しない。よほどの事情がない限り。


「…………」

 家の近くに来たライは、その場に固まった。

 なぜなら、家の前で、三つ編みにしたライと同じくらいの年の (ちなみに、ライは、現在十三歳である) 少女が、立っていたからだった。

 「あの……、もしかしてカーニャのお客?」ライは、その少女に近づいて、聞いてみた。

 そしてライは、その少女を見て、少し首をかしげた。山道を歩いてきたのなら、全身泥まみれになるのは、さけられないことだった。だが、この少女は、少しも汚れていなかったのだ。

 「は、はいっ」突然、あわれたライに声をかけられ、返事をする少女。鈴を転がしたような声だった。

 「なんで、家に入らないの?」

 「あ、あの、カーニャさんにここで待っていろ。と言われたもので」少女は、服のはしを、強くにぎり、うつむき加減で言った。

 少女は、麻のストンとした服に、七分丈のズボンをはいていた。マクニの子の典型的なファッションだ。ライの服も似たようなもので、上の服の丈が少し長い程度で、あまり変わりはない。

 「……………」ライはあきれた。久しぶりに来たお客なのに、何で中に入れないんだ……。 「カーニャ!」ライは、木製のドアをバンッと開けながら、カーニャに向かって叫んだ。

 「なんだい。うるさいね」

 カーニャは、直径一メートルはありそうな、大きなつぼを火にかけて、中身を木製の棒でかき回していた。そして、ゆっくりと振り向いた。だが、その手は、ツボをかき回すのをやめない。

 「どうして、客を中に入れてやらないんだ!十年ぶりじゃないか」

 「正確には、十一年ぶりだがね」カーニャは、片ほほで笑うと言った。

 「今、薬草を煮詰めているんだ。なかなか取れない貴重な薬草だ。客なんかに、邪魔されたくないね」そういうと、カーニャは再び、ゆっくりと顔をツボのほうへ戻した。そして、ぽつりとこう言った。

 「それに、あの子は客じゃない」カーニャにしては、めずらしい小声だった。

 「…………客じゃない?どうしてさ」

 「あの子は、厄介なことを連れてくる疫病神だ。かかわらないほうがいい」

 「…………それじゃあ、なんで、『客がきたから早く来い!』なんていったのさ」

 「そのときは、気づかなかったからだ」

 「…………」



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